昨季王者パナ、初陣飾る。プレシーズンでもディーンズ監督は「これがTL!」
7番を着て先発出場したパナソニックのルーキー、布巻峻介(撮影:松本かおり)
日本最高峰ラグビートップリーグ(TL)で昨季王者のパナソニックは5日、東京・秩父宮ラグビー場での今季初の公式戦を白星で終えた。
今年度から始まったTLの前哨戦、プレシーズンリーグのプールA(16チームを4つのプールに分割)の第1節で、下部から4シーズンぶりの昇格を果たしたホンダに39-20で勝利。元オーストラリア代表ヘッドコーチで就任2年目のロビー・ディーンズ監督は「やろうとしてきたことを進化しながらできた」と振り返った。
有料試合の同リーグを、各クラブとも11月開幕のTLへの練習試合と捉えているようだ。この日の同会場ではプールDの初戦もあったが、豊田自動織機(昨季15位)と14-14で引き分けたキヤノン(同7位)の永友洋司監督は、「プレッシャーのかかったなかで自分たちのストラクチャーができなかった」。双方とも攻め込んでのミスやタッチキックのエラーなどを重ね、展開はやや間延びした。
そんななかパナソニックは、集中力と反応速度で光った。HO堀江翔太主将ら主力をワールドカップ(9月18日開幕・イングランド)の各国代表ツアーに送り込んでいるが、、相手のPR元公法には「こっちのミスが起きた時、パナソニックさんはどこにボールを運ぶかの意識統一ができていた」と感嘆される。
「逆にこっちが突破した後でも(その走路の先へ)しっかりと帰って、プレッシャーをかけられるようにしていた」
17-10でリードして迎えた後半3分だ。SOべリック・バーンズが、敵陣22メートル線付近右のラックの脇にスペースを見つける。球を拾い直進。以後、攻めは左へ連なる。最後はWTB児玉健太郎がインゴールを破るなどし、スコアを24-10と広げた。ボール保持者へのサポート、意図を共有しながらの陣形形成で、終始、流れを円滑にした。
守っても看板の組織力を示す。アウトサイドのCTB百武優雅が、相手を大外から内側へ追い込むようにせり上がる。1人がタックルを外されても、他選手が予定通りといった趣でカバー。大概、事なきを得た。攻め込んで落球した直後にも、各人が素早く守備位置についていた。
後半19分には、自陣中盤でNO8テビタ・ツポウがタックルした地点へ他の仲間が駆け込む。攻守を逆転させ、敵陣深い位置へキックを放つ。その弾道を複数人で追った1人、HO設樂哲也が止めを刺した(36-13)。
前半21分までプレーしたWTB北川智規ゲーム主将は「楽しもう、そして勝ち切ろう、と」。無形の意識の高さが、他チームの試合とのクオリティーの差につながっていると匂わせたか。
「新しいストラクチャーを試すとか、そういったチャレンジをする部分もあります。ただ、練習試合でも1つひとつが勝負。秩父宮で、ファーストジャージィを着られることには誇りがありますし」
この先、合流する主力格との部内競争を見据えてか、ディーンズ監督はこう発す。
「いまのメンバーは、こここそがTLだと思って欲しい。皆にはそう伝えています。なかには、きょう初めてTLレベルでプレーした選手もいます。彼らにとっては、ここでのパフォーマンスが(11月以降の)TLのセレクションに意味を持ちます」
いくつかのラインブレイクやターンオーバーで魅せるも反省を忘れぬ新人、FL布巻峻介は、「いまできていないものはあっても、絶対に(目の前のプレーを)やり切る。その信念は感じますね」と発言。「自分たちにフォーカスを向けていると思います。公式戦でも固くならず、自分たちのやってきたことを楽しんで出す、という感じ」と語り、先を見据えていた。
「敵と戦っているようで、自分たちと戦っている」