自分の殻を破る。ロサンゼルス五輪代表へ。サクラセブンズ大橋聖香。
7人制ラグビー(セブンズ)最高峰のワールドシリーズ「HSBC SVNS 2025」に出場する女子日本代表“サクラセブンズ”。今季は初戦の7位をスタートに6位、そして2025年初戦となったオーストラリア・パース大会では5位と順位を上げている。
パース大会はプール戦でアイルランドを14-7で下す。ブラジルには前半リードを許すも後半、逆転し19-12で勝利した。3戦目は王者ニュージーランドに5-52と大敗するも、プール2位で準々決勝へ進出。地元オーストラリアに0-35と敗れたが、5位決定戦ではアメリカを29-22と接戦を制した。
サクラセブンズのフォワードとして地道にタックルを仕掛け、チームに勢いを与えているのが大橋聖香(以下、聖香)だ。特にブラジル戦では後半からピッチに立つと4度のタックルを成功し逆転勝利に貢献した。
聖香は富山県出身の20歳。高岡市の中学を卒業すると女子強豪の石見智翠館高へ進学した。実力を積み高校時代には中国ブロック代表でU18全国大会へ。’23年、卒業後は福岡県の久留米大へ進んだ。女子チーム「ナナイロプリズム福岡」に所属する。
聖香はパース大会後、「ニュージーランドとオーストラリア戦を通して、ベスト4入りの壁は厚いがここからがサクラセブンズとしての本当の勝負。サクラセブンズが進化するためにも自分自身の壁も破らなきゃ」と家族に寄せた。
「殻を破る」は自分への戒めともとれる。昨年12月、聖香と会った際に「ロサンゼルス五輪代表をつかみたい」と3年後、’28年に開かれる祭典へ意欲を示した。
というのも昨年のパル五輪が苦い経験となっている。高校3年時の3月、パリ五輪のサクラセブンズへの第1歩、女子セブンズ・デベロップメント・スコッド(SDS)熊谷合宿に選出された。以後もSDSの常連になると8月、「2023アジアセブンズシリーズ第1次韓国大会」で初めてサクラのジャージを着た。
12月の「HSBSセブンズ2024」でも代表入りを果たした。しかし年が明け五輪本番になるとメンバー落ちが続いた。4月に発表された「パリ五輪スコッド」には名を連ねたが、最終メンバー発表に名前は載らなかった。
それでも進歩を続ける。パリ五輪が終わり新旧交代となったサクラセブンズ。兼松由香ヘッドコーチのもと、招集された。9月の「2024アジアセブンズシリーズ第1次韓国大会」ではキャプテンとしてピッチに立つ。以後メンバーに定着し、アジアシリーズからHSBCと戦いを続けてきた。
今年12月27日、聖香の姿は西の聖地・花園ラグビー場にあった。「第104回全国高校大会(冬の花園)」の開幕日だ。開会式のあと第1グラウンドで「U18花園女子15人制、東西対抗」がおこなわれる。東軍のリザーブ19番LOは妹、愛莉(関東学院六浦高2年)。妹の応援に父・伸宜さん(のぶたか)、母・千里さんとやってきた。
母は富山県の女子ラグビー界を牽引する。富山高専射水キャンパスで女子チーム「富山サンダーバーズRFC」を率いる。自らもプレーヤーとして昨年は「国民スポーツ大会」(旧・国民体育大会)の富山県代表として聖香とともに戦った。
妹は、姉とは違う道をたどってきた。富山サンダーバーズから関東学院六浦へ。夏のコベルコカップでは関東代表、11月の全国U18女子セブンズ大会は六浦高優勝メンバーだ。
そして冬は花園へ。後半からの出場となった。西軍のラインアウトには180センチ台の留学生もいたが対応できた。「最初は緊張したけどあっという間、楽しかった」。姉は話す。「妹の姿が刺激になります」。
そして1月、母はアメリカとの5位戦をネットで見ていた。「ハラハラしながら配信を見ていて泣いていました。聖香は5位に満足することなくすでに先を見据えている」。
次の五輪まで3年もある。当然、サクラセブンズはメンバーを固定することなく新しい逸材も加えて戦っていく。ナナイロプリズムから今回、サクラセブンズ入りしている永田花菜、吉野舞祐もライバルとなる。もしかしたら妹も這い上がってくるかもしれない。し烈な選考争いの道が始まった。