アルカス熊谷、笑う。太陽生命ウィメンズセブンズ保土ヶ谷大会を制す。
勝者はさすが。敗者も立派だった。
4月23日、24日に開催された『太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2016』第1戦 保土ケ谷大会。24日におこなわれたカップ決勝を制して2016年シリーズ最初のチャンピオンとなったのはアルカス熊谷だった。ファイナルのスコアは31-17。しかし準優勝の日体大ラグビー部女子も、今大会無失点で勝ち上がってきた相手から3トライを奪う健闘だった。
8月にリオ五輪を控えていることもあり、今年のシリーズには各チームともサクラセブンズ(女子セブンズ日本代表/セブンズ・ワールドシリーズのアメリカ、カナダ大会出場選手)は出場しない。そんな条件付きの大会だったものの、好試合がいくつもあった。
昨年の年間王者で、「日本が世界で勝つラグビーを私たちも」(竹内亜弥主将)という高い志を胸にプレーしているアルカスは、決勝でも好パフォーマンスを見せた。
先制点は前半2分過ぎ。相手反則で得たPKから鈴木陽子が作興を仕掛け、右に展開する。最後は藪内あゆみがインゴールに飛び込んだ。その2分後にはトライを返されるも、5分40秒過ぎにはマテイトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェ(愛称ライテ)のビッグタックルからターンオーバーしたボールを末結希が拾い、走り切る。9分過ぎにも自陣で得たPKから素速く攻め、最後は鈴木陽子が巧みなステップを駆使して40メートル独走。前半を19-7とリードして終えた。
後半もターンオーバーから先に加点して24-7とリードを広げたアルカスは、その後2トライを許すも、慌てることなく勝利を手にした。竹内主将は「最後まで自信を持って戦えました。昨年からの1年でいろんなことを経験し、チーム感は強くなっています。その分、喜びも大きくなった気がします」と話した。自身は長くサクラセブンズのメンバーだったが、直近のワールドシリーズメンバーからは外れ、今大会でもプレーすることになった。そのことについて「自分のプレーに迷いもあって、いちどチーム(サクラセブンズ)から離れることになった。この大会を自分がレベルアップする場と考え、できることはなんなのか、強みはなにか、と確認しながらプレーしました」と話した。
また大会MVPに選ばれたライテは、強烈なアタックだけでなく防御でも勝利に貢献したことに触れ、「相手にはすばしっこいプレーヤーもいて、あちらが勢いづきそうになった時間帯もありました。だからビックヒットで流れを取り戻したかったんです」と笑った。
日体大も可能性を感じさせるチームだった。
前半に奪ったトライは櫻井綾乃の突破から反則を誘い、速攻。右に展開してルーキー清水麻有が奪った。後半の2トライも鵜川志帆、堤ほのかと、すべて1年生がマーク。視野の広い山本実(2年)のゲームコントロールも冴え、スタンドを沸かせた。
昨年の大会には、全国の才能ある高校生たちを集めたチャレンジチームで参加していた清水は、「チームとしてしっかり準備をして試合に臨んだのは初めてのことだったので、とても楽しかった」と話した。チャレンジチームでともにプレーしていた仲間たち(鵜川や堤)が同大学に集まったのは、「偶然なんですよ」と言った。
古賀千尋ヘッドコーチは、「フィニッシャーになれる選手が入ったことがチームにとって大きいですね」と語った。
「実は彼女たちの親御さんには、オリンピックを目指すならアルカス(熊谷)さんに進学した方が…とお話しはさせてもらったんです。ウチは、まだ(アルカスほどの)環境が整っていないと思ったので。でも、彼女たちが将来は教員になりたいということもあって進学を決めてくれました。責任を持って育てないといけないですね」
次大会は、5月14日、15日に秋田で開催される。6月には秩父宮と静岡県裾野市でも開かれ、全4大会の綜合成績で年間女王も決まる。進化のスピードを上げるチーム、新たなヒロインの出現が楽しみだ。
■太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ 2016 第 1 戦 保土ケ谷大会
カップ優勝(1位):アルカス熊谷(20)
カップ準優勝(2位):日本体育大学ラグビー部女子(18)
3 位:追手門学院大学女子ラグビー部(16)
4 位:東京フェニックス RC(14)
プレート優勝(5 位):Rugirl-7(12)
プレート準優勝(6 位):RKU ラグビー龍ケ崎 GRACE(10)
7 位:YOKOHAMA TKM(8)
8 位:チャレンジチーム(6)
ボウル優勝(9位):石見智翠館高等学校(4)
ボウル準優勝(10位):カ・ラ・ダファクトリーA.P.パイレーツ(3)
11 位:名古屋レディース(2)
12 位:ベルマーレ世田谷(1)
※カッコ内はシリーズポイント