敵将が「小憎たらしい」と称賛。イーグルス田村優の足技は今季も冴える。
満足はしていないが手応えはあった。
横浜キヤノンイーグルスは1月11日、本拠地の神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場でファンを沸かせた。国内リーグワン1部の第4節で、開幕3連勝中だった静岡ブルーレヴズを53-35で下した。2戦連続で白星を掴んだ。
昨季まで2季連続4強入りし、今年度は初優勝を狙う。そのため後半のスコアが19-21となったこと、何よりその起因となった自軍のパフォーマンスを猛省していた。
就任5季目の沢木敬介監督は言う。
「自分たちから相手を楽にさせるような(ところがあった)。まだまだそこが弱いところ。うちの選手たちって、英語でいうと『Too nice』なんですよ。もちろん、中にはそうじゃない人もいるけど。俺は、その『Too nice』なところを変えていかなきゃいけないと思います。そうなると、隙を与えないんじゃないですか。あとは、淡泊なトライを獲られなくなるんじゃないですか」
前主将で元日本代表の田村優も、やや手厳しい。
「素晴らしい相手でしたけど、もうちょっと圧倒できないと、目指すところへは行けないんじゃないかなと」
ただ、この人が司令塔のSOとして首尾よく試合を進めたのも確かだ。
34得点した前半は、相手防御ラインの背後を長短のキックで射抜いた。「50:22」のキックでチャンスを広げたり、迫るタックラーに正対しながらその背後へぽとりとキックを落としたり。ハーフタイム以降も失点シーン以外では、ほとんど危険水域に入らずに済んだ。周りと連係する流れで首尾よくエリアを取れたためだ。田村は続ける。
「きちっとしたアタックのセットアップを持てば、相手のバックスリー(後衛の穴)をコントロールできるんじゃないかと(思っていた)。シーズンに入ってからこれまでやってきたことがなかなか出せなかったので、原点に戻りましょう、と(意識した)。徐々に、よくなってきています。(今後は)勝負どころで相手をギブアップさせるような強さが欲しいです」
初戦でディフェンディングチャンピオンの東芝ブレイブルーパス東京に21-28と敗れるなどしたが、地力が確かであるのを証明したような。
ブルーレヴズでFBを務めた、ニュージーランド代表、トンガ代表の両方でキャップを持つチャールズ・ピウタウは、SHのファフ・デクラークと田村の動きについてこう証言する。
「前半は特にデクラーク、田村の両選手がスペースを見つけて蹴ってきました。トッププレーヤーには隙を与えると、常に見つけられます」
敗軍の将、藤井雄一郎監督も談話を残す。
2019年のワールドカップ日本大会でスタッフ、選手の間柄でともに戦った田村を、独特な言い回しで讃えた。
「きょうは田村の小憎たらしいキックにやられた。こぼれたボールも全部、向こうに行って…」
藤井の発言の一部を伝え聞いた田村は、報道陣へ「また、(藤井がなじみの深い)福岡で飲みましょうと言っておいてください」。オンとオフの切り替えも真骨頂とする。
イーグルスは18日、三ツ沢に三菱重工相模原ダイナボアーズを迎える。