ワールドカップ 2023.09.08

【RWC2023】「チームの一人ひとりが、自分史上最高を持ち寄る必要がある」。開幕戦前日、NZ・フォスターHCが覚悟を語る

[ 編集部 ]
【RWC2023】「チームの一人ひとりが、自分史上最高を持ち寄る必要がある」。開幕戦前日、NZ・フォスターHCが覚悟を語る
大会後は勇退することが決まっているイアン・フォスターHC。(撮影/松本かおり)



 ついに、2023年9月8日がやってきた。
 2021年2月26日に2023年ワールドカップの試合日程が決定。開幕戦がフランス×ニュージーランドと決まってからというもの、世界中の人たちが指折り数えて、この日を待っていた。

 世紀の一戦の前日、戦いの舞台となる会場のスタッド・ド・フランスでオールブラックスのイアン・フォスター ヘッドコーチ(以下、HC)らが記者会見に臨んだ。

 フォスターHCは、フランスについて「ラグビーに情熱的な国」と話し、続けた。
「世界でも指折りのスタジアムで、観客が作り出す雰囲気も独特。明日の試合では、それを肌で感じることになると思います」

 同HCは、大会の展望について、「インタビューで2023年はどうするか、と聞かれるたびに『まずは初戦をわざと負ける』と冗談を続けてきましたが、現実にはそんなことは願っていません」と話した。

 プールステージでA組の2位になる方が、ノックアウトステージを勝ち進みやすい。そんな声も届いていたからだ。

「負けていい試合があるなどと考えるコーチは、世界中どこにもいないはずです。2019年大会は我々が(プールステージの初戦で)南アフリカに勝ち、トーナメントで入る山が決まった。他のどのチームも同じだと思いますが、我々の目下の目標はプール突破、準々決勝進出。そこに行く一番の方法は、しっかりと準備をして、目の前の試合で最大限のパフォーマンスを見せること。そこからはトーナメントだから何が起こるか分からない」

 初戦のフランス戦には、世界中の目が注がれている。
 しかし指揮官は、落ち着いて「この試合へ向けた盛り上がりは理解していますが、ナミビア、ウルグアイ戦に加え、非常に気持ちの入ったイタリアとの戦いも控えています」と全体に目を向ける。

「自分自身(アシスタントコーチ時代を含め)3度目のW杯ですが、こんなにも外側が盛り上がっている試合は初めてです。開催国で優勝候補、ファンも多いフランスと、オールブラックスの試合。大会の始まり、としては良いシナリオと言えるでしょう。ただ自分たちは、いま持っている力をしっかり、すべてを出すだけ。何も変わらない。開幕戦で勝とうが負けようが、プール突破という目標は変わりません」

 自分たちにも重圧はあるが、対戦相手のフランスも同じことだ。
「開催国としてのプレッシャーはもちろんあるだろう。そのプレッシャーについて、彼らがどう反応するかは私には分かりません。我々がコントロールできることは、相手にプレッシャーをかけ自分たちのラグビーをすること。歓声や感情、期待にとらわれすぎないこと。期待は常に背負っているものだし、勝てばもっとできるはずとの期待が、負ければ建て直せとの期待がかかります」

 プレッシャーへの対応力は時間をかけて高めてきた。
「チームとして、プレッシャーへの対応には完璧な準備ができています。ここ2、3週間だけでなく、このチームとして合流してからの期間、必要なことはすべてクリアしてきました。準備を続けてきた選手たちを誇りに思います。目を輝かせてピッチに入り、試合で戦うだけ。準備はできています。(試合開始が)待ちきれない」

 2019年大会の準決勝では、対戦相手のイングランドがハカに対し、V字型の隊形を組んで揺さぶってきた(7-19で敗戦)。
 今回のフランスが、同様の仕掛けをしてくる可能性もある。

「(フランスがどう対応するか)分かりません。歴史的には、どちらもあったし、どちらでも良いと思っています。反応したいようにしてくれて構わない。我々として何か変わるわけではないし、観客も好きな反応をすれば良いと思います」

 自分たちにベクトルを向けている。
「我々にとってハカが持つ意味、レガシーは、チームのアイデンティティで、過去と現在の我々をつなぐものでもあります。ひとつ確かなのは、フランスがハカをリスペクトしてくれているということ。反応の仕方はこれまでも様々でしたが、どんな時でもリスペクトがあった。何かしらの対抗策があることを、我々が尊敬に欠いた行動だと見ることはありません」

 過去に3大会で優勝しているオールブラックスではあるけれど、自国開催以外で頂点に立ったのは2015年だけ。
 王座を奪還することが簡単でないのは深く理解している。

「(2019年の)日本では悔しい思いをしました。勝つことは簡単ではありません。今回は特に、強豪国がホストで、レベルの高い国が揃っています。オールブラックスだからといって、参加して、ただプレーするだけでは優勝できないことは分かっています」

「優勝するためにはチームの一人ひとりが、自分史上最高を持ち寄る必要がある」と言葉に決意を込めた。


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