「両手を挙げて」立候補したい。金正奎、サンウルブズ入りに意欲。
(撮影/?塩隆)
カラダは小さいが、大きな可能性を秘める。
「勝手に、小柄な人たちの代表と思ってプレーしています。いいメッセ−ジを発信できましたかね」
1月25日に発表されたトップリーグ2015-2016のベストフィフティーン。NTTコミュニケーションズ、金正奎(きん・しょうけい)の名前がFLの欄にあった。「嬉しかったし、びっくりしました」と、もともと細い目をさらに細めて目尻を下げた。
177cm、95kg。FLに選出されたもうひとりのリーチ マイケル(東芝)や、シャイニングアークスのチームメートでもあるNO8アマナキ・レレィ・マフィは、ともに189cmだ。
「トップリーグで対戦するほとんどのバックローが自分より大きな人たちばかりです。そんな中で選ばれた。小さくて悩んでいる選手がたくさんいると思います。そういう人たちに『やれるんだ』というメッセージになったら嬉しいですね」
受賞を喜ぶFLにも、うまくいかない時期があった。
ルーキーイヤーだった昨季、試合出場は5試合だけ。早大で中心選手として活躍していたからそれなりの自信もあったのに、それが打ち砕かれた。
フィジカルが弱い。タックル成功率をもっと。そして、リーダーシップを強く。コーチの口から出る注文は、いちいち納得できるものだった。力不足を痛感。悩み、克服の道を探した。
そんな日々を経て、2015年の春にはチーム派遣でニュージーランドへ渡る。ハミルトンにあるバーシティクラブに所属し、大男たちの中で揉まれた。その中で、あらためて生きる道を確信した。
「自分の頭でいろいろと考えた時期があって、ニュージーランドに行った。だからこそ分かったことがありました。あちらのコーチに、小さいヤツこそ頭を使えと言われたんです。それまでの僕は、言ってみれば『猪突猛進』。ただガムシャラにやっているだけだった」
意識を改革。プレースタイルを変化させた。
「大きい人が体格的な優位性を使ってプレーするように、小さな選手は、その小ささを活かす。何ができるかを考える。それでいいんだ、と。低くプレーし続ける。働き続ける。その中でクレバーになって、行くところ行き、引くところは引く。そうやってワークレートを上げました」
大柄なプレーヤーの領域を追うのではなく、他の分野で、彼ら以上のプレーをする。その結果、試合出場機会が増えた。落ち着いてプレーできたなら、持ち前のリーダーシップも前面に出る。リーグの中でベストFLに選ばれたのは、信頼を得てピッチに立ち続けた結果だ。
ただ満足はしていない。
やれることはもっとある。そして、もっとやらないと。入社以来、筋肉だけで4kg大きくした体躯はもっとデカくできるし、ワークレートももっと高められる。さらに価値ある選手になるために、階段を駆け上がりたい。
豪州代表FLマイケル・フーパー(ワラターズ)のレベルを目指したいと思う。
「あの人は本当に凄い。リーダーシップもそうですが、何度でもタックルして、何度でも立ち上がる。あれだけ動き続けて、誰よりも高いワークレート。そういう選手を目指したいですね」
サンウルブズに選ばれたら直接対決ができる。バックアップメンバーも発表されていない同チーム。狙って入れるものなら、是非そうしたい。
「自ら手を挙げていいのなら、両手を挙げて立候補したいです」
日本最高峰のリーグでベストな15人に選ばれたのなら、その思いも、ジャパン入りの意欲も、夢の話ではないはずだ。小さなプレーヤーたちの代表として、さらに前へ、上へ、進みたい。