ニュージーランド帰りで異彩放つ。東洋大・永吉天馬、在学中の日本代表入り目指す。
間違えた。その後がよかった。
永吉天馬は8月23日、長野・菅平高原はサニアパークのCグラウンドにいた。
東洋大ラグビー部の新人司令塔として、筑波大とのトレーニングマッチに先発。前半20分頃だったか、自陣トライライン上からドロップアウトを蹴ったところ、相手にチャージされてしまう。
そのまま失点しかねぬエラーを犯した。若者が動揺してもおかしくないシーンでなお、身長182センチ、体重86キロのこの青年は平然としていた。
向こうのはじいた球がデッドボールラインを割ったと確認し、ルールに即して再び似た位置からドロップアウトを蹴る。それを長距離砲にした。
淡々と気持ちを切り替えられたのがよかった。
「チャージされたキックは(最初の)ボールの落とし方が悪くて、蹴った瞬間に『あ、(相手に)当たるかもしれない』と。で、当たって。デッド(ボールラインの外)に出てくれたのが幸いでした。次は同じミスを繰り返さないように…というところです。いつもチームで『ミスを引きずらない』と話しているので、修正能力はどんどん高くなってきているかなと」
悔いは残した。
7点リードで迎えた前半の終わり頃、ピンチの場面で後ろに戻りながらパスカットを狙うも失敗。故意のノックフォワードを判定され、イエローカードによる一時退場を余儀なくされていた。その後の連続失点もあり、21-54で敗れた。
カードをもらってしまった場面では、そもそもパスを防ごうとするのが正解だったか、ボールを持った人をつぶしに行くべきだったか、映像を見て再検討したいと話した。
秋から本格化するシーズンを見据え、反省の弁を重ねた。
「自分たちのプレーでどんどん盛り上げてチームを勝ちに導かないと。ゲームコントロール、(組織内での)信頼度が(もっと必要)」
それでも、その堂々とした戦いぶりを評価するリーグワン関係者は少なくなかった。
特に光ったのは、球を取ってパスをするまでの動きだ。首筋をぴんと伸ばし、迫ってくる防御の壁へ走り込みながら周りの穴場へさばく。ほどよく脱力しながら、効果的な一手を繰り出す。
「それはもう、ニュージーランドで(学んだ)。向こうの人は何も考えずに(間合いを)詰めてくる。そういう時にどうすればいいかのピクチャーが見えていた。ほぼ感覚なんですけど。そこは、もっと自分の強みにできるようにしていきたいなと。10 番(司令塔のSO)として脅威にならないといけないと理解しているので、もっと自分で仕掛けられたらなと」
その言葉通り永吉は、ラグビー王国と言われるニュージーランドで鍛えてきた。
もともとは幼少期に地元の大分舞鶴ブラックスジュニアで競技を始め、「小学3年生の終わり」からは毎週末、福岡へ2時間ほどかけて通った。父の同級生に日本ラグビーフットボール協会で7人制強化に携わる徳永剛氏がいて、福永氏の古巣であるサニックスのグラウンドで動く玄海ジュニアラグビークラブを紹介されて入ったのだ。
「練習が日曜だけの時は朝5時に起きて、家族で(出発)。5、6年生の時は土日に(活動が)あって、その時は土曜にひとりで電車に乗って宗像まで行って、チームメイトの保護者さんに迎えに来てもらっていました。夜は同級生の家に泊めてもらって…と」
日本にいるうちからやや寮生活に近い暮らしをしており、海を渡ったのは12歳の頃だ。現地ではまず、コブハム・インターメディエイト・スクールの門を叩いた。
「難しいと言えば難しいんですけど、日本と異なる文化を学びながら生きていくのは楽しいですね。ニュージーランドでは人がフレンドリー。気軽に話しかけてくる。上のレベルの人たちでも、このスポーツを楽しみながらやっているなと」
日本の中学2年にあたる時期からの約5年間は、クライストチャーチボーイズ高で楕円球を追った。しかし、目指していた1軍定着が叶わず、「悔しい思いをした」。渦中、新たな可能性を示してくれたのが東洋大だった。
もともと高校で「ラグビー、辞めよう」と決断しかけていたところ、福永昇三監督の誘いで埼玉県内の施設を見学した。東洋大に様々な国の選手が集まっているのに触れ、「いろんなカルチャーがあるなかひとつになっていくのが、いいな」と惹かれた。
「昇三さんはコントロール(海外選手たちとのコミュニケーション)の仕方をわかっている」とも補足し、いまなお感謝を口にする。
「東洋大に来られてラグビーができていることが楽しい。皆、いい人だし。日本でプレーするチャンスを与えてくれた昇三さんには感謝しています」
いまの目標は「直近で言えば、U20(20歳以下日本代表)に入りたい。チームとしては(加盟する関東大学)リーグ戦、(冬の)大学選手権で優勝したい。きょうの試合で言えば、それにほど遠い。これから、(目標に近づくべく)やっていこうかなと」。謙虚に己のパフォーマンスに向き合いながら、たたずまいは堂々としている。真剣勝負のなかでエンジョイする心を保ち、在学中のジャパン入りと卒業後のプロ契約を達成したい。




