ブラックラムズ反則減の立役者。37歳のパディー・ライアンが作る環境
いま、何を喋っていたのだろうか。
ラグビーオーストラリア代表3キャップのパディー・ライアンがこう切り出したのは3月25日。プレイングコーチとしてリコーブラックラムズ東京のスクラム練習を終えた午後のことだ。
円陣を組もうとした時、ちょうどひとりの中堅選手が若手に助言していたので、その内容を全体で共有してもらうよう促したのだ。話を引き出したうえ、それに関連する自身の知恵も付け加え、「今日も、いいセッションができたね」と打ち上げた。
身長190センチ、体重120キロの37歳は言う。
「うちのいいところは、誰がフロントロー(最前列)、誰がバックファイブ(2、3列)であっても、いいスクラムになる。それぞれのやり方で組んでいるけど、結果は変わらない。チームにはベストなハーフバックス(SHのTJ・ペレナラ、SOの中楠一期)がいて、ベストなNO8(ファカタヴァ アマトやリアム・ギル)もいる。彼らにいいボールを渡したい」
昨年12月より参戦のリーグワン1部において、力と駆け引きに定評がある自身はおもにリザーブ。それでも時間を重ねるごとに、試合序盤から押すシーンが増えていた。プレイングコーチとしてカール・ホフトFWコーチと協働したライアンは、その背景をかように説く。
「秘密はない。去年7月という早い時期(開幕は12月)からスタートし、ハードワークしてきました」
来日したのは2018年。当初加入した宗像サニックスブルースが活動休止を発表した‛22年、たまたまPRに怪我人の出ていたブラックラムズに請われた。ちょうどオーストラリア人の妻が東京で外国人向けの個人トレーナーのような仕事を始めていたので、好都合でもあった。
プレーしていたクラブが消滅した感想を聞かれれば、英語で「誇り高き、ラグビーコミュニティーのしっかりしたチームがなくなるのは悲しいです。ただ、時としてこういうこともある」と応じる前に、日本語で発した。
「寂しかった」
語学力は堪能。日本語能力試験のN4に受かっており、次の目標はN3合格か。現状を聞かれてこのように微笑む。
「コーチングしながらプレーするのは、思いのほか忙しくて…。プレシーズンは特にそうでした。日本語の先生にはレベルアップが必要だとリマインドされています。もっと、自分から学びに行かないと」
アスリートとしてもプロ意識を保つ。トレーニング前には怪我を予防する「プレリハビリ」を入念におこない、キャリアを重ねてもなおスクラム、接点で爪痕を残す。
「私の哲学は、『弱いものは壊れる』。身体を強くするのが大事です」
今季のリーグワンにあって、クラブは史上初のプレーオフ進出を決めた。特筆すべきは12チーム中最少の反則数。その理由のひとつに、首脳陣はスクラムを挙げる。笛が吹かれるか否かが流動的なプレーで力強さ、安定感があるのを感謝する。
最強のパックを作る環境を、ライアンは誇る。
「選手同士の関係性はイコールです。僕は外国人だが、どちらが上ということはない。日本人には多少は(上下関係への意識が)あるんだろうけど、(本来は)だれが喋ってもいい」
レギュラーシーズン終盤の2戦は欠場も、23日のプレーオフ準々決勝ではメンバー入りが待たれる。最終節で敗れた東京サントリーサンゴリアスを迎えるこの一戦で、周りとの違いを見せるか。



