【サクラフィフティーン PICK UP PLAYERS】負ける気はしない。佐藤優奈[LO/東京山九フェニックス]
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LOの佐藤優奈は、各所でリーダーないしリーダー的役割を担う。
サクラフィフティーンでは、ラインアウトのコーラーを務める。得点源であるモールの起点だ。「自分のチョイスで試合の流れが変わる」緊張感がある。
練習ではFW内で二手に分かれ、競い合う時間がある。コーラーのサイン選択も採点対象という。
「合宿中は寝る前に、あのサインはああすればよかったとか、あの時こうしとけばよかったと考えてしまって、眠れなくなる日もあります」
慶大入学と同時に加入した東京山九フェニックスでは在籍最年長(26歳)。昨季はキャプテンとして全国女子選手権3連覇に導いた。石見智翠館では副将とあり、キャプテン経験は初めてだった。
「これまでは自分のことだけを考えてがむしゃらにやってきましたけど、キャプテンになって少しは周りも見られるようになったと思います」
宮城県出身。小学5年時に弟・大地(江東BS・LO)とともに、近所で活動する古川ラグビースクールに入団した。
しかし中学に上がると、女子の同級生や後輩が競技から離れる。3年間はほぼ女子一人だった。
「男子だけで固まってしまい、あまり楽しくなくて。ラグビーに生きればと思って入った、部活の陸上にのめり込んでいました」
4種競技では県大会で優勝し、東北大会でも上位にランクイン。それでもラグビーから離れなかったのは、中学2年時にセブンズユースアカデミーに呼ばれたからだ。
周りが強豪の智翠館に進学すると聞き、それに倣った。「そこで火がつきました。私も行かなきゃって」。
智翠館でははじめWTBだったが、トレーニングを積むにつれて体重が急激に増加。強みだったスピードがなくなり、2年時の途中にはFWに転向した。
「そこからいまでも強みにしているフィジカルに自信がつきました。ボールを持って走ったら、ずっと立っていられました」
レスリー・マッケンジーHCもその接点の強さを評価し、代表活動に呼んだ。きっかけは代表候補合宿でおこなった恒例のコンバットセッション(マット上でおこなうコンタクト練習)だった。
「体重別でおこなうのですが、無双してしまって(笑)。そこで良いかもって思ってもらえました」
2019年のデビュー以降、2023年に加入したウェスタン・フォースで初戦の開始20分に右膝前十字靱帯を断裂して全休した同年のテストマッチ以外は、ほとんどの試合で先発している。
指揮官からの信頼の高さがうかがえるが、2022年のW杯を経験し、さらなるサイズアップを追求した。
「前回大会のときは75㌔もなくて(身長170㌢)、次のW杯では80㌔以上で臨みたいなと。いまは82㌔ぐ
らいで、海外の大きい選手相手でも怖さはなくなりました」
「プリティーダイナソー」の愛称で親しまれるように、その激しいプレースタイルとは裏腹に普段はほんわかとした一面も持つ。
「会社でも、普段の佐藤さんとラグビーをしているときの佐藤さん、どっちが本当の姿なの? と言われます(笑)」
勝負事には自然と力が入る。運動会や持久走大会、スポーツテストは「何を目指しているとかでもなく」本気で取り組んでいた。
2回目の大勝負が、まもなく始まる。気合いは十分だ。
「これだけやって何も得られなかったら、もうどうしたらいいのってくらいやってきました。絶対に結果を残したいです。負ける気はしません」
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン9月号(7月25日発売)の「女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は7月15日時点。