大分舞鶴のヘッドコーチとしてNZ訪問。元トップレフリー、麻生彰久のいま。
麻生レフリーと言えばラグビー関係者であれば一度は耳にしたことがあるだろう。
事実、12月上旬におこなったニュージーランド訪問では、多くの有名ラグビーコーチやレフリーが彼を見るなり「レフリー?」と声をかけてきた。
IRB(国際ラグビーボード/現・ワールドラグビー)より派遣されたU20チャンピオンシップ(2014年)やセブンズシリーズ、ITMカップ(ニュージーランド国内州代表選手権/現・NPC/2012年)で日本人として初めて笛を吹き、その後数年に渡りレフリーを務めた麻生彰久の名はラグビー王国でも有名だ。
そんな麻生は昨年度より、古豪の大分舞鶴高校ラグビー部を率いている。初めてヘッドコーチ(以下、HC)として生徒とともに戦った花園予選の決勝は、大分東明に21-61のスコアで敗退した。
「生徒のポテンシャルを引き出せていない。これが私のいまの力。彼らに良い景色を見せるために私も生徒と同じく努力し、学び、そしてともに“勝ちと価値”を追い続けて社会をたくましく生き抜くリーダーを輩出したい」と語る新米コーチは、決勝戦の次の日に新チームをスタートさせた。
今回ニュージーランド(以下、NZ)を訪問したのは、県内有数の進学校でありグローバル化を推進する大分舞鶴とオークランドの名門校であるマウント・アルバート・グラマー校との姉妹校調印式に出席するためだ。
麻生HCはこの機会を好機と捉え、多くのラグビー関係者に会うようにした。その中のひとりであるマット・ハウリングは元ノースハーバー州の代表選手。トンガU20代表として、2011年のU20ワールドカップに出場した。現在は強豪校であるケルストンボーイズ高のラグビーディレクターを務めながら、高校NZセブンズ代表の二軍であるNZバーバリアンズのHCや、スーパーラグビーのブルーズのU18コーチも兼務するトップコーチだ。
帰国日の訪問先に選んだのは、マットコーチがNZバーバリアンズを率いて出場するグローバルユースセブンズに向けた練習試合会場。音楽が流れる和やかな雰囲気のなかでおこわれた練習試合の後、麻生HCとマットコーチは長い時間、意見を交わした。それは基本的なことから細かい戦術に至るまで多岐に渡り、チームが帰る直前まで続いた。
麻生HCの熱意と学ぶ姿勢に感銘を受けたマットコーチは、ブルーズU18で実際に取り入れているオフェンスやディフェンスの最新システムを共有すると約束した。
ラグビー王国・ニュージーランドのフィールドを見つめながら、麻生HCは「レフリーとしての実績は過去のもの。笛を持ちかえ、これからは生徒とともに新たな歴史を作る覚悟です」と決意を語った。
常に前を向いて走り続け、世界に愛された元トップレフリー。いまは新米コーチとして、全力疾走を続けている。すべては古豪・大分舞鶴復活のためだ。
PROFILE
麻生彰久
あそう・あきひさ/1976年9月20日生まれ、48歳/大分県玖珠郡出身/トップリーグにて2013年度から2018年度に引退するまで、ベストホイッスル賞を6シーズン連続で受賞