日本代表戦でPOM獲得の21歳。空中戦の強さは、畳の上で培った身体感覚にあり。テオ・アティソベ[フランス/WTB]
7月18日のMUFGスタジアム(国立)。ネーションズチャンピオンシップの南半球シリーズ第3戦において、日本代表はフランス代表に15-42で敗れた。試合後、日本代表のエディー・ジョーンズHCは複数トライを許したモールに加えて、ハイボールの競り合いを敗因の一つに挙げた。
「空中戦もやられてしまった。(日本代表の)ウィングは小柄ですが、もっと競り合えるようにしていかなければいけない。(モールと空中戦)この2つが我々にとっての大きな教訓です」
大会公式HP掲載のスタッツにあるコンテストキックのボール獲得数は、フランス代表「10」に対して日本代表はわずか「1」。決定的な差を作り出して勝利をつかんだのはフランス代表。「チームに良い流れをもたらすことができて非常に満足している」と振り返ったのは、14番で先発フル出場したWTBテオ・アティソベだ。
ドレッドヘアーがトレードマークのアティソベは、トイメンの石田吉平との競り合いに終始優位に立った。後半1分には、まずSH齋藤直人のキックを背走しながら捕球すると、20秒後にはSHマキシム・リュキュが蹴り上げたハイボールを懐へ収めた。難なく着地を決めて前進し、ディフェンスを引きつけてパスを供給。最後はFBマチュー・ジャリベールがトライを挙げ、リードは20点に広がった。アティソベはこの試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選出されている。
今夏に日本代表デビューしたSO伊藤龍之介(明大)やPR大塚壮二郎(関西学大)と同じく2004年生まれながら、フランス代表キャップは既に16を数える。2連覇を達成した今年のシックスネーションズでは全試合に先発、7月のネーションズチャンピオンシップ南半球シリーズではニュージーランド、オーストラリアを相手にトライを挙げた。そんな21歳の青年は「国際試合、そして国内リーグの試合においてさえ、ますます重要になっている」と空中戦の重みを実感している。
「(コンテストキックの捕球は)多くの時間を割いて練習しています。極めることはチームに計り知れない利益をもたらし、自分たちのラグビーを展開するチャンスをより多く作り出してくれる。だからこそ、これからも継続していくべき重要な課題だと考えています」
身長182センチの高さに加え、左足で踏み込む跳躍力は大きな武器だ。しかし、彼が空中戦を制する理由は身体能力だけではない。日本代表戦に向けてもスカウティングを徹底し、石田とのマッチアップについては対策を練ってきた。
「彼はセブンズで際立った活躍をした、東京とパリの2つのオリンピック経験者です。非常にダイナミックでスピードのあるウィングで、手強い相手になることは分かっていました。彼について調べて、備えてきました」
また、ハイボール処理の卓越した感覚はバックグラウンドとも大きく関係している。アティソベがラグビーを始めたのは6、7歳のころ。それ以前に習っていたのが柔道だった。「3、4歳から始めて15歳まで続けました。ラグビーに専念するため、残念ながら黒帯にたどりつくことはできませんでした。(帯は)茶色でした」。幼少期から畳の上で培ってきた身体感覚が、 空中戦での強さを支えている。
「柔道をやっていて良かったのは、自分の体を知ることができたことです。(ジャンプから)どうやって体が落ちていくか、そして体をどう転ばせるかも知っています。この感覚はラグビーに役立っていると思います」
分析と身体制御というアプローチで空中戦を制する21歳のプレーは、サイズで劣る日本代表がハイボール争奪において世界の強豪と対等に渡り合うためのヒントとなりそうだ。





