各国代表 2016.04.29

日本代表の2016年初戦、宇佐美和彦が目指す「トリプルアクション」とは。

日本代表の2016年初戦、宇佐美和彦が目指す「トリプルアクション」とは。
日本代表の将来を担うひとりと期待される宇佐美和彦(撮影:松本かおり)
 愛媛県は西条高でラグビーを始めた。温和な顔立ちと気質からか、いつも周りに人を集める。3月と早生まれのため立命大3年時に呼ばれた20歳以下日本代表では、下級生の仲間から「うーやん」と呼ばれていた。
 宇佐美和彦。キヤノンと契約する24歳のプロ選手だ。いまプレーする日本代表の雰囲気を、こう捉えていた。
「ここでは、うーさんです。皆がしゃべりかけてくれて、やりやすいです」
 4月30日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で今年度初戦に挑む。アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)の第1節である。「やるしかないって感じですね」。国際間の真剣勝負への出場時に得られるキャップは、ここまで4を数えた。身長197センチと長身のLOながら、低いタックルを重ねられる。体重は登録上でこそ「111キロ」だが、実際は「116キロ」あるという。
「でも、もっと動けるようになりたいので、115キロにしようと思います」
 目指すプレースタイルを問われ、こう笑った。
「一番タックルに行って、一番サポートに行って…。それが数字で分かるように。地味に、頑張ります」
 今回ぶつかる韓国代表は、日本代表デビュー時の相手である。歴史的な3勝を挙げたワールドカップイングランド大会を間近に控えた、2015年4月18日。南洞アジアード・ラグビー競技場で56−30と打ち合いを演じた。その折は、宮崎で3部練習の続く過酷な合宿を重ねていた頃だ。疲れていた。
 今回は24日から合宿を始めたばかりと、当時とは異質の難しさを抱えている。もっとも本人は「去年は身体がしんどくて、今年は時間がなくてしんどい…。ぼくは、身体がきつくない方がいいと思います」とまた笑った。
「(韓国代表は)FWの接点でも強いし、ディフェンスも上がってくる。それはミーティングでも話しました。個人のアピールのためにも、アグレッシブにプレーしたいです」
 捕球役と支柱役の細やかな連携が必須の空中戦、ラインアウトでは、準備期間の短さが仇となるか。いや、宇佐美は「練習をしてみたらすごく精度も高くて…。コーラー(サインを出す役割)をやる僕がサインミスをしなければ、しっかり捕れる」と前向きだ。
 一方、アジアの試合でのレフリングが不安定になりがちな傾向、テストマッチデビューの選手が23名中17名を占めることなどに触れては、こう気を引き締める。
「そこ(判定への苛立ち)で負けたりしたら、ちょっと…。自分たちの力で勝てるように、皆にも言いたいと思います。(テストマッチでは)国歌の時に日本を代表しているんだという気持ちになって、僕は泣いてしまっていた。明日は緊張する選手もいっぱいいると思うんですが、ホームなので。その応援を力に変えて頑張って欲しいです。あ、僕も頑張るんですけど。はい」
 イングランドへは、行けなかった。もっとも大会に参加したジャパンのLO勢はベテランが多く、当時34歳のトンプソン ルークは代表引退を表明。宇佐美は、宮崎合宿中からトンプソンから「俺、これが最後。次はお前が頑張れ」と伝えられていた。
 現在はサンウルブズの一員として国際リーグのスーパーラグビーにも挑んでいるが、出番をつかめずにいる。
 チームは多国籍軍とあってラインアウトの連携に苦しみ、ここまで1勝7敗。日本語のわかる自分が出られれば、との思いはある。ただ、間もなく38歳で日本代表96キャップの大野均のプレーを観たら、「自分はまだまだ」と思わざるを得ない。泥臭いLOの代表格ともいえる大野は最近、脳震盪でふらついたままカバーディフェンスに走ったことがある。
 韓国代表、香港代表と2試合ずつをおこなうARCでは、代表チーム全体で「トリプルアクション」をテーマに掲げる。倒れて、起き上がって…ではなく、倒れて、起き上がって、次のプレーへ…を一連の動作でおこなうことを目指す。宇佐美は「大野さんは常にトリプルアクションをし続けている」とし、その領域を目指したいという。
「タックルやオーバー(密集で相手を引きはがす動き)をしたら、すぐに次のプレーを…。意識、だと思います」
 いまのターゲットは、海外組も加わる6月の代表に入ることだ。
「当面の目標はそこですね。もっともっと頑張らないといけない」
 それが叶えば、ワールドカップでジャパンが敗れたスコットランド代表と戦える。
(文:向 風見也)

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