テストマッチは「逃げ道がない」。日本代表ディラン・ライリーの誠実さ。
思ったよりも怖くなかったのではないか。
2024年からラグビー日本代表のヘッドコーチとなったエディー・ジョーンズ新ヘッドコーチについてそう問われ、誠実に答えたのはディラン・ライリーだ。
自分が触れた事実だけを信じる。
「確かに、メディアでは事前に色々と言われていたかもしれません。ただ、私はそういった情報を鵜吞みにせず、その人に実際に会ってから判断するタイプの人間です。私は彼と対面してから、優しいいい人だと思っています。お前はできると、自信をつけさせるような話をしてくれる」
身長187センチ、体重102キロ。強くてうまくて早くて守備範囲の広いアウトサイドCTB の27歳は、南アフリカ生まれでオーストラリア出身だ。
来日したのは’17年。いまも所属する埼玉パナソニックワイルドナイツ(現名称)で練習生となった。やがて正式にプロとなり、代表資格の取得を経て’21年にジャパン入り。昨秋はフランスでワールドカップに初出場した。
大舞台で安定的に活躍するには、質の高い準備を繰り返すほかないとわかった。
「テストマッチでは、クラブラグビーとは全く異なる——メンタル的な意味合いで——逃げ道がない環境。そこでいいパフォーマンスを発揮するには、オンフィールド、オフフィールドともに一貫性を保つことが大事です」
ジョーンズ体制下初の活動となった6月からのサマーキャンペーンでは、1勝4敗と負け越していた。
自身はコンディション不良もあり、出番を得たのは7月13、21日のジョージア代表戦、イタリア代表戦のみにとどまった。札幌ドームでのイタリア代表戦でこそ加速力を活かし2トライをマークも、ゲームはふたつとも落としている。
実戦に、勝利に、飢えている。
「個人的には、早くラグビーがしたい。サマーキャンペーンでは小さな怪我があったことで 2 試合しか夏のキャンペーンは出られなかった。早く、一貫性のあるパフォーマンスを発揮したい」
8月17日からバンクーバーにいる。北米、環太平洋諸国とのパシフィック・ネーションズ(PNC)のカナダ代表戦を敵地でおこなうためだ。キックオフは現地時間25日(日本時間26日)。ライリーは持ち場で先発する。
事前の国内合宿では、こう話していた。
「チームとしてはPNCでの優勝を目指します。私たちにはそれができる技術、能力がある。証明したいです」
早大2年の矢崎由高ら若手の多い現在のスコッドにあって、希少なワールドカップ経験者だ。「若い選手たちの成長をヘルプしていくという、従来と違う役割もあります」と、組織内での立ち位置の変化も楽しむ。