【サクラフィフティーン PICK UP PLAYERS】遅咲きのあすぽん。公家明日香[HO/アルカス熊谷]
元女子日本代表の鈴木彩香さんが出会った初日に名付けてから、サクラフィフティーンでも「あすぽん」の名で親しまれている。
公家明日香は、チーム内では齊藤聖奈に次いで年長の30歳。それでも初キャップは2年前だから、遅咲きと言っていい。
ラグビーを始めたのも高校からだ(中学時代はバスケ部)。地元にある横濱ラグビーアカデミー(以下、YRA)に通った。
ここで、自分を正しい道に導いてくれる”メンター”と出会う。鈴木彩香さんと鈴木陽子さん(元サクラセブンズ)だ。
「本当に良くしていただいています。立正大に進んだのも、2人についていく形でした」
2017年W杯を見て以降、15人制での代表入りを本格的に目指した。そこで、陽子さんから「なんとなくやっていた」FLからHOへの転向を勧められる。
「YRAはタグラグビー経験者が多いこともあり、ハンドリングやパスの練習がすごく多いんです。そのおかげでハンドリングは武器になったのですが、スローも極められたらHOで代表になれるのではないかと言ってもらえました」
ただ、その道のりは長かった。なかなかレスリー・マッケンジーHCからのお呼びがかからず、腐りかけていた時、メンターの2人が的確なアドバイスをくれた。
「自分のできないところをしっかり見つめなさいと。それまでは妬んでばかりの選手でしたが、それからは人を認められるようになった。人間的な成長が大きかったと思います」
2020年には、アルカス熊谷のキャプテンに立候補するまでになった。「自分の成長だけでなく、チー
ムに対して何かできることはないかと思えた」という。
内面の成長はプレーにも生きた。2022年5月のオーストラリア戦で、ついに代表デビューを飾る。いきなり先発を託され、アウェイでの金星に貢献した。
このまま数か月後のW杯にも出られるかと思われたが、現実は甘くなかった。落選の知らせを突
きつけられ、「ラグビーを引退しようと思った」と当時の思いを明かす。
それでも踏み止まれたのは、それだけ魅力的な世界が広がっていたからだ。
「今までアルカスの中だけでラグビーをしてきたのですが、初めてサクラフィフティーンに入ってからすごく自分の中の世界が広がったんです。いろんな人とラグビーができて、いろんなことを教わり、ラグビーの知識がどんどん増えた。すごくラグビーが楽しいと感じていた時期でもあったので、このまま辞めてしまうのはもったいないなと」
だからこそ、来年のW杯への思いは人一倍強い自負がある。
「でもそこはあまり意識せず、目の前のことを一つひとつやっていきたい。前回はW杯を意識したせいで、このままのパフォーマンスをキープしようと保守的になっていきましたから」
同じ轍は踏まない。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン1月号(11月25日発売)の「女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は11月18日時点。