プレースキッカー受難。仏TOP14でショットクロックが45秒に短縮される
TOP14第2節、トゥールーズはホームでボルドーに48-12で圧勝し、今季初勝利を挙げた。しかし、この試合でフランス代表最多得点記録保持者のFBトマ・ラモスは、序盤のコンバージョンキックを3本続けて外した。最初の2本はタッチライン際、もう1本はタッチラインから5mと難しい位置からのショットではあったが、過去に幾度も成功させてきた位置であったため、場内にどよめきが起こった。その後、4本目のコンバージョンはゴールポスト正面の位置であったが、SOロマン・ンタマックにキッカーを譲る形となった。
この不調の背景には、今季から試行されているルールの変更がある。PGやコンバージョンキックの準備時間は、2023年に90秒から60秒へと短縮されていた。今季のTOP14およびPro D2では、ワールドラグビーの認可を受けた試行ルールとして、制限時間がさらに45秒へと短縮された。時間のカウントダウンは、PGの場合はキャプテンがショットを選択した時点から、コンバージョンの場合はレフリーがトライを認めた時点から開始される。
時間の制限に伴い、キッカーは従来のルーティンを短縮せざるを得ず、迅速な対応を求められている。ラモスもまた、この変更の影響を受けた一人と言える。プレースキックの成功率が高い彼が試合開始から3本連続で外した光景は、周囲に疑問を抱かせることとなった。
試合後、ラモスは現地中継局のインタビューに応じ、新ルールの難しさを認めた。
「個人的な見解としては、コンバージョンキックの準備時間は1分でちょうど良かったと思っています。キッカーの状況によりますからね。もし自分がキッカーで、ポジションがフルバックで、トライが逆サイドのコーナーで決まった場合、そこまで移動するだけで残りの時間はほとんどなくなってしまいます。とはいえ、今夜の件について言い訳をするつもりはありません。3本蹴って0本のときは、潔くキッカー役を退いて、ロマン(ンタマック)に譲るべきなんです。彼もしっかりとその役割を果たしてくれました。ですから、チームにとっては結果的に良かったと思います」
実際にキッカーを引き継いだンタマックは、5本中4本のコンバージョンを成功させた。
ラモスは今季開幕2試合で9本中4本を外し、キック成功率は55.5%と自身の水準を大幅に下回っている。また、キックの精度に定評のあるトゥーロンのFBメルヴィン・ジャミネが70%(10本中7本成功)、ラ・ロシェルのSOアントワーヌ・アストイが66.7%(9本中6本成功)にとどまるなど、彼らの平均成功率である80%前後を下回る数字となった。
一方で、新ルールの影響を感じさせない選手も存在する。ポーのSOジョー・シモンズ(15本中15本成功)、スタッド・フランセのSOルイ・カルボネル(7本中7本成功)、今季セール・シャークスからバイヨンヌに加入したSOダン・デュプレア(7本中7本成功)らは、いずれも成功率100%を維持している。
また開幕節では、残り時間10秒となった時点でレフリーからキックの位置を修正され、ラモスは残り6秒、アストイは残り4秒の時点で慌ててショットを放つことを余儀なくされたという場面も見られた。
スタッド・フランセのCTBジェレミー・ワードがトライを決めた直後、歓喜のあまりボールを客席へ投げ込み、素早くコンバージョンに向かおうとボールを受け取りに走ってきていたSOカルボネルが、困惑した表情を浮かべる一幕もあった。
これらのルール変更は、ゲーム展開を迅速化し、ボールインプレー時間を増やすことを目的としている。背景には、競技のエンターテインメント性を高め、より幅広い層のファンを獲得する狙いがあると見られる。近年の傾向としてトライ数が増加しており、コンバージョンにかかる時間も増えている点も意識されたのかもしれない。
しかし、激しい試合展開のなかでプレーが完全に停止し、キッカーが放つボールの行方を息を潜めて、時には「入れ!」、時には「外れて!」と祈りながら見守る瞬間もまた、ラグビーという競技の醍醐味と言える。
さらに、ワールドカップ開幕まで1年というこのタイミングでの変更は、これまでフランス代表を幾度となく勝利に導いてきたキッカーに、長年培ってきたルーティンの見直しを迫っている。14か月後に後悔することにならなければよいが。
この傾向が今後も続くのか、それともキッカーが順応して対応していくのか、今後の展開が注目される。



