国内
2016.04.24
91−0。大学選手権V7の帝京大は今季も快調か。中大はタックル重ねるも…
春から圧倒的強さを見せた帝京大。中央大相手に13トライ(撮影:志賀由佳)
関東大学春季大会が4月24日に開幕。東京・帝京大百草グラウンドでは、大学選手権7連覇中の帝京大(昨季関東大学対抗戦A・1位)が中央大(同リーグ戦1部・3位)を91−0で圧倒した。
各所属リーグで昨季1〜3位だったチーム同士のグループAの初戦。いくら試合展開が一方的になっても、リードを広げる帝京大は変わらなかった。
84−0でリードして迎えた後半30分過ぎ。集中力が途切れてもおかしくないタイミングで、相手に大きな突破を許す。しかし司令塔のSO松田力也副将が、自陣ゴール前へと戻る。「取られたくないという思いもありますし、自分がここで頑張ることで、周りも(つられて)帰って来てくれる」。接点に身体をねじ込み、中大の攻撃のテンポを遅らせた。
守備網を整えた帝京大はここでも失点を防ぎ、続く36分頃には自陣から左右に展開。右大外のスペースでSO松田副将は相手タックラーを引きつけ、FB尾崎晟也につなぐ。WTB津岡翔太郎がこの日4本目のトライを決めた。
13本のゴールキックを全て成功させたSO松田副将は、こんなふうに振り返った。
「そこ(大勢が決まった時間帯)で緩めてしまうと、チームにも悪い影響が出る。いい集中力を保っています」
プレーの起点であるスクラムも圧倒。組み合ってしばらくすると、赤いジャージィの塊が真っ直ぐ歩を進める。後方から押し込むLO姫野和樹は「フロントロー(前列)だけではなく、FW8人全体で組もうと意識しているので」。特に、前半33分頃の敵陣ゴール前右での1本に手応えを感じた。「まとまりがすごくよくて、皆で押せた」。最後尾のNO8吉田杏が止めを刺すなどし、35−0とリードを広げていた。
球が回るさなかでも、繊細かつ激しい動作が重なった。
ランナーをサポートする選手が、目の前の防御役をしっかりとつかむ。腰を落としながら、その抑え込んだ相手をボールの位置から遠ざける。その繰り返し。低いコンタクトにフォーカスしていた中大は懸命にぶっ刺さるも、帝京大が接点を制圧するほど守備網が乱れた。反則とタックルミスがかさんだ。
敗れた酒井宏之ヘッドコーチは「選手にも話を聞いたのですが、近場(サポート役など)のテクニックが徹底していますね。ただフィジカルが強いだけじゃない」と声を絞る。同じく松田雄監督は「決して頑張っていないわけではないけど、食い込まれた」と続ける。野口英彰FWコーチは「低いプレーを。コーチは簡単に言うけど、ラグビーはそこが一番、難しい。いくら練習でできても試合でできなければ、それはコーチの責任です」と課題を明かした。
一方、大勝したFL亀井亮依主将はこう話す。
「そこは1人ひとりの仕事なので、徹底してやろう、と。まだまだの部分はあるけど、(ある程度は満足)できた。ファイトすることで相手の体力を奪えますし、自分たちは若い。社会人とやるうえでは、その若いファイトがキーポイントになる」
一昨季の日本選手権1回戦(2015年2月8日/東京・秩父宮ラグビー場)で、トンガ代表主将のFLニリ・ラトゥらがいたNECに31ー25で勝った。その1シーズン前から掲げていた、国内最高峰のトップリーグ勢を倒すという目標を達成した。そしていまは、日本一を目指す。
トップリーグ覇者との一発勝負となった前回の同選手権では、パナソニックに15−49と敗れた(2016年1月31日/秩父宮)。
チームのフォーカスは、そこでのリベンジにある。
前半の中ごろに続いた落球などを指摘してか、SO松田副将は「精度はもっと上げていく。練習から意識して、毎試合、レベルを上げられるようにしたい」と反省点も挙げていた。
(文:向 風見也)