日本代表 2025.06.20

防御に経験値。求む、田中史朗。日本代表エディー・ジョーンズの宮崎合宿談話。

[ 向 風見也 ]
防御に経験値。求む、田中史朗。日本代表エディー・ジョーンズの宮崎合宿談話。
取材に応えるエディー・ジョーンズHC(筆者撮影)

 あれはギャリー・ゴールドだ。

 6月20日にメディアに公開されたラグビー日本代表の宮崎合宿のトレーニング場に、従前のキャンプで見られない指導者がいた。

 関係者によれば、ゴールドが守備担当コーチの後任候補として招かれていたようだ。肩書きはアドバイザーである。

 現コベルコ神戸スティーラーズ、アメリカ代表、南アフリカのブルズで指導歴のある熱血漢は、笛を鳴らし、選手に指示を送っていた。皆が一枚岩となって一気にせり上がる防御を落とし込もうとしていた。

 不在の可能性も懸念されたポジションが埋まりそうな現況について、エディー・ジョーンズヘッドコーチは慎重に説明した。

「いまのコーチングスタッフは若いので、経験値がある人が必要だと思いました。いまはまだアドバイザーです。(守りでは)コネクトして、ラインスピードをあげたらもっと(相手を)止められる。ストラクチャー化されたなか、エネルギッシュに(走者を)仕留めに行くんだと思わせる。ディフェンスを楽しめるよう、促していかないといけない」

 アタックでも変化を匂わせる。出足の鋭さと献身を貴ぶ『超速ラグビー』というコンセプトはそのままに、より効率的に攻め勝てるように球の動かし方、布陣を微修正した。

「勢いをつけながらのキックゲームに着手。相手のディフェンスを崩すキックを考えます。(仕組みの変化は)若干です。試合でできるか、見ていきたい」
 
 この日午前の練習では、東芝ブレイブルーパス東京のリーチ マイケルやワーナー・ディアンズら、一部選手が合流前だった。

 球の出どころを担うSHの位置では、トゥールーズの一員としてフランス・トップ14に挑む齋藤直人、リーグワンの決勝でブレイブルーパスに惜敗したクボタスピアーズ船橋・東京ベイの藤原忍が加わっていなかった。

 この位置で光っていた1人は福田健太。テンポのよいさばきと意表を突くキックを披露した。リーグワンの東京サントリーサンゴリアスに移籍1年目だった昨季は、ベンチスタートが多かったものだ。ジョーンズは笑いながら言う。

「福田はよかったですね。(リーグワンの視察時)どうしても70分くらいで帰らなければならないところ、彼は71分以降に出場することも。だからいつも『10分』と呼んでいます! ただ、今回の練習では素晴らしかった」

 ここから引き合いに出すのは、12年から敷いた第1次政権時に正SHとした田中史朗。国際リーグのスーパーラグビーに参加した最初の日本人として知られる熱血漢のような存在を、ボスは探している。

「フミアキみたいな考えの選手が欲しい。小さくてもチームの魂となり、タフで、賢く、チームをリードする9番(SH)を求めます」

 前年度、約9年ぶりに復職。初年度のテストマッチの戦績を4勝7敗で終えている。

 2023年までと比べて大幅にメンバーが若返るなか、教え方に試行錯誤を繰り返した。今度のキャンペーンへ、自身のコーチングをアップデートさせたと訴える。

「1日ごとに何をするかをもっと具体化して動いています。(チームは)去年よりすべきことがわかっています」

 7月5、12日の対ウェールズ代表2連戦(それぞれ福岡・ミクニワールドスタジアム北九州、兵庫・ノエビアスタジアム神戸)をターゲットに据える。その前哨戦として、6月28日にはJAPAN XV名義でのマオリ・オールブラックスを控える(東京・秩父宮ラグビー場)。

 指揮官は「ウェールズ代表戦へはふたつのセレクション(選手選考)方法がある。ひとつはマオリ・オールブラックス戦、もうひとつは練習です。マオリ・オールブラックス戦とウェールズ代表戦」「マオリ・オールブラックス戦ではゲームタイムが必要な選手にそれを与える。この試合に向けた準備をウェールズ代表戦に有効活用したい。まったく同じ戦い方をするわけではありませんが」と述べる。

PICK UP