タックルがしたかった元キーパー。藤殊華、再三のリハビリを経て日本一に。
困難を乗り越えてきた。
2月1日の東京・秩父宮ラグビー場で全国女子選手権の決勝があり、25歳の藤殊華は所属するYOKOHAMA TKMの右PRとして先発した。
76分間プレーし、横河武蔵野アルテミスターズを21-12で撃破。単独チームとして史上初の優勝に喜んだ。
ミックスゾーンで記者に捕まると「うーん、(取材は)苦手」と困ったような表情になりつつ、激闘までの道のりを語った。
明大や神戸製鋼で活躍したHOの高之さんを父に持ち、兄でPRの涼雅も明大を経て現横河武蔵野アトラスターズ。藤は幼少期からラグビーと身近だった。
一時はそのスポーツを「避け」るかのようにサッカー、水泳を楽しんできたが、本能には、逆らえなかった。
中学2年でラガールセブンウエストに出向いた。
「サッカーでキーパーをしていたのですが、ちょっと、『タックルしたいなぁ』と思っちゃって。それで、ラグビーの体験に行ったら楽しくて…」
追手門学院高、立正大でラグビー部に在籍した間は、度重なる怪我に泣いた。両肩を脱臼したうえ、両膝にもトラブルを抱えた。高校時代、医師に患部を切断する可能性もあると告げられた。大学生活のほとんどを治療、リハビリに費やした。
「周りがどんどん代表に入っていたなか…きつい時間でした」
厳しい時間の延長線上で迎えた今度のファイナル。強烈なタックルを幾度となく放った。覚悟があった。
「自分が刺さりにいかないと、という気持ちでやっていました。社会人になるまではすぐに(肩を)脱臼していて、タックルはすごく苦手でした。今季は(恐怖心を)乗り越えたと思います」
好機にはモールの核を全うした。「私が前に進まないと、モールが進まない。低い姿勢でどんどん行こう」と踏ん張り、ボールを持つ支柱役を保護した。
持ち場のスクラムでも光った。現役の代表選手が揃うアルテミスターズのパックに対し、時間を追うごとに圧をかけた。7-12と緊迫する後半21分頃の1本をプッシュし、ペナルティーキックを獲得した。
「スクラムで勝たないとチームを勢づけられないなって思って、ヒットから、思いきり、行きました。最初はチームから『押す』というコールがなかったので(組んでからは)キープしていたのですけど、前列同士で『これは、押せる』と」
その約3分後に14-12と勝ち越し、交代直前にも加点した。
TKMは、東京サントリーサンゴリアスで指導する青木佑輔に教えにきてもらうことが多い。細部にこだわり、FW8人の一体感を醸すようになった。おかげで専門職のいまの位置に転じて2年目の藤も、力を示すことができた。
「組み方が変わりました。(2、3列目を含めて)まとまりが出て、押しやすくなりました」
雌伏の期間を終え、頂点に立った。これから目指すのは、日本代表入りだ。
昨年のワールドカップイングランド大会の直前期にキャンプへ呼ばれることはあったが、ちょうど膝を治している最中だった。次回大会までの間はコンディションを保ち、スコッドに定着したい。



