スピアーズ・末永健雄に根付く名伯楽の教え。
これが末永健雄のラグビーだ。
迫りくる走者がどれだけ大きかろうが、身長178センチ、体重98キロで身体を低く沈めて刺さる、刺さる。鈍い音を鳴らす。
3月28日。クボタスピアーズ船橋・東京ベイの7番をつけ、都内にある本拠地のスピアーズえどりくフィールドに立った。3シーズンぶり2度目の優勝を目指す国内リーグワン1部・第13節に先発。昨季の決勝で対峙した、2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京が相手だ。
連敗を6で止めたい向こうは、末永の位置にニュージーランド代表33キャップのシャノン・フリゼルを擁立した。
怪我から復帰したての身長194センチ、体重114キロらが再三、突進する。
かたやスピアーズは、オレンジ色の壁を敷いた。
ここで先陣を切ってぶち当たったひとりが、末永だった。序盤から何度も自陣22メートルエリア内でのピンチをしのぐなか、味方の海外選手と並んで強烈な一撃を繰り返した。
特に前半16分には、フリゼルに激しくぶちかましてインパクトを示した。中盤左のラインアウトからのアタックで、加速してくるフリゼルの前進を相方のタイラー・ポールとともにせき止めた。そう水を向けられると、「いえいえいえいえ…。強かったっす」。低く渋い声でライバルを讃える。
衝突のインパクトを攻めにも活かしたチームは、51-7で快勝。プレーオフへ行ける6傑入りをどこよりも早く確定させた。点差をつけて勝つ展開だったにもかかわらず、末永は、両軍最多タイとなる14本のタックルを成功させた(『RUGBY PASS』調べ)。
「フィジカルなチームにこっちから仕掛けていく。いつも通りと言えばいつも通りなんですけど。相手はアタッキングチーム。いかにボールを速く取り返すかには、フォーカスしました。2対1を作って、しっかり2人目はボールへ行き、ゲインライン(攻防の境界線)を超えさせなかったり、(仲間が防御ラインを)セットする時間を作ったり」
ここでの「2対1」は、1人のランナーに2人でぶつかる様子を指す。鍛えた面子が2人がかりでタックルするのが肝だと、末永は言いたげだ。
「やっぱり、1対1じゃなくて、2対1でディフェンスするのを意識しました。特に相手は、ラインアウトからのアタックが得意。ここでモメンタム(勢い)を与えないためにも、2対1で(立ち向かう)」
堅陣を築く功労者はストーミーことスコット・マクラウド。昨季より防御担当のアシスタントコーチとなり、組織的にスペースを埋めたり、首尾よく相手との間合いを詰めたりといった仕組みを整える。
前衛を守るラインを作る際は、ある特定の位置についた選手が列全体の上下動について判断を下すようだ。
名伯楽の印象は。末永が簡潔に説く。
「細かいところに気を遣う。言ってみれば厳しい。甘えを許さない。徹底(というイメージ)ですね」
チームを率いるフラン・ルディケヘッドコーチは一時、2024年以降の日本代表で指揮官となる可能性があった。その頃にあった選考レースを制してその立場に就いていたら、もともとニュージーランド代表を教えていたマクラウドに防御を任せるつもりだった。
世界的に評価の高いマクラウドは、今年6月までの今年度いっぱいでスピアーズを退団。オーストラリア代表へ入閣する。
恩人との別れについて聞かれ、31歳の金髪のタックラーは「悲しいですね。はい」。その旨を知ったのは、無料通話アプリ「LINE」のグループ内トークにおいてだ。
その件が内々に発表されたミーティングには、参加できなかった。病院で予定があったからだ。原則的に週に1度は訪れるゲームに挑むべく、ケアとリカバリーに抜かりはない。
ニックネームは「ポイポイ」。確か福岡高時代のことだったか。初めてスマートフォンに「LINE」をインストールした際、無作為につけた登録名がそのままあだ名になった。その逸話に触れて微笑む。
「結局、あまり呼ばれたことはないんですけど」
入念な準備と大らかな人間性が、恐るべきタックルの背景にある。



