コラム 2015.07.06

ジャパンセブンズで神戸製鋼に100万円 帝京大は悔しさもらう

ジャパンセブンズで神戸製鋼に100万円 帝京大は悔しさもらう

 7月5日、秩父宮ラグビー場で開催された「ジャパンセブンズ2015」では、関西出身選手が大活躍。頂点に立ったのも神戸製鋼コベルコスティーラーズだった。「(この優勝を)一番びっくりしているのは、神戸製鋼の選手だと思います」。セブンズ神戸製鋼のキャプテンを務めた安井龍太(東海大仰星→東海大)は優勝後の記者会見で軽妙なトークを展開。報道陣から賞金100万円の使いみちを問われると、「妻の出産で急きょ抜けた選手、怪我をした選手を除くと、最後は10名でしたから、一人10万円ずつ、ガチで欲しいです(笑)。こればっかりは会社に聞いてください!」と、本当に欲しそうに話して報道陣の爆笑を誘った。

 日本のトップリーグ、大学チームは、ほとんどが15人制ラグビー強化に集中しているため、セブンズ(7人制ラグビー)の練習に割く時間は少ない。神戸製鋼も今大会のために2回の練習で臨んだ。このことの是非は本稿では置いておくとして、神戸製鋼はプール戦ではディフェンディング・チャンピオンのリコーブラックラムズに、21-26と惜敗。東芝には、19-14と辛勝し、1勝1敗のプール2位でカップトーナメントに進出した。この戦いを見た人は、「神戸の優勝はないな」と思ったはず。しかし、安井キャプテンは、「リコーに負けたことで変わった」と、負けん気の強い選手たちの闘志に火がついたと説明。「試合を重ねるごとに、どうやってスペースをつけばいいかも分かるようになってきました」と、田邊秀樹(啓光学園→早大)、井口剛志(伏見工業→早大)、南橋直哉(伏見工業→帝京大)、中濱寛造(常翔学園→早大)など、潜在能力の高い選手を軸にチーム力がぐんぐん上がったと語った。

 安井キャプテン自身もこの春、南橋、中濱とともにニュージーランドで武者修行。その時にコーチから「もっと自分の良さを出せ」とアドバイスを受けた。体を絞り、持ち前のスピードに磨きをかけ、今大会では何度もロングゲイン。決勝でも約60mの独走トライを決めて見せた。「自分の良さはスピードです。そこにフォーカスしてトレーニングしました。体重は2?落ちただけですが、体の中身が変わったと思います」。決勝の相手が大学時代に負け続けた帝京大だったことで燃えたか?という質問には、「たしかに負けていましたけど、大学生には負けられない気持ちが強かったです。南橋は、帝京はV3時代が一番強かったことを証明する、と言っていましたけどね(笑)」。

 MVPは、カップトーナメント準決勝(対 宗像サニックスブルース)、決勝(対 帝京大)で勝利を決めるトライをあげたマット・バンリーベンが受賞。入社1年目のSH梁正秋(大阪朝高→京産大)の堅実なタックルも光り、神戸製鋼にとってはトップリーグに弾みをつける優勝となった。

 関西セブンズ王者の京都産業大は、プール戦3位でボウルトーナメントに回り、決勝で東芝に敗れたものの、俊足の松井匠(東海大仰星)、坂本英人(御所実業)、プレーメイカーの森田慎也(洛北)らがキレのある動きで観客席を沸かせた。

 決勝で敗れた帝京大学でも、キャプテンとしてチームを率いた松田力也(伏見工業)U20日本代表WTB尾崎晟也(伏見工業)、ルーキーの竹山晃暉(御所実業)ら関西勢が躍動。特に竹山は、抜群のスピードで60m以上の独走も含む8トライを決め、3連覇を狙ったリコーを破った試合でも終了間際の決勝トライをあげる活躍だった。それでも大会後のコメントは悔しさがにじんだ。

「決勝戦でベストパフォーマンスが出来ませんでした。トップリーグの選手とはコンタクトの激しさが違いました。通用したのはスピード、しなかったのはフィジカル。100万円の代わりに、悔しさをもらった大会として、しっかり持ち帰って次に生かしたいです」。4月の入学後、初めて試合に負けたこともあって反省の言葉が多かったが、この謙虚さがあれば、15人制のシーズンでもトライ量産しそうだ。

(文:村上晃一)

【筆者プロフィール】
村上晃一(むらかみ・こういち)  ラグビージャーナリスト。
京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年 4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーラン スの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグ ビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。BS朝日「ラグビーウィークリー」にもコ メンテーターとして出演中。

(ジャパンセブンズ2015表彰式で喜ぶ神戸製鋼の選手たち/撮影:矢野寿明)

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