スピアーズで江良颯と切磋琢磨。為房慶次朗が嬉しかったこととは。
球を持てばタックラーに正面衝突。ぶちかましを食らわせる。
守っては勢いよく迫る走者と対峙。その場でせき止める。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイでラグビーをする為房慶次朗は、実質1年目ながら国内リーグワン1部のぶつかり合いで映える。身長180センチ、体重108キロの体躯は引き締まったシルエットながら、胸板、腰回りが逞しい。
昨季は明大卒業年度ながら、アーリーエントリーという制度を用いて公式戦に出ていた。その流れで昨春以降、日本代表の活動に参加できた。テストマッチデビューも果たした。持ち前のパワー、さらには勤勉さに磨きをかけた。
「ずっとプレーし続ける、走り続ける。いまは、それができてきている。立ったら、歩かずに、走る、と」
代表への帯同中、エディー・ジョーンズヘッドコーチから叱咤激励を受けてきたことをこう振り返る。
「最初のほうは(必要な)意識ができていなかったので、よく言われ(指摘され)ました。確かにプレーを(映像などで)見たら『歩いてるなぁ』と思いました」
ポジションは右PRだ。8対8で組み合うスクラムでも強さを発揮する。両肩と尻に負荷がかかるタフな働き場にあって、ひとたび作った姿勢を簡単に崩さない。
その凄さを知る同僚には、江良颯がいる。
スピアーズでは為房と同期入団で、右PRの隣のHOを務める。出身の帝京大では主将として大学選手権3連覇を達成も、決勝でぶつかった明大の為房には最後まで手を焼いたという。本来なら押し勝てる体勢になっても、為房だけは動かすのが難しかった。
その為房の日本代表入りは、江良によい影響を及ぼした。
江良は昨季アーリーエントリーによってリーグワンでプレーも、肩の手術のためシーズン途中に離脱を余儀なくされていた。為房が世界に挑んだタイミングは、江良が復活に向け努力した時期と重なる。江良は言う。
「肩を手術してメンタル的にも身体的にも難しい中、同期の活躍を見ていい刺激になりました。最初は『うわ、慶次郎(が代表戦に)出てるわ。すごいなぁ』という感じだったんですけど、最後のほうは普通に日本代表の一員として見ていた。また、自分も頑張ろうと思いました」
いまのシーズンが開幕する前には、「代表から帰ってきた慶次郎がどこまで成長しているかを見られると、『僕も(代表に)行ったらそれくらい変われるんだろう』という自信にもなる」とも述べていた。人の「成長」も自分事に置き換え、「自信」を育もうとしていた。
この様子を伝え聞き、為房は「…うれしいですね」と応じる。江良への敬意をにじませる。
「(江良は)帝京大で主将として優勝していて、僕が、刺激をもらっていました。だから、自分が刺激を与えているとは思わなかった。…うれしいですね」
2人は1月18日、スピアーズえどりくフィールドにいた。第5節に揃って先発した。
対するリコーブラックラムズ東京は、為房の対面にあたる左PRに津村大志を起用。津村は江良の帝京大時代の同級生だった。
何よりブラックラムズの2、3列目(バックファイブ)には、スピアーズのそれと同じように大柄な海外出身者がずらり。試合序盤、スピアーズはスクラムで苦しんだ。
しかし、次第に安定させることができた。その過程を、為房は独特な言い回しで振り返る。
「最初のほうは、ヒットの時に『表面』で当たってしまっていた。『奥』に行けていなかった。『奥までヒットする』を意識したら、結構、いい感じになりました」
レフリーの合図で両軍が接触する際、より向こうの懐へ潜り込めるよう間合いを微修正したという。
「きょうは相手のバックローの重さに苦戦して、自分たちがばらばらになってしまった。どんな重い相手にも、(塊を)崩さずにいきたいです」
この日は江良とともに後半11分までプレーし、26-18のスコアでシーズン3勝目を挙げた。為房はかねてこう語っていた。
「今年はどのチームも拮抗している。接戦を制していかないと日本一にはなれない。1点差でも勝ちたい。(個人的には)怪我なくずっと、試合に出続けたいです」
2月からの中盤戦以降も、確たる爪痕を残すか。