【連載】プロクラブのすすめ㉝ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] いまは危機的状況。ラグビー人口を本気で増やしたい!
日本ラグビー界初のプロクラブとしてスタートを切った、静岡ブルーレヴズの運営面、経営面の仕掛け、ひいてはリーグワンについて、山谷拓志社長に解説してもらう連載企画。
33回目となる今回は、創設5シーズン目を終えたリーグワンや日本ラグビーの課題を語ってもらった(6月10日)。
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――リーグワンが創設されてから5シーズンが終わりました。フェーズ3は2028-29シーズンから始まりますが、議論は始まっているのでしょうか。
まだそうした話は具体的には進んでいないと思います。どうしても目先の議論が多く、かつ意思決定までの時間が結構かかっている印象です。一つの物事を決めるのに会議の回数がそれなりに多い感じがしています。
細かいルールの変更に時間をかけてしまっているせいで、将来への議論、本質的な議論がほとんどできないんです。
他競技のリーグでは、各クラブの代表者(社長)とリーグが参加する実行委員会をだいたい3か月に1回ほどの頻度なのにリーグワンはほぼ毎週やっています。
毎週やっているのに物事がなかなか決まらない。正直、ガバナンスにまだ不具合があると思っています。
なぜそうなってしまうのかというと、リーグに参入するための明確なライセンスを定めていないからなんです。
本来であればリーグに加盟する際に、ライセンスで示されているリーグの方向性やルールの細かい部分も受け入れることになるわけなので、そこまで各クラブの考え方に相違が出ることはありません。
リーグワンにはライセンスがなく、各チームの考え方や価値観がバラバラの状態のリーグです。なので、議論に時間がかかってしまうのは必然なんです。
一つのリーグの中に、方向性や価値観が大きく異なるクラブが同居していることは、意思決定に時間がかかり、どうしても護送船団方式になってしまうので、本来望ましい状況ではありません。
試合数を増やすべき、シーズンを長くするべき、クラブ運営を法人化すべきという考え方も、ライセンスで最初からスクリーニングされていれば何も異論がでることはないわけです。
ホストエリアではない地方開催を拡大すべきだという議論も出るのですが、ホスト&ビジター制でその街に根差していくリーグの理念と矛盾していると自分は思います。
その矛盾をチームのニーズとして議論するだけでは混乱を招いてしまいます。
フェーズ3に向けた話が進んでいないのも、新秩父宮スタジアムの建設が当初よりも遅れていることを理由の一つにしているようなのですが、それはスタジアム確保に向けたひとつの要素にすぎず、そのことでリーグのあり様が依存することはありません。リーグの将来は、秩父宮ありきなのかと。
今シーズンから導入されたプレーオフ準々決勝の(3位、4位チームによる)ホスト開催も最初はかなり反対意見が出ました。直前に決まると、短期間でチケットを売ることが難しい、スタジアムの確保やキャンセルが難しいのではないかと言うんです。
でも、それはプロスポーツでは当たり前ですよね。むしろ最終戦までそうしたプレーオフ争いがもつれ込む方が盛り上がるわけで、それだけコンテツとしての価値が高くなる。
チケットを売り出す期間は短くなったとしても、じゃあどうやって売るかを考えるべきです。ラグビー界はまだまだビジネスに対するアニマルスピリッツが不足していると感じます。
――話を聞いていると、ライセンスの策定はまだまだ先の話になりそうです。いま変えられることはありますか。
リーグワンが物事を決めるには、実行委員会で案が示されて、それから各チームにアンケートを取り、さらに個別にヒアリングをして、また修正案を出して、それを議論し直して、ようやく実行委員会で決議して、それから理事会で承認を得る…という流れです。
クラブの意見を踏まえた上で「この方向でいく!」と決めづらい状況なんです。これがさらに多くの時間を要する原因になっています。
ライセンスという大前提がある中でリーグの代表者に決める権限を与えて、その人が「こうだ!」と決めたらそれに従う。その決定がおかしいと感じるのであれば、例えば数年に一度の投票で別の代表者を立てる。
まずはライセンスに加えてそうした意思決定の構造にしないと、リーグワンのガバナンスはなかなか機能せず、物事が決まるまでかなり時間を要してしまうことになると思います。




