好調ブレイブルーパスで苦しんだ小鍜治悠太 レギュラー奪還への奮闘
励まされていた。ラグビー日本代表として4度のワールドカップを経験する、リーチ マイケルからだ。
<お前は、もっと高いレベルで戦える。まずは…痩せろ>
小鍜治悠太は身長176センチ、体重109キロの25歳。6歳でラグビーを始めて2019年にはジュニア・ジャパン入り。右PRとしてスクラムの最前列で怪力を示し、球が動けばタックル、突進、防御を引き寄せてのオフロードパスで魅する。
東芝ブレイブルーパス東京に所属。普段はクラブに課された練習のほか、バイクトレーニングに注力する。同僚のリーチに助言された通り、体脂肪の削減と運動量の増加を目指す。
あまり負荷をかけたくない試合前日も、ゆったりとしたペースでペダルを漕ぐ。翌日にぶつかる相手の映像を見て汗を流すのを、ルーティーンとする。
「まず、東芝で優勝する。やるからには、日本代表も狙いたいですね」
2020年度には天理大でクラブ史上初の大学日本一を達成。卒業後のブレイブルーパス入りを決めたのは、在学中に見た旧トップリーグの公式戦がきっかけだ。
そのゲームでは、自身をスカウトしてくれていたふたつのチームが対峙していた。かねて両軍に好印象を抱いていた小鍜治は、この一戦で「勝ったほう」に返事をするつもりでいた。
ふたを開ければ、負けたブレイブルーパスの選手が悔し泣きしている写真をSNSで見て「心を打たれた」。大学の同級生でSOやFBを務める松永拓朗と、21年度に門を叩いた。リーグワン発足の翌年1月からレギュラーに定着した。若き主軸と目された。
今季は辛酸をなめた。
開幕から4回続けてメンバーから外れたのだ。
「シンプルに自分のパフォーマンスが悪かった。それと、周りにいいライバルいたっす」
自分の持ち場には、左右のPRをこなせる眞壁照男が入った。そのまま日本代表のトレーニングスコッドにも選ばれた。開幕から好調なブレイブルーパスにあって、小鍜治は雌伏の時を過ごした。
府中事業所にあるグラウンドで、再び爪痕を残さんとした。
「やはり、(自身は)接点が売り。練習で試合のメンバーに対して、身体を当てました」
復調した。第5節で今季初出場を果たすと、中断期間を経て挑んだ第7節からは3戦連続で先発。持ち味を発揮している。
3月9日の第9節では、一昨季まで国内2連覇の埼玉パナソニックワイルドナイツとの全勝対決に出た。
スクラムで好姿勢を保ったものの、「イケそうだと思うところはありましたが、向こうがうまかった。拮抗してしまいましたね」。24-36で敗れたとあり、敵地の熊谷ラグビー場で好敵手を讃えた。
17日には東京・秩父宮ラグビー場で、三菱重工相模原ダイナボアーズとの第10節に臨む。自信は失わない。
「やっぱり、出してもらうからには、全部を表現したいと思っています。手応え、あります」