変化したD-Rocksの象徴。佐々木柚樹は「皆を信じています」
昔はこんな未来が訪れるとは思わなかった。佐々木柚樹は感慨深げに言う。
「でも、嬉しいです。よかったです。ラグビー、続けていて」
現在、国内トップのジャパンラグビーリーグワン1部に参戦している。浦安D-Rocksの一員として、各国代表選手らとしのぎを削る。
いまや業界トップ級の舞台を職場とするが、この競技を知ったのは15歳の頃だ。他の一線級よりは遅い。
かつ、それ以前に親しんでいた軟式野球でも苦労した。
小学校では花形とされるショートを守るも、八戸第一中の下級生時は大柄だったのもありサードの控えになった。いざ最上級生になったら、「強い打球が捕れなさ過ぎて…」。一塁手の後輩とポジションを入れ替えた。
転機を迎えたのは2018年。八戸工高に進んでからだ。
野球部に体験入部すべく土のグラウンドへ向かうさなか、ばったり出くわしたラグビー部員に腕を引っ張られた。
「いい体格しているね。来てみ」
そのまま白球と別れ、楕円球を追った。
適性があった。1年生まで教わった苫米地衆候監督に、大東大入りを勧められた。まだ競技のいろはを学んでいるタイミングで、指導者の母校にスポーツ推薦で行けそうになったのだ。
当初は就職を検討していたためその誘いを保留としたが、すぐに将来を考え直した。というのも2年時、日本ラグビーフットボール協会主催の通称「ビッグマン&ファストマン・キャンプ」に呼ばれたのだ。専門的な練習で刺激を受け、次の道を想像した。
幸い、大学の件は、高校2年で出会った新監督の奈良慶一氏に引き継がれていたとわかった。伝手を活かし、地元を出た。
大東大では1年時から主力となり、20歳以下日本代表にも選ばれた。おかげで’25年から、リーグワンに挑めることとなった。
「親に『(高校で)ラグビー部に入る』と言ったら『何それ?』と。いまは両親とも、ラグビーファンです」
実質1年目の今季は、準備段階から好循環にあった。
12チーム中最下位だった前年度を経て、クラブはマネジメントスタッフと一部のコーチ陣を刷新していた。
この流れで新ヘッドコーチとなったのが、イングランド出身のグラハム・ラウンツリーだ。激しさと規律を重んじ、佐々木の言葉を借りれば「流れは(昨年度までと)同じでも強度と内容が違う」というトレーニングを提供。集団に粘りと一体感をもたらしている。
第6節終了時点での1試合平均反則数は「12.3」。昨年のレギュラーシーズン18戦のそれと似たようなものだ。もっとも自陣ゴール前で踏ん張ったり、味方のキックを皆で一列になって追いかけたりと、互いの繋がりを前提としたハードワークがいまのD-Rocksには見られる。
個々人が盛り上げようにもどこかまとまりに欠く、昨季までの様子はなくなったようだ。
「(いまの首脳陣は)ミーティングで(試合の)映像を見ていても、『流されているけど、ここは(ルール上)オフサイドだ』とか、レフリーが見つけていないグレーなプレーを切り取ってくれる。別に個人の攻撃をするのではなく、『こういうところを、チームでしっかりなくさないといけない』と伝える。『ダメなことはダメ』という明確化がなされているので、僕らもわかりやすい」
こう語る佐々木は、覚醒しつつある集団の象徴でもある。
ラウンツリーはリーダー選定の際、実績や才能よりも献身性を重んじた。
おかげで身長188センチ、体重103キロで2列目のLOとして身体を張る佐々木は、まもなく23歳という若さにしてゲーム主将を任されることがある。
新主将でHOの藤村琉二が欠場した場合に備える。昨年12月13日の開幕節が、そのひとつだった。
本番の数日前だったか。クラブハウスでラウンツリーと出くわした時にこう告げられ、興奮した。
「You are captain! OK?」
いざキックオフが近づけば、「やることは変わらない。僕が言葉で引っ張っていくタイプじゃないことを、皆がわかってくれていました」。三菱重工相模原ダイナボアーズを27-24で下した。
「ウィッグにも『身体で示してくれれば』と言われたので、とにかく声出して、鼓舞しよう、と」
ちなみにラウンツリーは、各選手の同僚からの印象も考慮して主将をチョイスしたと話す。抜擢された側はこうだ。
「僕も琉二さんやD-Rocksの皆を信じています」
続く第4節の横浜キヤノンイーグルス戦では、自陣ゴール前でのトライセーブを披露した。28-22でノーサイド。いつもしている、コンタクトスキルのセッションの成果が出たと頷く。
第6節までに3勝。すでに昨季と同じ白星を得た。
アシスタントコーチや主力選手の顔ぶれに、そう大きな変化はない。指揮官が代わるだけで、かくも組織は変わるのか。佐々木が首を縦に振る。
「僕も、びっくりしています」
目標は、「D-Rocksの順位を昨季より上げる。勝利に貢献する」。若き実力者が周りに聞かれる日本代表入りへの意欲については、関連の質問が出る前にこう申告した。
「行きたいけど、まだまだ。チームのことを見て、自分と向き合って、シーズンを通してよかったところ、だめだったところを振り返って、ちゃんと行ける自信をつけて挑戦したいです」
突進役、およびサポート役としての鋭さや激しさを磨き、己に力があると確信してナショナルチームへ加わりたい。




