【サクラセブンズ PICK UP PLAYERS】苦節を経た先に。秋田若菜[自衛隊体育学校PTS]
昨年末に測定した50メートル走(通過タイム)で、ついに7秒を切った。6秒98。自衛隊体育学校PTSでは誰よりも速かった。
「ずっと7秒を切りたかったので嬉しい」と目を細める秋田若菜は、サクラセブンズではWTBとFWの両方をこなす。
もともとはFW。165センチの長身を生かし、ラインアウトやキックオフで役割を果たしてきた。「U18花園女子15人制」には1年時からLOで先発した。
WTB転向はひょんなきっかけだった。
「PTSの人数が少ない時期があり、ポジションを柔軟に回していく必要があったんです。その時にWTBをやって、1対1の外勝負で勝つのがすごく楽しかった。もともと足が速いキャラではなかったのですが、もしかしたら速いのかもしれないと」
その後はWTBを主戦場とするために、自衛隊のスピードトレーニングの専門コーチに教えを請うた。
「セブンズは初速が大事なので、走り方というより、動き出しを意識的に強化してきました」
競技人生の始まりは、栃木の足利ラグビースクールだ。兄と弟と一緒に小学5年から楕円球を追った。
きっかけは人数不足で加勢を求められたからだったが、そこからのめり込んだ。
県立の中高一貫校である佐野高附中に進学してからは、部活動とスクールを掛け持ちする。中学時代は休日を東毛ワイルドナイツラグビースクールで過ごし、高校2年からはアルカス熊谷に通い始めた。
「部活は女子部員が少ないので、試合に出られない。もっと試合に出たいと思いました。アルカスの練習はすごくキツかったけど、活躍している選手が多くて刺激になりました」
土日に加えて水曜の夜にも、片道1時間半ほどかけて熊谷に向かった。送迎をしてくれた両親への感謝は尽きない。
そのハードワークに応えるように、まずは国内シーンで際立った。セブンズユースアカデミーでは2年生ながらキャプテンを任され、NZ遠征をおこなうU18女子セブンズ・デベロップメント・スコッド(SDS)でも主将を担った。
しかし、翌年から世界はコロナ禍に突入。秋田自身も雌伏の時間が長く続いた。
高校を卒業した2021年に、自衛隊体育学校に入校。高校は進学校だったため、「就職」を選択したのは学年で秋田一人だけ。「クラスがざわざわした」が意志は固かった。
「自衛隊は衣食住が整っていて、家族に負担をかけずに好きなだけラグビーに打ち込める環境に惹かれました。進学も考えましたが、自衛隊が一番ラグビーに集中できるなと」
サクラセブンズでようやく初キャップを手にしたのは、所属して4年目を迎えた2024年。パリ五輪後のアジアシリーズ中国大会だった。
「(選ばれない時期は)悔しかったです。でも、そこに行くためにはスピード強化やウエートなど、もっとやることがあると思っていました」
4月の香港大会までに10キャップを重ねてきたが、国内合宿から遠征に参加する当落線上にいる。いま取り組む課題はディフェンスだ。
「WTBは掴んで止めればいいと思っていましたが、いまサクラセブンズで求められているのは早く倒してから早く立ち、もう一つの仕事をすること。そのためには低く激しいタックルがマストです」
PTSに戻ってからも、いろんな人に相手役をお願いしながらタックル練に励んだ。「相手が変わっても対応できることが増えてきた」と成果を実感する。
「いまはSDSの合宿に呼んでもらえているので、少しずつでもずっと成長し続けて、五輪のメンバーに入り、メダルを取りたいです」
アピールを続ける。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン7月号(5月25日発売)の「セブンズ女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は5月15日時点。



