セブンズ 2014.12.17

セブンズ代表選手たちのモヤモヤ 見えぬ日本の将来像

セブンズ代表選手たちのモヤモヤ 見えぬ日本の将来像

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セブンズワールドシリーズのドバイ大会と南ア大会で活躍した羽野一志(撮影:出村謙知)

 HSBCセブンズワールドシリーズ(SWS)2014-2015第2ラウンドのドバイ大会、同・第3ラウンドの南アフリカ大会を連戦した男子セブンズ日本代表の一行が16日夕刻、帰国した。
 日本は今季初めて全9大会を転戦するコアチームの一角としてSWSに参戦。南ア大会の予選プールでは豪州大会準優勝のサモアを破る大金星を挙げ、コアチームとしての記念すべき初勝利も記録した。
 そのサモア戦で歴史的勝利をものにするウィニングトライを奪ったことに象徴されるように、世界最高峰の舞台でひと際、輝きを放ったのがチーム最年少の羽野一志。

「結構ラインブレイクもできた。ロマノ・レメキとかいつもラインブレイクしてくれる選手がいないので、その分まで頑張りました」という羽野は、ドバイ、ポートエリザベスを通して10試合すべてに先発出場。そのうち7試合でフル出場するタフネスぶりも見せた。
 殊勲のサモア戦決勝トライに関しては「1本ぼくが抜かれてトライ取られてたんで、最後のトライでイーブン。疲れていてステップ切る余裕がなかったので、僕のスタイルじゃないブチ当たるスタイルでトライを取りにいった。あんなにデカいサモア相手にブチ当たるという(苦笑)。トライ取れて本当に良かった」と、決して本人らしさが出たプレーではなかったものの、大会通してラインブレイク能力では際立っていた。

 サモア戦トライが大会公式ダイジェスト映像化されたこともあり、ポートエリザベスで最も知名度が上がった日本選手と言っていい羽野だが、コンディション的には決して万全で臨めた大会ではなかった。ドバイ大会最終戦となった対カナダとのシールド準決勝で脛(すね)を強打し、一時は南アフリカ大会出場自体が危ぶまれる状況。

「南アフリカに行ってからも練習はせずに、ケアを優先。ほとんどボロボロ。でも、テストマッチなんで。日本代表として戦っている。最後は気持ちです」
 そんな精神的な面も含めて、瀬川智広ヘッドコーチも当然ながら「一番成長している」と高評価。ただ、その評価自体、本人にとっては歯がゆいものかもしれない。
 前述のとおり、豪州大会に参加したレメキ ロマノ ラヴァが今回は不参加。元々、今季の7人制代表で中心的役割を担うことが想定されていた“コアメンバー”で、ドバイ、南ア両大会でプレーしたのは3人のみ。最年少のコアメンバーである羽野自身は直前合宿から参加していたが、坂井克行キャプテン、桑水流裕策のベテランの2人は直前合宿なしで、ドバイ〜南ア連戦に乗り込んでいた。
「南ア大会の2日目もすごくいいアタックがあったし、いいディフェンスもできていた。でも、結果を出せないのはやはり経験の差。本当に固定したメンバーで1年やれば、すごい面白いのになあと思いながらプレーしていた。たった3週間でサモアにも勝ったし、1年、2年と同じメンバーで強化を続けていけば、コアチーム落ちとかの不安もきっとなくなる」

「15人制では体験できないスピードとパワーという感覚。いい経験ができた」と、個人としての収穫を語る一方で、一番気になるのは日本としてセブンズをどうしていくのか将来像が見えない点。

「僕自身、チーム(今季NTTコム入り。トップリーグ3試合に出場している)にしっかり貢献したいし、15人制で活躍しなければいかないんだろうなとは思いますけど、久しぶりにワールドシリーズでプレーしてみて正直、両立は難しいというのも感じました。できるならどっちかに決めたい。たとえば7人制の合宿が頻繁に開かれれば、そこに行けるわけですけど、間隔が空いたりすると、15人制にも出る流れになる。そこらへんの判断は、できたらスパッと決めてほしい。ワールドシリーズはテストマッチなんで。日本代表として戦っている。だからNTTコムの人たちも応援してくれています」

 メンバーが7人に満たない状況で行われた直前合宿に唯一のコアメンバーとして参加して、「いろいろ考えるところもあった」とも。

「結構ラインブレイクもできたけど、世界と違うのはそこで取り切るか取り切らないか。もっと足が速かったらいいのに。あそこでトライを取り切れたら面白い、かっこいいなあと思う場面が多かった。スタッフからもスピードトレーニングやってくださいと言われているが、15人制の練習があるので限界もある」

 圧倒的なラインブレイク能力を見せた日本人選手であることは間違いない羽野ですら、圧倒的な差を感じる世界。
「横の幅が広いので抜けると言えば抜ける。ベーカー(マオリ・オールブラックスの一員としても来日したNZのトライゲッター)とかフィジーの人たちとかは一発で抜いていく力がある。そこが外国人との差。日本はまだ組織力で勝つしかない。組織力で勝とうとしているチームが短期間の準備しかできないのは難しいところがある」

 もちろん、そんな声は最年少の羽野だけが持つものではなく、7人制代表メンバーに共通するものでもある。
 日本のSWS第3ラウンドまでに得たポイントは3のみ(大会参加ポイントのみ)でシリーズ順位はコアチームで最下位の15位。14位のケニアとの差は早くも8に広がっている。

(文:出村謙知)

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