国内 2026.06.15
【連載】プロクラブのすすめ㉝ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] いまは危機的状況。ラグビー人口を本気で増やしたい!

【連載】プロクラブのすすめ㉝ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] いまは危機的状況。ラグビー人口を本気で増やしたい!

[ 明石尚之 ]

――話は変わりますが、ブルーレヴズはプレーを希望する現役選手を対象とした「リクルート応募フォーム」を作成しました。いわゆる公募ですね。

 われわれは育成枠という考え方を持っていますし、機会すら与えられず可能性をなくしてしまうことは非常にもったいないと思っています。

 ラグビープレイヤーとして有能な選手は、大学や高校で活躍していることがスタンダードだと思いますが、たまたま強豪校に所属していないだけで、ポテンシャルのある選手もいます。
 就職しようと思っていたけど、4年生のシーズンが終わったら悔しくて続けたくなった選手もいるでしょう。

 身体的能力は22歳がピークでもありませんし、フィジカルは課題でも何か優れた足の速さや球技センスがあれば、30歳前後で花開く可能性はあります。

 自ら志願してくる選手のモチベーションは非常に健全です。われわれのチームでチャレンジしたいと思ってもらえるのであれば、それはありがたい話でもあります。

 そうした選手育成の環境整備といった本質的な議論も、リーグとは進めて行きたいんです。

 チャンスを与えた選手は、実戦で活躍することで成長していく。ですが、いまのリーグワンでは移籍の自由度があまり高くありません。
 レンタル移籍制度はありますが、シーズン中は一方通行で戻ってくることはできない。ブルーレヴズの選手がD2やD3のチームで活躍すれば、シーズン中に戻せるようにするなど、もっと選手登録の柔軟性を高くするべきと思っています。

――育成でいえば、静岡ブルーレヴズU18が4月に始まりました。

 ジュニア世代、高校生世代の普及や育成は、今後もいろんな取り組みを模索していきます。

 県内のラグビースクールをどんどん増やしたいですし、独自でラグビースクールの運営をされている方々が選手の勧誘のためにブルーレヴズのアセットを自由に使えるようにしていこうと思っています。例えばロゴを自由に使えたり、ブルーレヴズの観戦チケットを提供するとか。

 そこで基盤となるのは都道府県のラグビー協会です。僕らもいま静岡県ラグビーフットボール協会とより密に、一体化することでもっと効率よく様々な活動がおこなえるのではないか、という話をしています。

 以前もお話ししましたが、ラグビーの競技人口の減少は危機的状況です。減少幅を見ると20年後くらいには消滅しかねない。

 われわれはこれまで普及活動を重ねてきましたが、静岡ブルーレヴズのプロモーションのためだったり、社会貢献活動としてやっている側面も強かったかもしれません。ビジネスの観点で見ればあまり利益が出る活動ではないかもしれませんが、いまは使命感を持ってやっていかなければいけないと思っています。

 資金や人材といったリソースを持っているのは、やはりリーグワンのクラブですから。チームが活動しているのはほんの数時間に過ぎないので、練習施設を静岡県協会やアザレア・セブン(女子ラグビーチーム)と一緒に運営してラグビーの選手の育成の場にするべきだと思っています。

 なので、以前からお話ししている新しい練習場の計画も、われわれの練習場としてだけでなく、「静岡県ラグビーフットボールセンター」のような場所にしていきたい。
 ニュージーランドのように、各州協会の拠点にはNPCのチームがあり、アンダーカテゴリーや女子のチームがすべて集う、そこにクラブハウスも県協会の事務所もある。それが理想形だと考えています。

 練習場の件は、今年中にはどういう場所にどういうものを作るかはだいぶ見えてくると思うので、なにかしらの発表はできるかなと。ただうまく進んでも完成するのは4~5年後でしょう。

――ブルーレヴズは磐田市と連携した中学生年代のクラブチーム(ブルーレヴズSPO☆CULラグビークラブ)もラグビースクールとは別に運営しています。

 ラグビースクールのように本格的にラグビーに取り組むことを目指すのではなく、ラグビーを始めてみたい、経験してみたいという中学生に向けたきっかけづくりの場です。スポカルで続けていく中で、継続的にラグビーをやりたいと思ったらスクールにも通う、という流れを作れればと思っています。
 中学生に限らず、続けたい時、やりたい時にそれができる機会があり、上手くなりたい時にさらにチャレンジする場があることはすごく大事なことです。

 そうした競技人口を増やすための具体的な施策などを、日本ラグビー協会が手を打てているとはあまり思えません。
 ラグビー体験会を全国で開催していますが、それだけでは普及活動にはならないと思っています。

 ラグビーへの入り口としてそうしたイベントは必要ですが、最終的にはそこで興味を持った子たちがラグビースクールに通い、選手登録料を払って大会に出るところまで待っていかないといけない。
 そして、中学生や高校生になってもラグビーを続ける環境を作るにはどうすればいいのか、縦軸の一貫性を持って動かないと考えないと単発のイベントで終わってしまいます。

 とはいえ、日本協会にすべてを押し付けるのは酷で、本来はその機能を都道府県協会が戦略を持って果たさないといけないんです。

 サッカーは2002年のワールドカップの収益金で、各地に「フットボールセンター」を作り、その施設を運営、経営するマネージャーまで育成し、各都道府県協会を法人化したことで、県単位で高体連やJクラブと連携しながら選手を育成できています。

 一方で、静岡県ラグビー協会が年間で受け取っている日本協会からの分配金は70万から80万円程度にとどまっています。
 県の競技人口や登録者数によって変わるのだと思いますが、これでは何の活動もできません。

――ラグビーの場合、各都道府県協会の方々は仕事の合間を縫って携わっていたり、中高の先生が関わっています。

 なので、繰り返しになりますが、リソースを持っているリーグワンのクラブが使命感を持ってこの課題に取り組む必要があるんです。

 リーグワンのクラブがちゃんとおのおのの地域に根差していくしかないわけです。
 だから関東に集中していいのか、というそもそもの議論があるわけですし、今後、新たなクラブができた時や地方に移転する際はそうしたこともライセンスに組み込んでいくべきでしょう。

 リーグワンに所属する権利を与えるのであれば、自分たちの定めたエリアでこんな活動をしなければいけないという義務が生じるのは当たり前。そのことを明確にし、それができないクラブはこのリーグには入れませんということにしないと筋が通りません。

――結局、リーグワンが発足する前に定めたホストスタジアムなどの審査は創設時におこなわれただけで、以降一度もありません。

 形骸化してしまっています。新規参入チームを受け入れる際に、一定の基準では見ていますが、ホストスタジアムに関してはすごく曖昧になっていました。

 現状では、リーグワン参入時にホストエリアとホストスタジアムがまったく別の場所にあっても「良し」としています。本当にラグビーや地域のことを思うのであれば、それでいいのかという疑問は残ります。

 ただ、われわれとしてはライセンス制度がつくられることを待っている場合ではないので、自分たちでやれることをやらないといけない。
 ラグビーの存続が危機的状況であることは、われわれにとっても死活問題です。責任を持って取り組んでいきます。



PROFILE
やまや・たかし。1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

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