国内 2015.03.05

ジャパン勢も絶賛! ヤマハFLトゥイアリイ、大暴れの背景

ジャパン勢も絶賛! ヤマハFLトゥイアリイ、大暴れの背景

Mose

ジュビロの一員となって6年。初の日本一に貢献したモセ・トゥイアリイ(撮影:松本かおり)

 国内ラグビーシーズンを締めくくる日本選手権では、ヤマハが初優勝を飾った。2月28日、東京・秩父宮ラグビー場。接点での粘りでサントリーの連続攻撃のテンポを遅らせ、決勝戦を15-3とロースコアで制した。殊勲者の1人は、FLモセ・トゥイアリイだろう。ニュージーランド代表9キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を誇る33歳である。

 ハーフタイムの直前だった。12点差を追うサントリーが、ヤマハ陣中盤左のラインアウトからフェーズを重ねる。お家芸のアタックだ。複数人がシェイプ(型)を作り、球をもらったランナーが相次ぎ直進する。日本代表6キャップのCTB松島幸太朗が大きく駆け、ゲインラインを切る。

 ヤマハは、耐える。1人目のタックラーが相手の腰から下へ刺さる。2人目は胸元へ絡みつく。他の選手は次の局面の準備をする。こちらもお家芸だ。FL三村勇飛丸の述懐。

「試合が始まる前から、7割がディフェンスだと思っていた。寝ている時間を減らす。一瞬も隙を見せない。ウチにはヤマハボイスという言葉があるんですけど、声をかけ続ける。あとは、気持ちです」

 ゴール前まで進まれる。ピンチ。しかし最後は、FLトゥイアリイが光った。

 ヤマハの守備網へ突っ込んできたランナーを、LOデューク・クリシュナンらとともに担ぎ上げる。ボールに手をかけ、倒す。サントリーのサポートプレーヤーが、ラックに覆いかぶさるオーバー・ザ・トップの反則を取られた。

 密集から起き上がった身長191センチ、体重110キロのスキンヘッドは、笑みを浮かべて振り返るのである。

「ジャッカル(球を奪うプレー)をするいい機会だったから」

 入部6年目の今季は、全ての公式戦に先発。おもに背番号「6」をつけ、ヤマハの守備理論を遂行し続けた。攻めても持ち前の体躯とスピードで再三、人垣を蹴破った。昨年度の主力格だった南アフリカ代表8キャップ、FLデウォルト・ポトヒエッターを負傷で欠くなか、SO大田尾竜彦プレイングアドバイザーに「今年はモセの調子がいいから」と信頼された。

 一昨季は、南半球最高峰であるスーパーラグビーのハイランダーズでもプレーした。日本代表44キャップのSH田中史朗とはチームメイトだった。

「本当に、足が速い。賢いとも思いますね。まぁ、ちょいちょい汚いこともするんですけど…。ディフェンスでも身体を張ってくれる。常に全力ですね」

 国内で初めてこの舞台に挑んだSH田中は、FLトゥイアリイの凄みをこう明かす。「汚い」。勝利を目指して身体と頭を使う真剣勝負にあっては、褒め言葉である。

 ジャパン関係者からの絶賛は他にもある。3月3日、都内で代表への新戦力追加について問われたエディー・ジョーンズ ヘッドコーチの弁である。日本選手権の決勝戦の様子を踏まえた、こんな言葉だった。

「いいプレーをして、選んでくれと言っているような選手は目立つ。トゥイアリイは素晴らしかった。ただ、日本代表ではプレーできないですね」

 さかのぼって、2月28日の秩父宮。後半もFLトゥイアリイは最前線で鋭くぶつかった。相手をノートライに抑えての勝利に貢献した。「サントリーのラックでファイトして、攻撃をスローダウンさせたかった。ターンオーバーも狙いたかった。(以下、日本語で)イチバンは、ディフェンス」と笑うのだった。

(文:向 風見也)

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