コラム 2026.10.30

【ラグリパWest】8年目。西川壮一 [東海大浦安高校/ラグビー部/監督]

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】8年目。西川壮一 [東海大浦安高校/ラグビー部/監督]
東海大浦安高校の保健・体育教員でラグビー部の監督でもある西川壮一さん。東海大卒業後の2019年に新卒赴任した。ラグビー部監督として目指すのは初の冬の全国大会出場だ。写真は校門を入ったところにある東海大グループの創始者である松前重義氏の銅像の前で

 西川壮一はひとりっきりでやってきた。

 7年前だった。東海大浦安にラグビー部を立ち上げ、駆け出しの監督になった。

 保健・体育教員も兼務する。こちらも新卒赴任。出身は高校の上につく東海大だった。

 恩師はいる。土井崇司であり、湯浅大智であり、木村季由(ひでゆき)である。

 その3人はそばにいなかった。
「目の前のことで、必死でした」
 アイドルのような切れ長の目は彼方を見る。

 孤独な時間が続く。すべてを好きにできる以上に、22歳で右も左もわからない状態でのクラブ運営は難しさの連続だ。

 西川は耐える。投げ出さない。昨年は勝ちかけた。全国大会の千葉県予選決勝、終了寸前、専大松戸にFWサイドを割られた。

 スコアは17-19。記念の105回大会だった。千葉県から2校が出場できた。初出場にあと少し。決勝進出は2年連続である。

 西川はうつむく。
「生徒に申し訳ない。指導力不足です」
 敗因を自分に向ける。よく日に焼けたこげ茶色の顔が白んだようだった。

 西川がここまで来られたのはその履歴が大きい。大阪の東海大仰星から東海大に進む。その7年間、好選手だった。自分の名にかけて、みっともないことはできない。

 西川の名が知られ、指導の根幹ができたのは付属高校の仰星だった。その3年間、土井は監督から総監督に上がり、監督をついだのはコーチから昇格した湯浅だった。

 西川がラグビーを始めたのは小3。誘われて西神戸ラグビースクールに入った。仰星には4つ上の小山洋平が在籍し、近しい存在だった。小山は東海大から東京ガスに進む。

 自宅がある神戸市の西のはしから大阪は通いにくい。土井が支援者と作った寮に入った。
「成長させてもらいました」
 土井の妻の孝枝が寮運営の中心だった。

 食事は孝枝と土井が作る。手が足りないと近所の主婦が無報酬で手伝ってくれた。
「技術もそうですが、それよりも人としてのあり方を教わったような気がしています」
 あいさつや掃除、整理整頓も徹底された。

 西川は運動能力の高さで1年からWTBのレギュラーに抜擢される。2年からFLに上がり、3回目の全国制覇の一助になった。93回大会(2013年度)の決勝は桐蔭学園に19-14。主将は花園LのFL、野中翔平だった。

 3年時は全国8強戦で優勝する東福岡に12-43で敗れる。進路は東海大に定めた。
「学び続けたい、と思いました」
 この大学の本部にOBでもある土井が異動したタイミングだった。

 東海大では2年から監督の木村が起用する。4年時は180センチ、90キロのFLとしてFWリーダーを任された。関東リーグ戦は優勝。大学選手権は8強敗退だった。明治に15-18。55回大会(2018年度)である。

 最後は西川の反則で決勝PGを決められる。
「テビタ・タタフがラックから引っこ抜いてくれたのですが…」
 苦い思い出が残る。NO8のタタフは東京SGに在籍し、日本代表キャップ20を得た。

 西川は4年間を振り返る。
「色んな人々の正しさをどうやってひとつにしてゆくか、ということを学びました」
 仰星で優勝した。でも大学はまた違うフィールドだ。絶対的なものではない。

 卒業後の道筋は土井が作ってくれた。
「ラグビーによる活性化を望まれました」
 校長間の話し合いで東海大浦安での創部が決まった。土井は同じ付属校の相模の校長だった。昨年、定年退職している。

 東海大浦安は旧制中学を祖に持ち、1955年(昭和30)、東海大の付属校になる。全日制普通科の共学校であり、高校の生徒数は1200人。8割が東海大に進学する。所在地は千葉県の浦安市。中学部も併設している。

 赴任当初、グラウンドの割り当てはない。
「コンクリートの上で練習したりしました」
 今は外側に陸上レーンがある人工芝グラウンドの4分の1を使用する。半分は高校サッカー、残りの半分を中学サッカーと分ける。

 その狭さを西川は苦にしない。
「仰星は半面を100人で使っていました」
 今の選手数は34人。比率でゆくと仰星時代よりも広い。着用するジャージーは仰星と同じようにネイビーとサックスが軸になり、白が胸元、細い黄色の線が入る。

 オフは週1回。読書に使う。指導の参考になる。最近は『「なぜ」と聞かない質問術』(中田豊一/ダイヤモンド社)を読んだ。
「なんで?はプレッシャーを与えます」
 こういうことか、と推測を重ね、結論を得る。高校生は知らぬ間に本音を語る。

 本音でぶつかる部員たちと狙うのは、初の全国出場だ。106回大会は5大会ごとの記念ではなく、出場は1校に戻る。絶対王者は流経大柏。31年連続33回出場を誇る。
「30年以上…、すごいです」
 西川は生まれる前からの覇者に敬意を持つ。

 今年、流経大柏には2戦して2敗。新人戦は5-47、春季大会(関東大会予選)は10-38だった。ともに準優勝。106回大会の県予選決勝は来月15日に予定されている。流経大柏とは同じAシードのため、順当ならば3度目の対戦もまた決勝になる。

 西川は<3度目の正直>を実現したい。
「相手はフィジカルが強い。その部分でひるまず勝負するしかありません」
 東海大浦安にはモールの強さがある。ディフェンスでも果敢にタックルに飛び込む。逃げれば、勝機は出てこない。

 勝負と同時に貫く方針がある。
「一生懸命にラグビーを教え、生徒が育つ状況を作ってゆきたいですね」
 西川自身が土井、湯浅、木村にそうしてもらった。その恩返しを教え子に向ける。物理的に3人はいなくとも、その記憶は教育として循環してゆく。間違いはない。

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