ワールドカップ 2023.08.25

日本代表のサウマキ アマナキが出国前日にワールドカップメンバー入りを決めるまで。

[ 向 風見也 ]
日本代表のサウマキ アマナキが出国前日にワールドカップメンバー入りを決めるまで。
日本代表合宿でハードワークを続け、ワールドカップスコッドに選ばれたサウマキ アマナキ(撮影:松本かおり)


 サウマキ アマナキは、落選するかもしれなかった。

 8月5日、東京・秩父宮ラグビー場でのロッカールーム。ラグビー日本代表は、フィジー代表戦を12-35で終えた直後に9月からのワールドカップ・フランス大会のメンバーを内輪だけで共有した。

 やがて公式アナウンスされる予定だったそのラインナップに、サウマキは入らなかったという。

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 日本人女性と結婚し、国籍をトンガから日本に変えて久しい26歳は、当時をこう振り返る。

「ちょっと寂しかったです。でも、まだチャンスがあるかな…と」

 15日。大会登録選手を公開する予定だったが、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチら首脳陣が発表したのは33名中30名のみ。残る3名は、選手のコンディションを見て決めると説かれた。

 サウマキの務めるLOのポジションでは、今年日本代表入りして夏の国内戦全5試合に出たアマト・ファカタヴァが足首を痛めていた。昨季までその位置で主力のワーナー・ディアンズも、肩や足首の負傷で試合に出ていなかった。

 報道陣が騒然としたのは、3日後の18日だった。

 ジョセフが活躍を期待していたファカタヴァは、回復が間に合わずに選外となった…。かねてLOで選出されていたジェームス・ムーアまで「コンディション不良」のため離脱した…。関係者がそう伝えたためだ。

 そして合計4名の追加選手には、サウマキも入った。

 本人がメンバー選出を告げられたのは、発表日にあたる18日だ。まもなくチームが用意した取材機会に応じ、スポンサー向けのパーティーに足を運んだ。翌19日には、遠征先のイタリアへ渡った。

「ゲームタイムがなく、フランス(ワールドカップのメンバー入り)はあまり見えなかったですけど、頑張って自分のペストを尽くしていました」

 昨年、初めて日本代表に入ったものの、キャンプ中のけがで離脱。今年もワールドカップ行きを争う日本代表に選ばれながら、ファカタヴァ、ムーアらの陰に隠れてテストマッチデビューを果たせなかった。代表キャップ0にして、ワールドカップへの切符をつかんだわけだ。

 8月26日に敵地でおこなうイタリア代表戦では、リザーブ入り。出場すれば初のテストマッチ出場となる。

 国際舞台に出ることを、かねて心待ちにしていた。

「楽しみ。他の自分のチームメイトが助けてくれる(はず)」

 発掘された才能だ。

 2016年に19歳の若さで初来日し、現横浜キヤノンイーグルス入りした。

 当初はタッチライン際のWTBとして走力を期待されたが、2020年、ポジションを変えた。イーグルスの新監督に着任した沢木敬介氏の勧めで、母国トンガのトゥポウカレッジで務めたFW2列、3列に転じた。

 2022年には国内リーグワンでブレイクし、初めて日本代表に名を連ねた。まもなくコベルコ神戸スティーラーズへ移ってからも、代表入りに絡んできた。

「スピードとフィジカルのところで負けたくないです」

 前所属先のイーグルスには、兄のホセア・サウマキが在籍していた。2013年に来日したWTBで、ずっと日本代表入りを嘱望されてきた。結局は資格を得られず、21年からはイングランドのレスター・タイガースでプレーしている。一時、トンガ代表にも選ばれていた。

 弟は、出国の直前に言う。

「いまはまだお兄さん、お母さんにワールドカップ(メンバー入り)のことは言ってないですけど、でも浦安と宮崎に行ったこと(6月以降の日本代表合宿)には、『すごい! 嬉しいね。頑張って』と言われていました」

 家族を代表して、ワールドカップに出る。

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