33歳でHOに転向。ワイルドナイツの布巻峻介「最後に大きなチャレンジを」
ずっとしてきたスポーツに新鮮味を覚える。
埼玉パナソニックワイルドナイツの布巻峻介が、ポジションチェンジを決めた。長らく親しんできたFW第3列(バックロー)のFLから、第1列のHOに移った。スクラムでは先頭中央に入るうえ、ラインアウトの投入役も担う専門職だ。
「楽しいですよ。新しいことをすることで、初心者になって、自然と学ぶことへも意欲が出てきます。ある程度、知ってしまうと、失敗も滅多にできるものではないじゃないですか。でもHOになってまだできないこともたくさんある。そういったことに取り組むのは、楽しいです」
身長178センチ、体重98キロの33歳。東福岡高のエースだった頃は突破役のCTBを担い、早大在学中にFLへ転じる。激しいタックルと地上戦での絡みを長所とし、2015年加入のワイルドナイツでは主将を任されるまでになった。
16年からは日本代表にも入り、ナショナルチームを支えるサンウルブズの一員としてスーパーラグビーにも参戦。19年には、ワールドカップ日本大会のジャパンの選考レースにも絡んだ。
近年はワイルドナイツで指導役も担うなど信頼を集めていた。現役生活の終盤に突入していると自覚し、決心した。
「ラグビー人生の最後に、何か大きなチャレンジをしたいなと思って」
過去の言葉が頭をよぎった。以前、今年からエグゼクティブアドバイザーとなったロビー・ディーンズ前監督にもコンバートを勧められたのを思い出す。
「僕が1、2年目の時、ずっとロビーさんが『お前はHOになれ』と。その時は『なるわけないだろう』と突っぱねて、FLでちょっとは活躍できて、結局その道に進むことになったんですけど」
昨季のリーグワン終盤戦から専門のトレーニングを始め、新シーズンに際して本格的に転向した。
「これであまりうまくいかなかったら、もう、辞めるというか…。逆に、バックローのままだったらもう辞めていたでしょうし」との思いで、初めの一歩を踏み出した。
このほど、クラブのOBで日本代表のHOとして4度のワールドカップに出た堀江翔太がアシスタントコーチに就任。自身が信頼する佐藤義人トレーナーから教わった身体操作、身体作りの理論をベースに、スクラムのフォームを伝授する。
「怪我をしない身体の使い方を意識して教えてくれています。怪我をしない組み方イコール強い組み方だと思う」と布巻。秋の練習試合で新しい働き場でプレーし、好感触を得る。
「全然トップレベルではないですが、やれていないのかと言われたらそういうわけでもない、というレベルには来たのかなと思います」
スタッフを刷新して迎えた今季のチームにあって、「『ワイルドナイツって何なの?』についてのコアなところは、ずっと(部内で)引き継がれてきた。それを伝えることも大事」。約1か月後の開幕へ、フレッシュな心持ちの年長者として生きる。



