コラム 2026.06.22

【ラグリパWest】ライナーズひいきのお肉屋さん。門口圭一 [多喜万精肉店 三代目] 

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】ライナーズひいきのお肉屋さん。門口圭一 [多喜万精肉店 三代目] 
近鉄河内花園駅至近にある「多喜万精肉店」の大将、門口圭一さん。屋号は「たきまん」。美味しく、安価な食肉を提供する。門口さんはもちろん、地元チームの花園近鉄ライナーズのファン。飛躍を願うひとりでもある

 大将はお・しゃ・れ。

 左耳には銀のピアスが光る。
「男は左って聞いたんや」
 眼鏡は黒迷彩のオークリー、野球帽はデトロイト・タイガース。舶来の匂いや。

 ハリウッドあたりの名わき役っぽい。あと2年で古希とは思えん魅力が漂う。その目は三日月を横にしたよう。ニッコリや。小粋な人は気働きができると決まっとる。

 大将とは門口圭一はん。多喜万精肉店の三代目や。屋号は「たきまん」であーる。
「オヤジがつけた。多くの人に喜んでもらう。ほんで1万円札が好きやったやんな」
 父の昭二はんは<商売繁盛>の思いも店名にぶちこみはったんやないやろか。

 大将は扱う食材を説明する。
「牛肉と豚肉、鶏はももやね」
 それらを保存する冷蔵ケースは3つ。正面は牛文化の関西らしく、牛肉がでーんと控えてはる。店内最高のスライスは100グラム1380円(税込み)。庶民的やで、しかし。

 右のケースには人気のロースト・ビーフや鶏ももが鎮座まします。左にはコロッケやメンチカツなどの総菜が並ぶ。注文が入ってから揚げる。弁当も作ってくれるで。

 多喜万は近鉄の河内花園駅の改札口を右に出て、70歩。短足のワイやから、ラグビー日本代表のLO、2メートル超のワーナー・ディアンズなら50歩くらいちゃう。

 大昔、東花園が常設駅になるまでは、この河内花園がラグビー場の最寄りやった。
「店の前を通って、みんな行ってたわ」
 大将は地元の略称<花園L>、花園近鉄ライナーズのファンやね。

 店内にはOBのトモことトンプソン ルークはんのサインが置いてある。
「トモさんはその辺を歩いとった。あれはもう地元の人やったな」
 日本代表キャップはLOとして71。このチームに15年いた。大将は忘れへん。

 その花園Lはリーグワンのディビジョン2(二部)を3位で終えた。
「ママががっくりきとったわ」
 大将は顔を曇らせる。ママとは花園ラグビー酒場の店主やな。永遠の38歳。この立ち飲み屋の豚肉は多喜万から仕入れとる。

 多喜万から通称「ラグ酒」へは74歩。駅よりほんの少しだけ遠い。ハリー・ホッキングスなら…、もう、ええって。ママは多喜万に顔を出し、指を1本出す。はい、注文いただきました。豚肉1キロが届けられる。

 ママは花園Lの熱狂的ファンや。遠征はほぼ皆勤賞。釜石まで行った。
<ライナーズの入替戦に行ってきます>
 そんな悲しいメールも来た。現実を振り払うように、大将の豚肉をほめる。
「上はよくてもめくったらあかんところがあるけど、ここは最後までキレイままや」

 クィーンズ・コートは牛肉を仕入れている。
「とっても美味しいですよ」
 東花園の井川遥は説明する。このカフェの女将やな。焼き肉ピラフは元CTBのナオキはんの好物。茶色でこってりした甘めの牛焼き肉が乗る。思い出したらつばが出てきた。

 大将はぼそっと話す。
「肉には自信があるよ」
 牛肉の見分け方を教えてくれる。
「白と赤のサシが細かく、まんべんなく入っているやつやな。甘みがあって美味しい」
 多喜万では九州の牛が中心や。

 お店は始めて70年以上になる。
「物心ついた時からじいさんがやってた」
 大将は高校卒業後、店に入った。中高は近大の付属校、いわゆる、「きんちゅう」、「きんこう」やね。おお、名門の出や。

 今は四代目、長男の亮一はんが大将と一緒にカウンターに立つ。
「長男がパソコンでスケジュールを作ってくれる。注文票でやっとったら大変。年末は夜中の2時や3時になる」
 正月用の注文は150軒ほど入る。持つべきものは親思いの子どもやな。

 大将の息子はもうひとりおる。次男の邦之はんは大阪府下で焼き肉屋を3つ経営。河内花園駅の南にも<焼き肉の多喜万>がある。
「あそこは弟がやってんねん」
 大将の弟・宏はんが経営や。多喜万グループは日本のお肉生活を支えてるんや。

 大将の店はラグビーもまた支えとる。
「10時までに弁当35個とか注文が来る」
 スクールや中学生を見て感じる。
「みんなええ体しとる。どこ行きたい?って聞いたら、クボタっていう子がいた」
 あれ……。

 子どもの希望はさておいて、これからも花園Lを応援するで。
「次のシーズンこそ頑張ってほしい」
 ディビジョン1は神戸Sがクボタ保有のS東京ベイを13-22で降し、優勝する。
「神戸は面白い。パスはポンポンつながる。後ろから人がどんどん飛び出してくる」
 大将は正直な人や。

 その昔、神戸Sと花園Lは同格やった。40年近く前の話やけど。1988年は9-4で深紅を破り、関西リーグで優勝を果たした。この関西や関東、九州の三地域を統合してトップリーグができ、リーグワンに変わった。

 大将は復権を祈りながら、今日も牛肉の目利きをして、包丁を入れ、みんなに安くてうまいのんを届ける。ワイの見立てでは牛肉はほかとは3割ほど安い。「ウッシッシー」や。地方発送も可能やで。

 店前には<こども110ばんの家>の黄色の小旗がひるがえる。大将は子どもも守るで。安くてうまいお肉だけやない。多喜万で買物して、その前に花園ラグビー場行って、最後にラグ酒で一杯飲む。この図式、最高やな。

 ◆多喜万精肉店◆
 ■住所 〒578-0924 大阪府東大阪市吉田1-1-29 パザパはなぞの1階
 ■電話 072-962-4330
 ■営業時間 午前10時~午後6時30分
 ■定休日 毎週水曜と第二火曜。お盆は3日、年末年始は5日ほどの長期休みあり
 ■最寄り駅 近鉄河内花園駅から70歩
 ■支払い 現金。クレジットカード可

カフェ「クィーンズ・コート」で提供される焼き肉ピラフ。多喜万精肉店で仕入れた牛焼き肉が乗る。税込み1180円。お店は近鉄東花園駅至近にある。

PICK UP