【南アフリカ記者コラム】スプリングボクスには、シナリオを書き換える想像力が必要。
南アフリカ代表”スプリングボクス”のラシー・エラスマスHCは「Rugby’s Greatest Rivalry」(ラグビー最大のライバル対決)第1戦を振り返り、対するオールブラックスが勝利に値するだけのプレーをしたと認めた。
一方で、スプリングボクスはここから3連勝してシリーズを制することができるとも信じている。その第一歩となるのが、今週末のケープタウンでの勝利だ。
土曜日、エリス・パークで16-33で敗れたボクスは、テストマッチの連勝が「12」で途切れた。同時に世界ランキングでも首位の座をオールブラックスに明け渡すことになった。
それでもエラスマスは「ボクスは追い詰められたときにこそ本領を発揮してきた」という事実を心の支えにしている。
「われわれはこれまでにも、何度も壊滅的な状況に陥ってきた。2021年にはブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとの第1テストに敗れた。2019年ワールドカップではニュージーランドとのプール戦に敗れた。誰もが『これは壊滅的だ』と言った」
勇ましい言葉ではある。しかし、土曜日のパフォーマンスが極めて失望するものだったことから逃れることはできない。ほんの少しでもフィニッシュの精度とプレーの正確性が高ければ、間違いなく勝っていたと思われる試合を落とした。
考えてみてほしい。両チームが前回対戦した2025年のウェリントンでは、ボクスが43-10という圧倒的な勝利を収め、スリリングなラグビーを披露した。6トライを奪い、その勝利の大きさはスプリングボクスこそが地球上で最も強いチームであることを証明するものだった。
それも、他を大きく引き離して、だ。昨年末には欧州遠征で猛威を振った。フランス、イタリア、アイルランドを退けたその戦いぶりこそ、エリス・パークでオールブラックスを破る本命と見なされていた理由だった。伝統的なパワーとセットピースの支配力に加えて、アタック面での華やかさまで身につけていたのである。
直近のネーションズ・チャンピオンシップでも、イングランド、スコットランド、ウエールズを破る中で、その兆候は見えていた。アタック担当のトニー・ブラウン アシスタントコーチのもとでBKが取り組んできた成果を発揮、チームはさらに一段上のレベルへと引き上げられていたのだ。FW陣が相手を叩きのめしていけば、その後にはスピードのあるBKが走り込むためのスペースが生まれていた。
だからこそ、先週の試合でボックスキックがこれほどまでに復活したことには失望させられた。オールブラックスがディフェンス面でしっかり準備してきたことが明らかになった時点で、ボクスにはより大きな野心と適応力を示す必要があった。
昨年のウェリントンでは、WTBチェスリン・コルビが2トライを挙げ、相手ディフェンダーを翻弄して大暴れした。ところがエリス・パークでは、ほとんどボールに触れることすらなかった。WTBカートリー・アレンゼが早い時間帯に頭部への衝撃で退いたことで左WTBへ移ったCTBジェシー・クリエルも、アタックではほとんど見せ場がなかった。
もどかしいのは、BKが仕事をするためのチャンス自体は存在していたことだ。FW陣はおおむね役割を果たしていたのである。
FBダミアン・ウィレムセは主にキックをキャッチする役割を担い、それを見事にこなした。しかし、一度たりとも10番のチャンネルに顔を出すことはなかった。
ブラウンがコーチに就任して最初のシーズンには、FLシヤ・コリシやFLピーターステフ・デュトイがワイドに展開し、BKがそこから攻撃を仕掛けるためのチャンスを生み出す場面が見られた。
しかし、土曜日にはそうした動きはまったく見られなかった。
最高のスポーツチームとは、単に立てたプランを実行するチームではない。プランが機能していないことを認識し、その状況に応じて適応できるチームなのだ。
しかし私にとって、スプリングボクスのパフォーマンスで最も悪かった点は、ハーフ団の連係不足だった。SHグラント・ウィリアムズとSOサシャ・ファインバーグ=ムンゴメズルは、ボクスのレベルではこれまで一度も先発で一緒にプレーしたことがなかった。そして、それが如実に表れた。
サシャはもしかすると世間の大きな期待に応えようとし過ぎているのかもしれない。ブエノスアイレスでのアルゼンチン戦での復帰戦も厳しいものだった。長期離脱を経たいま、まだ少し試合勘が鈍く、自信を持てずにいるように見える。
この試合の10番を誰にするのかについて、ボクスのコーチ陣の間では長い議論があっただろう。候補はサシャ、マニー・リボック、ハンドレ・ポラードだった。
サシャにはあまりにも大きな才能がある以上、近いうちに本来の状態に戻るはずだ、という判断だったのかもしれない。
彼を先発させることは賭けだった。特にリボックは好調で、試合勘も鈍っていない状況だったことを考えればなおさらだ。
私なら、今週のケープタウン・スタジアムではリボックを先発させ、ポラードを控えに置く。彼のボールを配る能力とオフロードは、エリス・パークで欠けていた、攻撃に予測不能性をもたらすことができる。何よりも、彼には自ら相手に仕掛けていこうとする姿勢がある(8月24日にメンバー発表/10番はポラード、23番はサシャ、リボックはメンバー外)。
ボクスは自分たちがオールブラックスを力で圧倒できることを知っている。いま、彼らに求められているのは、単純なパワーと限られたゲームプランだけでは十分でないときに、自分たちで試合のシナリオを書き換える想像力を持っていることを示すことだ。



