国内
2016.01.26
サントリーSHデュプレア、引退へ。「ラグビーではたくさんの感情を表せる」
今年3月に34歳になるフーリー・デュプレア。引退か、それとも…(撮影:松本かおり)
南アフリカ代表として日本代表と戦ったサントリーのSHフーリー・デュプレアが、スパイクを脱ぐ。23日、大阪・花園ラグビー場で日本最高峰であるトップリーグ(TL)の9位決定戦に先発出場。78-14で勝利した。
「もしかしたら、自分の最後のシーズンになるかもしれません。サントリーの、ではなく、ラグビーのキャリアの、です」
昨秋、単独取材に答えるさなか、自身の今後をこう語っていた。直前までプレーしていたワールドカップ(W杯)イングランド大会では、プールB初戦で日本代表に32-34と敗戦(ブライトンコミュニティースタジアム)。しかしその後にチームの強みを再確認し、3位で戦い終えた。代理主将も任されており、「あれが私のキャリアでのハイライト」と安堵したところだった。
「現在の段階では、たぶん、ですが。もし、今季が最後だと仮定するなら、自分のベストを尽くしてプレーしたい。周りの選手を助けていきたい。もし、今季が最後だと仮定するなら、リタイア後は6か月ほど休んで、そこから次のことを考えていきたい」
サントリーの一員として慎重に言葉を選んだSHデュプレアは、南アフリカはプレトリア出身。当時は南半球最高峰だったスーパーラグビーのブルズでは、2003年度から9シーズンプレーした。
渦中、母国代表のレギュラーにもなった。76ものテストマッチ(国際間の真剣勝負)に出るなか、2007年のW杯フランス大会では優勝。続く2011年の同ニュージーランド大会は8強入りも、世界最高のSHの1人として高い評価を受け続けてきた。サントリーには2011年度から5シーズン、在籍した。世界中のグラウンドに優雅な香りを散りばめてきた。
地面にある球を素早く拾い上げ、相手を引きつけながら味方の手元でボールが立ち上がるようなパスを放つ。味方選手の証言によれば、パスを投げると見せかけて密集脇を突破する際の手の動きが、実際にパスをする際のそれと変わらない。守備網の背後へのキックやピンチの場面でのビッグタックルも特徴だ。チームメイトで日本代表のSH日和佐篤は、この名手を「ゲームコントロールもできて、危機管理能力も高い。全てのプレーで優れていると思います」と見ている。
実際の去就が明らかになるのは、チームの公式発表後だ。翻意を促す関係者の声もある。しかし仲間内では、かねて名士の思いが通っていた。ずっと定位置を争ってきたSH日和佐は、最終戦を前に「彼とはあともう少ししかできない。少しでもいいところを学べたら」。南アフリカでのプレー経験がある日本代表のCTB松島幸太朗も、こう発した。
「チーム内でもそういった話は出ていますが…。そんな時に一番残念なのは、いま、僕らが優勝争いの場にいないことです。ここでできることは、サントリーのラグビーをしっかりやること。彼は常にきちんとした判断ができる選手で、毎試合、印象に残っています」
競技人生の集大成を間近に控えた時、SHデュプレアはラグビーの魅力について質問を受ける。じっくりとかみしめるように、こう言い残した。
「チームメイトのためにプレーすること。厳しい練習をして、練習以外の場所でもいい時間を作って楽しんでゆくこと…。ラグビーでは、たくさんの感情を表せます。そしてたくさんのチャレンジを乗り越えれば、いい結果が得られます」
(文:向 風見也)