【プレビュー】NZ国内で4年ぶりの激突! オールブラックス×スプリングボックス。140キロプロップにも注目
「南アフリカとのテスト(テストマッチ)はいかなるときも特別な機会です」
そう語ったのは、イアン・フォスターHCだった。
ザ・ラグビーチャンピオンシップ(以下、TRC)第2節(7月15日)、 オールブラックス × スプリングボックスの対戦は、ワールドカップ(以下、RWC )前の大一番で見逃せない。
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このカードの注目度は、ニュージーランド(以下、NZ)国内で非常に大きい。
スプリングボックスとの対戦がNZ国内でおこなわれるのは4年ぶり。ラグビーファンは、この日を待ち望んでいた。
※2020年以降コロナウイルスの影響でキャンセルになるなど、NZ政府の厳しい規制によりNZ国内で開催不可となっていた事が影響した。
前回の対戦は2019年。RWC2019の直前で、開催地はウエリントンだった。スプリングボックスが終盤にトライを挙げ、ドロー(16−16)に持ち込む激戦となった。
オールブラックス側からすると、引き分けでなく負けに等しい苦い思い出だ。
今回の対戦は、オークランドで開催される。
オークランドと言えばラグビーの聖地イーデンパークが真っ先に浮かぶ。しかし、同スタジアムは7月20日に開幕する女子サッカーのワールドカップ(FIFA Women’s World Cup 2023)の開催地となっているため使用できない。代わりに同じオークランド市内にある、マウントスマートスタジアムが大一番の開催地に選ばれた。
※ オールブラックスのイアンフォスターHCの娘、ミカエラ・フォスターがNZサッカー女子代表でワールドカップのスコッドに選ばれている。
スプリングボックスはTRC第1節の試合前に、主力の多く含む10数名の選手を先にオークランドに送り込んでいた。それでも、オーストラリア代表 “ワラビーズ” に43-12のスコアで圧勝した。
一方のオールブラックスはアルゼンチン戦で、今季スーパーラグビー・パシフィックで活躍したダミアン・マッケンジーに司令塔でプレーするチャンスを与えた。また、チーフスでチームメートのWTBエモニ・ナラワを14番で代表デビューさせた。
昨年クライストチャーチで苦汁を飲まされている相手に序盤からエンジン全開でトライを重ね、敵地ながら41-12と圧勝した。
最高のスタートを切った両軍がTRC第2節で激突する。
◆期待の140キロ大型新人がベンチ入り。
9月から始まるRWC2023 のスコッド発表まで残り試合は3となった。
世界チャンピオンをホームに迎え、オールブラックスはどんなメンバーで挑むのか。NZ国内では連日、メディア、ラグビーファンの間で騒がしくなっていた。
7月13日にメンバー発表があった。
アルゼンチン戦から先発メンバーの変更は5人。
先週のベンチスタートから今週は背番号2を付けるコーディー・テイラー、大ベテランのブロディ—・リタリックが先発に加わり、スコット・バレットとのロックコンビを組む。
注目されていた司令塔のセレクションは、先週良いパフォーマンスを見せたダミアン・マッケンジーではなく、リッチー・モウンガが10番で先発する。マッケンジーは23人の中にも入らなかった。
WTBのセレクションにも、多くの目が注がれていた。ケガから復帰のマーク・テレアが11番、ウィル・ジョーダンが14番。スピードとキレのあるランナーを並べてきた。
今季初登場のパワフルモンスター、HOサミソニ・タウケイアホはベンチスタートだ。後半からのとてつもないインパクトが期待される。
140キロの巨漢、PRタマイティ・ウイリアムズがベンチ入りを果たした。出場すればテストマッチデビューとなる。
今季スーパーラグビー・パシフィックの殆どの試合に出ており、サイズが大きいだけでなく、モバイルに動けることを証明し、堂々と代表入りを果たした。タフなスプリングボックスFW相手に、どんなパフォーマンスをしてくれるか楽しみだ。
なお、サム・ホワイトロックは出場可能だったが、先を見据えて今週は大事をとり、休養する事になった。
◆タフなFW戦とキック処理。
スクラム、ラインアウトのセットピースはもちろんの事、一番の見どころは、ボールキャリー、タックル、ブレイクダウンなどのコリジョン(衝突)エリアでの攻防だろう。
近年不調が続いていたオールブラックスの課題となっていた。アルゼンチン戦では、強い時のオールブラックスのFWを思わせる内容だった。
タフなFW戦を得意とするスプリングボックスFW相手に、オールブラックスがどれだけやれるか注目される。オールブラックスがコリジョンエリアで有利になれば、持ち味の速い展開に持ち込める。試合を有利に進めることが予想される。
スプリングボックスが得意とするキック攻撃にも注目だ。
絶妙なところに蹴り込むハイボール。そのキックに対してしっかりとチェイス(ボールを追いかける)する。そして空中戦でも強さを見せる。
地域とボールを一気に獲得できてしまう効率の良いキックの攻撃は、FW戦のバトルと同じくらい脅威となる。
オールブラックスのキック処理の出来により、試合展開は変わってくるだろう。これまでも、これでもかという程のキック攻撃に上手く対応できず、試合を有利に進められなかった。その記憶がよみがえる。 FWにタフさが戻りつつあるオールブラックスのカギは、FW戦よりキック処理にかかっていると言えるかも知れない。
チケットは、一か月前に完売となった。ここ数日のNZのスポーツニュースは、日本に遠征しているオールブラックスXVのことにはほどんど触れず、スプリングボックスに挑むオールブラックスの話題で持ち切りだ。
すでにワールドカップが始まっているような雰囲気が感じられるほど、今回の対戦は注目されている。RWC2023で両者は、準々決勝で対戦する可能性もある。強いライバル関係にある両者の、現時点の実力を知るうえで重要な試合となる。
とてつもなく激しい試合になることは間違いないだろう。4年ぶりのNZ国内での熱い戦いをしっかり見届けたい。