海外
2016.02.23
レベルズ行きの松島、スーパーラグビーとジャパンを語る。「正直、怖い」
ワールドカップのスコットランド戦でプレーする松島幸太朗(Photo: Getty Images)
松島幸太朗は冷静だ。
昨秋、ワールドカップイングランド大会をプレーした日本代表について「ストレートに言う選手、やんわりと言う選手、最後にまとめる選手、その3人がいてよかったと思います」と振り返っている。
自らが身を置いた集団を俯瞰したうえで、率直な物言いの田中史朗、大らかかつ繊細な堀江翔太副将、チームを引っ張るリーチ マイケル主将という個性の配列の妙を語ったのだ。
今月26日に23歳の誕生日を迎えるしなやかなアウトサイドバックは、「人にはマイペースだと言われます。周りに合わせることもできるのですが、基本的には自分から何かを発信していると思います」とも話していた。周りに流されず、自らの思いを淡々と伝える。
その分、未来を案ずる言葉に重みがあった。今年6月、日本代表が指揮官不在のもとスコットランド代表と戦うことについて、松島は発する。「正直、怖いです」。ワールドカップで唯一黒星を喫した相手(●10-42/グロスター・キングスホルムスタジアム/9月23日)に、ボスがいないまま挑むからである。危機感を吐露する延長線上で、こうも言った。
「選手主体になるのでは。自分たちを甘くするのではなく、常に高い目標をもって、選手の間でも厳しく指摘し合った方がいい」
もっとも、招集されればメンバー入りするとも明かし、「自分の経験を活かせたら」と応じた。ナショナルチームの勝利で、この国のラグビー人気を維持したいと強調する。SHクレイグ・レイドローのキックで試合を作る欧州6強の一角を向こうに、早くも個人的にゲームプランを練っていた。
「エリアを取ってもいいのかなと思いますね。相手には、あまりアタックが怖いという(印象はない)。向こうのキッキングゲームに付き合うわけじゃないけど、アタックするところはアタックして、蹴るところは蹴る…と」
24日、日本を発つ。国内最高峰トップリーグ終了後の休息を経て、メルボルン(オーストラリア)へ渡る。自身にとって2季目となる、世界最高峰スーパーラグビーへの挑戦だ。昨季はワラターズで出番を得られなかったが、「他の代表選手の私生活も見られた。自分にとってはプラスだった。今度はそばで観るのではなく、プレーで表現したい」と話す。
チームの決定に際しては、複数の選択肢に揺れた。
まず昨秋には、指揮官就任が予定されていたエディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチからストマーズ(南アフリカ)のオファーを受けた。もっともジョーンズがイングランド代表ヘッドコーチになったことで、「その選択肢は消した。僕の扱いもどうなるかわからない」と松島。以後は複数のオーストラリアのクラブからのラブコールを受け、考えた。
「スーパーラグビー自体に行くか、行かないか。それでちょっと迷っていて。怪我もちょくちょくしていたので。身体づくりに専念するか、引き続き経験を優先するか…」
結局、レベルズ行きを決めた。怪我の治療を優先してくれそうだったからだ。今季の目標を「試合に出ること」とし、ボスや仲間とのコミュニケーションを深めると誓った。
「常にラインブレイクはできていたい。フィニッシャーというより、チャンスメーカーで」
得意なアウトサイドセンターやフルバックで起用されれば、より持ち味を発揮できると笑った。
(文:向 風見也)