国内 2014.12.22

元NZ代表の額の血管に「これやぞ」。朝日大学、完敗の中にも進化あり。

元NZ代表の額の血管に「これやぞ」。朝日大学、完敗の中にも進化あり。

Asahi

前半、朝日大は帝京大を簡単には前進させなかった。(撮影/KENYA OIZUMI)

 笑顔はなかった。下を向いてもいなかった。12月21日に熊谷ラグビー場でおこなわれた大学選手権、セカンドステージ・プールAの帝京大学戦で敗れた朝日大学だ。6連覇を狙う王者に、最後は12-83とスコアは開いた。しかし、真っ直ぐ前を向いていた。

 確信があるからだ。昨年の大会で王者と対戦したときは5-102で敗れた。相手の布陣は前回同様Aチームではなく、それに準ずるチーム。ほぼ同条件の一戦で失点を抑え、得点を上乗せした。そして、スコアだけではかれぬ接近がそこにはあった。
 この試合、序盤の主役は朝日大だった。前半15分、帝京大に先制トライを奪われたが動じなかった。23分にBKの積極的な仕掛けからチャンスをつかむとNO8シオネ・バイラヌがトライを返し(ゴールも成功)、7-7と追いつく。その後も必死に抵抗し、前半を終えた時点のスコアは7-24だった。

 チャレンジャーの抵抗に拍手がおくられたのは、その攻防が決して耐える姿勢ではなかったからだ。結束力高くスクラムを組み、コントロールした場面があった。ディフェンスでも前に出て、アタックも上手につなごうとするより、思い切り走り、前に出た。吉川充監督は、スタンドのファンから「おもしろいなぁ、という声が聞こえてきたんですよ。嬉しかったですね」と学生たちのパフォーマンスを称えた。CTB坂本椋矢主将は「昨年100点取られて、(この1年は)しんどいことをたくさんしてきました。ディフェンスを意識して高めてきて、みんな手応えを感じたと思う」と語った。

 昨年はじめてセカンドステージに進出して学生王者にたたきのめされ、他の2試合も完敗。それまでと同じことをやっていてはくり返すばかりと、学生たちは日頃の取り組みから変わった。意識を高める。互いに声を掛け合う。地道なことを積み重ねた。
 チームを進化させるため、吉川監督もフルにコネクションを活用した。今大会のファーストステージ前にはスクラム強化のためヤマハ発動機のグラウンドを訪ね、長谷川慎コーチの指導を受けた。
「非常にタメになりました。FLのトゥイアリイが額に血管を浮かび上がらせてスクラムを押していました。8人がひとつになって押すっていうのは、これやぞ、と。学生たちもトップ選手の必死の姿を見て感じるものがあった。ベストメンバーでスクラムの相手をしていただきこちらは吹っ飛びましたが(笑)、いい経験になった」

 この日戦った帝京大学とは、毎年春シーズンに練習試合も組んでいる間柄だ。
「岩出先生に『気持ち良くなって帰りたいか、勉強して帰りたいか』と聞かれ、後者でお願いします、とお願いしてメンバーを組んでいただいているんですよ。Aチームや、今日も出ていた選手たちが何人かメンバーに入っているチームを組んでくれる。私たちがそこを乗り越えたり、今日の試合でもっと追い詰められるようにならないと、ベストメンバーを引きずり出すことができないと思っています。今日もリザーブに流主将など何人かのAチームのメンバーが入っていましたが、結局彼らを試合に出すような展開には持ち込めなかった。今日の前半のような時間を、80分続けられるように積み上げていきたいと思います」(吉川監督)

 この日の結果で、プールAからファイナルステージに進出するチームは帝京大と決まったが、残る天理大戦は、朝日大にとっては消化試合ではない。
「天理は(天理高校出身の)私にとっては、ラグビーを教わったルーツのようなところ。しっかりディフェンスして、ボールを取り返して攻めたい。その準備をやって臨みます」
 近年の充実により、進学を希望する高校生の数も確実に増えている。この日は整形外科医でもある学長が自らチームドクターとして帯同。学校側のサポートも厚味を増す。いろんなことが、朝日の将来を照らしている。

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