サモア代表戦は終盤に苦戦も…。日本代表防御担当コーチのジョン・ミッチェルは「簡単に直せる」
すぐに改善できるだろう。ラグビー日本代表のジョン・ミッチェル アシスタントコーチはそのように言った。
現地時間9月28日、スタジアム・ド・トゥールーズ。チームはワールドカップ・フランス大会の第3戦で、サモア代表を序盤から翻弄した。
パスとキックを自在に操り、ミッチェルの担当する防御でも相手の突進をストップ。22-8とリードを奪ったのは、後半9分だった。
しかもその2分前には、相手がバンカーシステムつきのイエローカードを受けていた。
バンカーシステムとは、カードに相当する危険なプレーを再検証する制度。プレーが続行されるなかで別室でのリチェックが進み、当該のイエローカードはレッドカードと化した。問題となったタックルの危険度が検証された末、処分が10分間の一時退場から一発退場に変わったわけだ。
日本代表は、試合終盤で数的優位を保てることになった。
さらにギアを入れ、スコアを積み上げられそうだった。
実際には、ここから追い上げられた。
メンバーの平均体重で約9キロも上回るサモア代表が勢いをつけ、2トライを奪った。結局、日本代表は28-22と勝利も、反省点を残した。
しかしミッチェルは、苦しんだ時間帯について前向きな見解を示した。
「ラック周りを攻められてモメンタム(勢い)を作られた。1人目のタックル(のスキル)は修正したいです。ただしそれは、簡単に直せる部分です」
最近では首より上に放つハイタックルへの処罰が厳しくなっており、日本代表は低いタックルを再徹底している。
その意識が災いしたか。サモア代表戦の前半は、低く刺さった直後にオフロードパスをつながれることがあった。
そのためミッチェルは、ハーフタイムに微修正を施した。腹のあたりを狙い、「(オフロードパスの動きを)ロックするように」と助言した。
改善を図った末、終盤に反撃を許したわけだ。
その現状を踏まえ、終盤の劣勢局面を「1人目のタックル(のスキル)は修正したい」「簡単に治せる」とひも解く。
オンラインで取材に応じたのは、ノーサイドから一夜明けた同29日朝だ。「夜遅くの試合だったのでまだ詳しくは見られていない」としながら、今大会2勝目を飾ったサモア代表戦を前向きに振り返った。
具体的には「内側」と呼ばれる接点と司令塔の間のスペースを埋め、果敢にタックルができた点を評価した。
「全体的にはディフェンスでアグレッシブにできた。相手がパスをしてから、(ラインの)内側部分を埋めていくという点は比較的よかった。皆のために内側から埋めていくことはできた。いくつかタックルのミスはあったが、概ねお互いハードワークして守れた」
ニュージーランド代表のヘッドコーチ、イングランド代表のアシスタントコーチなどを歴任してきた。
日本代表には昨年に入閣し、2人がかりで走者をなぎ倒す「ダブルコリジョン」を軸にした防御システムを提唱。鋭く間合いを詰め、攻め手の判断する時間を奪って早めの攻守逆転を目指す。
10月8日には、スタッド・ド・ラ・ボージョワールでアルゼンチン代表と戦う。
アルゼンチン代表は、ミッチェルの取材日翌日にチリ代表を59-5で下した。勝点は日本代表と9で並び、プールDで5チーム中2位に浮上した。
同3位の日本代表は、上位2傑が進める決勝トーナメント行きを最終戦での直接対決で争うこととなった。
アルゼンチン代表の攻め手を、ミッチェルはこう分析する。
「キックチェイス(蹴って弾道を追い、状況によって再獲得を目指す動き)を全面に押し出す。モールを組み、その内側、外側を狙うといったバリエーションもある。私が『砦』と呼んでいる、ラインアウトとBKラインの間の隙間もよく狙ってくる。今大会ではそこまでBKは目立っていませんが、(本来は)ラインアウトから12、13番(両CTB)を効果的に使ってアタックできます」
2戦目までやや不調に映ったアルゼンチン代表を、あくまで危険なダークホースとして見立てる。
次戦では、1試合を通じてライバルの勢いを封じられるか。当日までの準備に期待がかかる。