国内 2025.06.09

ラピース二世。ヴィリー・ポトヒエッター[コベルコ神戸スティーラーズ/FL]

[ 明石尚之 ]
ラピース二世。ヴィリー・ポトヒエッター[コベルコ神戸スティーラーズ/FL]
190センチ、106キロ。南アフリカではブルー・ブルズに在籍していた(撮影:福島宏治)

 コベルコ神戸スティーラーズの関係者は言った。

「ラピース二世になれると思うんです」

 ラピースとはピーター・ラブスカフニの愛称。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのFLで、日本代表19キャップを持つ。

 2019年のW杯には全5試合に先発。献身的なプレーで日本代表初の8強入りに貢献した。

 そのラピースに、スティーラーズのヴィリー・ポトヒエッターは似る。
 同じ南アフリカから2022年に来日した23歳だ。

 5月24日のリーグワン2024-25プレーオフ準決勝、東芝ブレイブルーパス東京戦で光った。
 
 まず、前半8分頃に自陣ゴール前で落球を誘う好タックルを見せる。その直後にはラインブレイクでチャンスを演出した。
 20分にはスティールを決め、後半に入ってもタックルに次ぐタックル、何度も球に絡んだ。

 謙虚な姿勢もラピースに似る。「今日は良いパフォーマンスができたと思います」と言う前に、「ディフェンスだけに限って言えば」と前置きした。

「チームとしても重要な局面で固く守りができました。みんなの努力は疑いようがありません。ただ、試合の結果には残念ながら反映されてませんでした。自分でも2、3回ターンオーバーした記憶はありますが、その後にペナルティーを与えてしまいました」

 デイブ・レニーHCは以前、ヴィリーのスティールは昨季在籍したNZ代表のアーディー・サヴェアよりも上手いと評した。
 その評価を伝えると、また謙遜しながら言った。

「逆に彼からたくさんのことを学んでいまに至っています。そこで得た経験は本当に代え難いものでした。ボールを奪うことについては、ただ力任せではなく体の高さや入るタイミングなど、(ラックへの)エントリーの仕方を学びました。ただ、一番の学びはオフフィールドでの立ち振る舞いです。これが本当のラグビープレイヤーなんだと尊敬しました」

 この日に限らず、加入3季目の今季は存在感を増していた。
 過去2シーズンで3試合しか出場できなかったが、今季は16試合に出場、8試合に先発できた。

 翌週の3位決定戦では、後半25分に値千金の決勝トライを挙げる。途中出場ながら、埼玉ワイルドナイツ相手に21シーズンぶりの勝利をもたらした。

「卑屈に聞こえるかもしれませんが、プレータイムを増やせた要因は、やはり外国人の枚数(カテゴリB、C)が関係しています。1年目はまだまだ若く、力不足な面もありましたが、2年目はアーディーがいました。そして今季は彼がいなくなった穴を埋めることになり、チャンスを掴み取ることができました」

 ハタチと若くして来日を決めたのは、「ゆくゆくは海外を開拓したい」思いがあったからだ。

「あらためて日本ラグビーに参加させてもらえていることは、この上なく特別なことですし、すごくありがたいことです。日本はとても安全でラグビーのレベルも高い。自分が望んでいた生活ができています」

 日本への思いは、2015年のW杯で母国・南アフリカを破って以来、強くなっていったという。
「桜のジャージーを着ることは、長年追い続けている夢でもあります。自分がパスポートを取る前に選ばれたら嬉しいです」

 ラピース二世への道は続く。

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