「自分たちがやったことは、自分たちで責任を」。明大・利川桐生副将は「繋がり」重視。

これぞ主軸の仕事だ。
9月14日、茨城・ケーズデンキスタジアム水戸。関東大学対抗戦Aの初戦で、明大ラグビー部の利川桐生副将が渋く光った。
FLで先発し、再三のスティール、セカンドタックルで球出しを遅らせ、要所では攻撃権を奪いもした。攻めてもよく前に出た。
チーム内のMVPに表彰された。神鳥裕之監督は言う。
「勝っても、負けても、部内のMVPは出そう…と。負けた試合でもらうのは本人にはあれ(不本意)かもしれませんが、80分間しっかり戦い抜いていたので」
そう。この日は黒星を喫した。前年度の順位で3つ下回る6位の筑波大に24―28で敗れた。対抗戦でこのカードを落としたのは2013年度以来となる。
負けたのだから、本人は反省しきりだ。
ましてやゲーム主将をしていたから、結果に一層の責任を感じる。特に、ペナルティーキック獲得後のプレー選択に悔いが残ったという。
やや苦しんでいたラインアウトを頑なに選んだのは、果たして正解だったか…。
ピック・アンド・ゴーを多用して持ち前の推進力を活かすほうが相手は嫌だったのではないか…。
「うまくいくことばかりじゃない。うまくいかない時の引き出しを持っていないとだめだと思わされました」
評価されたパフォーマンスへも、「もっともっと上げないといけない」。接点にももっと圧力をかけられたうえ、ランナーとしてタックラーに倒されてからボールを置く動きも改善の余地がある、と述べる。
ただその瞬間、瞬間において、自分のありたい姿であろうとしたのも確かだ。
後日、都内の明大八幡山グラウンドで発した。
「人が嫌がる、痛い、きついところ(局面)で身体を張らないといけない」
身長190センチ以上の猛者がひしめく国際舞台へ、身長181センチ、体重103キロのサイズで泥臭く勝負したい。
3年生だった昨季は、日本代表に絡んだ。6月23日から予備軍のJAPAN XVで練習生となり、7月7日以降は正代表のスコッドに名を連ねたのだ。
世代有数のタフガイは大卒後、リーグワン1部の強豪へ進む。オファーをくれた全てのクラブの施設、練習に触れたうえで、ひとつに絞った。判断基準から価値観を匂わせる。
「チームの目標へ全員がまっすぐな思いを持って進んでいるところに惹かれました。一体感が強かった。ラグビーではチームメイトとの繋がりが大事なので」
いまいる明大の「繋がり」は、まだ完ぺきではないと認める。
夏合宿の最終日、宿泊施設の個室で未成年部員が飲酒した。その場にいた計5名はすぐに謹慎することとなった。
折しも利川は、大阪の家族の都合でひと足早くキャンプ地を離れていた。事のあらましは皆より遅いタイミングで知った。
まもなく神鳥に諭された。これでチームが公式戦に出られなくなってもおかしくなかったところを、様々な人の支えで活動できているのだと。
「自分たちがやったことは、自分たちで責任を取らないといけない。全員が襟を正す機会になりました。感謝の気持ちを忘れずプレーするのが大事になります」
今回のことで処分されたグループには、4年生がいた。本来、規範となるよう求められる学年だ。
ただ、当該の仲間が件の出来事を防げなかったのを、利川は決して責めない。
「彼だけに責任があるわけではない。彼が孤立しないようにしたい。もちろん、彼自身が立ち上がってこないといけない。期待しています」
これからは、自身の学生ラストイヤーにふさわしい「繋がり」を紡ぎたい。
そもそも新年度を迎えた頃から、CTBの平翔太主将を先頭に私生活のルール順守を重んじていた。夏場のトラブルを経て、一層、身を引き締める。
「主将はチームへ厳しいことを言えて、プレーでも見せられる。(普段から)規律を守ることがグラウンドに繋がるとリーダー陣で話して、選手にアプローチをかけています。主将だけに背負わせるのではなく、自分たちも気づいたことがあれば言うようにしています」
27日には東京・秩父宮ラグビー場で、青学大との対抗戦2戦目に挑む。
「いまのところ、ここまでめちゃくちゃ強いつながりは生まれていないです。結果も出ていないですし、しんどいチーム状況ではあります。ただ、結果が出たら落ち着いて、よりタイトな繋がりになる」
その流れで目指すのは、2018年度以来14度目の大学日本一だ。
「1人でも『もう日本一はいいかな』という気持ちになったら、それが周りに伝染する。僕たちはそういう選手が出ないよう、気にかけてチームを作ります」
人と人とが「繋がる」ことで強さを作れると知る。