国内 2025.03.19

再びファイナリスト撃破。静岡ブルーレヴズが雨の本拠地で喜ぶ。

[ 向 風見也 ]
再びファイナリスト撃破。静岡ブルーレヴズが雨の本拠地で喜ぶ。
大戸裕矢を中心にモールを押し込む静岡BR(撮影:舛元清香)

 敵地のヤマハスタジアムが雨に降られる中、クライマックスにチャンスを迎えた。

 国内リーグワン1部でレギュラーシーズン首位だった埼玉パナソニックワイルドナイツは、3月16日、静岡ブルーレヴズとの第11節で再三のチャンスを作っていた。

 5点差を追う最後の最後の瞬間も、自陣ゴール前中央でペナルティーキックをもらった。好きなプレーを選んで逆転する絶好機だ。

 チョイスしたのは、一般的と言われるラインアウトでも、ゴールポスト近辺で組めるスクラムでもなかった。

 タップキックからの速攻だった。

 今季から主力入りしてゲーム主将を託されるSOの山沢京平が判断し、手にした球を左へさばいた。

「ちょっとそこに間(スペース)があった。速めにボールを渡してアタックを」

 しかし仲間のノックフォワードに終わった。最後はブルーレヴズが楕円の宝物を護り、ノーサイドの瞬間を迎えた。ワイルドナイツは今季初黒星を喫した。

 ロビー・ディーンズ監督はしみじみと述べる。

「長い話を短くまとめると…この経験を次に活かしていきたい」
 
 スコアボードには「22-17」と光った。敗者がエラーに泣いた一戦は、勝者がタフさを示した一戦でもあった。

 ブルーレヴズは序盤、自陣ゴール前にくぎ付けにされながらも耐える、耐える。FLのクワッガ・スミス主将の地上での絡み、LOのマリー・ダグラスのチョークタックルが効いた。

 これまでゲームによっては大量失点を喫してきたが、藤井雄一郎監督は「(従来も)ディフェンス自体はよかった」と言う。

 反則で傷口を広げる傾向があったのを踏まえ、「タックルをした後に一歩も下がらないよう、50センチでも前に出る」とフォーカスした。タックラーが相手を押し込んでいる様子をクリーンに見せることで、レフリーへ好印象を与えようとした。

 相手の球出しを遅らせるのも意識した。LOの大戸裕矢は説く。

「ディフェンスでは2人目がボールに働きかけよう、と話していた」

 7-9と2点ビハインドでハーフタイムを通過。3本ものペナルティーゴールを決められたためだが、陣営はその事実も前向きに捉える。

 攻守で献身のSOのサム・グリーンは話す。

「強気でディフェンスし続けられた。彼らがペナルティーゴールを狙ってきた。ということは、自分たちのディフェンスが機能しているんだ、と自信がついた」

 逆に攻める際は、相手が球出しを遅らせに来るのを防ぐよう努めた。

 前半唯一のファイブポイントを奪ったシーンでは、相手をはがすひとつひとつのスイープが激しかった。

 その折フィニッシャーとなったSHの北村瞬太郎は、仲間に感謝する。

「皆、闘志がみなぎっていましたね。まずは(援護の)スピードで、フィジカルバトルで負けないと言い合っていて、それを体現してくれました」

 後半のブルーレヴズは、防御を継続させながら要所で自慢の破壊力を活かす。

 4分。中盤右での攻守逆転から左方向へ振ると、FLのヴェティ・トゥポウが正面のタックルをかわす。追っ手も振り切り約60メートルを独走。12-9と勝ち越す。

 身長190センチ、体重124キロの24歳が爆発したのを、指揮官は冗談交じりに讃える。

「あんな大きい選手が走ってきたら、パナソニックの選手もタックルに入るのが嫌なんじゃないかなと」

 12-12とされていた8分には、グリーンのハイパントとWTBのヴァレンス・テファレのハードタックルの合わせ技で陣地を確保。ルーズボールの行先に青いジャージィが殺到し、攻撃権も強奪する。13分、15-12と再びリードする。

 何より決定的なシーンを作ったのは、20分のことだ。

 大戸がトライラインを背にスティールを決めると、グリーンがロングキックでエリアを挽回。味方とともに弾道を追い、向こうが処理し損ねたボールを自らグラウンディングした。ゴール成功で22-12とした。

 我慢の末に一撃で況を変える、このゲームを象徴するような局面を生んだ。

 起点のターンオーバーは長いビデオ判定でペナルティーか否かを確認されたが、結局、不問に付された。

 渋く光った大戸は言う。

「(向こう側の)ボールがきれいに見えていたので狙いにいきました。特に今日は雨。(肉弾戦が増えやすく)いい感じで行けました」

 今季はレギュレーションが変わっている。海外ルーツ保持者がFWの隊列を埋めやすくなる中、身長187センチ、体重100キロとトップ級にあって大柄ではない大戸も気を吐く。

 売り出し中のトゥポウが鮮やかに得点した場面も、きっかけは大戸のロータックルだった。殊勲の35歳は述べる。

「(こだわるのは)タックル回数、トライになりそうなところでディフェンスするという危機管理。とにかく、動き回っています」

 ノーサイド。色とりどりの面子を躍動させたブルーレヴズは、同じグラウンドでの第5節でディフェンディングチャンピオンの東芝ブレイブルーパス東京を倒している。現状では、昨季のファイナリストをふたつとも攻略した唯一のクラブである。

 現在12チーム中4位。8位に終わった前年度からのジャンプアップが待たれる。

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