国内 2026.03.11

栃木で待ってるよ。本村直樹[元・三重ホンダヒートWTB/パートナーシップ担当]

[ 明石尚之 ]
栃木で待ってるよ。本村直樹[元・三重ホンダヒートWTB/パートナーシップ担当]
現役時代は184センチ、88キロ(撮影:松村真行)

 三重ホンダヒートは、来年度から栃木の宇都宮に拠点を移す。
 新しいクラブハウスは現在建設中だ。「先発隊」が工場や自治体、地元企業などとの連携も進めている。

 パートナーシップ担当としてその仕事に従事する一人が、昨年度まで現役選手だった本村直樹さんだ。

「ホンダの事業所やスタジアムの近くに工業団地があるのですが、そこでアポの取れた企業さんに挨拶回りをしています。これまで150社以上伺わせてもらっていて、その後も継続的にメルマガでヒートの情報を配信しています。試合前にはチラシ配りをしています」

 4月で誕生日を迎える33歳。仲間には「ウッディー」、「もっくん」の愛称で親しまれる。

 現役生活の終わりは突然だった。シーズン終盤のゴールデンウィーク前に、前田芳人GM(当時)からそのことを伝えられた。

「社員でもあったので社業への不安もありました。でも前の週まで試合に出ていたので、(選手として)またまだいけるとも感じていて。飲み込むのは難しかったですね」

 ほどなくしてチームの入替戦出場が決まった。残り数週間の現役生活、モヤモヤした気持ちのままでは終われなかった。

「ちゃんと区切りをつけたいと思ったので、キアラン(クローリーHC)になぜ来季はプレーできないのかを聞きに行きました。オブラートに包む必要はないから教えてくれと。いまのホンダでは劣っていると思っていないけど、チームがもっと強くなっていく上で選手を入れ替えることを考えると…ということでした。スピードが落ちているとも指摘されて。そうであれば妥当だなと、タイミングとしては理解できました」

 受け入れてからは、チームのために動いた。「グラウンドに立つ以上は練習中の態度や強度にはこだわった」という。

「引退をアナウンスされた選手の中には、気持ちが切れてしまう人も過去にはいました。いざ自分がその立場になった時、本当に難しいなと。でも、絶対に何かしらで貢献したいと思っていました」

 17年に及ぶラグビー人生を振り返ると、恩師からの言葉が脳裏に浮かぶ。
 結婚式の際、参列した筑波大の古川拓生先生(前監督)に言われた。

「(本村は)兎と亀でいうところの典型的な亀だと。容量は良くないけど、本当に地道に1歩1歩ちゃんと前に進んできたと言われて。それがすっと心に落ちてきたんです。亀だったからこそ、多くの兎を追い越してこれたと思います。同級生にスター選手がいっぱいいたけど、長く競技を続けられた方でした」

 松島幸太朗、福岡堅樹、流大、徳永祥尭、小倉順平、布巻峻介…。1992年生まれは黄金世代だ。

 一方の本村は、高校時代は無名だった。青森県出身。地元の八戸高校でラグビーを始めた。高校3年間での、花園予選の最高成績はベスト16だった。

「田舎の弱小校だったので、本当にここまで来れるとは思いませんでした」

 1年間の浪人生活を経て一般入学で筑波大に進むと、その才能が花開いた。3年時からWTBやFBでレギュラーの座を掴み、ホンダでも1年時から先発出場を重ねた。

 2年目からセブンズの世界に飛び込み、世界を転戦した。代表キャップは26を数え、キャプテンも経験。東京オリンピックの舞台にも立った。

 這い上がれたのは、多くの負けを学びに変えたからだ。

「こんなに負けを経験してきた選手っているのかな、と思うくらい負けてきました。高校では大事な試合を自分せいで落としてきたし、大学でもホンダでも…。セブンズをいれたら大変なことになります(笑)。たくさん負けたけど、その都度立ち上がって、1歩1歩進んでこれたのでここまでやって来れたのかな」

「だから勝った試合はよく覚えているんです。実は自分が出場したホンダの試合で、トップディビジョンで勝てたのは現役最後のシーズンの重工(相模原DB)戦が初めてでした。その試合も劇的でしたし(38-37)、大学では帝京の連勝記録を止めました。セブンスではロンドンでイギリスに勝ったり、パリでフランスに勝ちました」

 その歩みで大切にしてきたのは、「いろんな人の言葉にちゃんと耳を傾ける」ことだった。
 メンバー外で苦しむあらゆるカテゴリーの選手たちに届いてほしい金言である。

「大学時代に、試合に出られないのはディフェンスが悪いからだと思っていたのですが、コーチと話すと『アタックが課題で…』と言われました。このギャップってすごくもったいないなと。それからはコーチとよく話すようになりました」

「コーチ陣に使いたいと思われるためには、柔軟さが必要だと思っています。跳ね返す強さがあればそのままでもいいと思うのですが、自分の色ややりたいことは、使ってもらえるようになってからでいいと思うんです」

 2018年のワールドカップ・セブンズも一度は構想から外れていたが、最終的にはコーチ陣の信頼を勝ち取った。
 その延長線上に、東京オリンピックがあった。

「本気でメダルが取れると思っていたし、そのためにカルチャーを1から作ろうと、たくさん話し合ってきました。(ともにリーダーを務めた松井)千士の結婚式がオリンピックの1年後にあったのですが、二次会で僕を見るなり千士が急に泣き出して…。それだけセブンズファミリーとして過ごしてきたし、本当に濃い時間でした」

 東京オリンピック後は、送り出してくれたホンダへの恩返しの気持ちを強く持った。「セブンスを通してホンダをより好きになった」という。

「ワールドシリーズでトライをした時、実況と解説の方が『本村はホンダのクラブに所属してる』、『どうりでいいエンジンを持っているわけだ』と紹介してくれて。ホンダの企業イメージの強さというか、このチームにいることの誇りをすごく感じました」

 今季は宇都宮のホストスタジアムである、ホンダヒート・グリーンスタジアムで4試合が組まれている。
 うち2試合を終えていずれも白星を掴んだ。2月7日には昨季王者の東芝ブレイブルーパス東京を破った。

 3試合目は3月14日(第11節)。横浜キヤノンイーグルスを迎える。

「僕はラグビー体験のブースにいます!」

 みんな、栃木で待ってるよ。

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