【ラグリパWest】すぐやれた。赤迫幸知 [レッドハリケーンズ大阪/SH]
赤迫幸知(あかさこ・ゆきと)に質問した。
すぐ出られると思っていた?
「チャンスはあるかな、とは思っていました」
黒く丸い目はピカピカ光る。褐色の肌は練習に集中したことを物語る。
赤迫はまだ帝京大の4年生に在籍中から、レッドハリケーンズ大阪のSHとして、リーグワン出場を果たした。<アーリー・エントリー>の制度に乗った。
14戦中、うしろの8試合を任される。略称「RH大阪」はディビジョン2(二部)に属する。赤迫のチーム合流は2月2日。26日後の日野RD戦で初出場の機会を得る。後半17分、先発の山内俊央と交替した。
状況は2点ビハインドの12-14だった。
「交替のタイミングは思ったより早かったけど、攻めのテンポは上げられたと思います」
その後、RH大阪は2トライを挙げ、24-21と赤いジャージーの対決を制した。
続く3月15日の釜石SW戦は初先発する。この試合も28-24で制した。ここから最終14戦目、5月11日のGR東葛との戦いまで、背番号9を背負い続けた。
チーム広報などをこなす才口將太はその抜擢理由を示してくれる。
「球出しの速さです」
163センチ、66キロの小ささを生かす。ポイントに潜り込み、素早くパスを出す。少しでも受け手に判断の時間を与える。パスはSHの基本でもある。
才口はさらに続ける。
「キックもいいですね」
蹴り足の左からのハイパントは追跡者が競り合える。距離は20メートル以上。SOの蹴り足は右が多いため、赤迫には希少価値がある。左右の蹴りでエリアを獲れる。
赤迫は表情を崩して説明する。
「利き手は右ですが、蹴り足は左です。その理由はよくわかりません」
RH大阪入りはチーム採用の秦一平の評価も見逃せない。
「上手やなあ、と思いました」
秦は現役時代、SHだった。目は確かだ。
その赤迫を作り上げたのは、出身の帝京大における個人練習である。
「自主練習は30分から1時間はしました」
パスは3人一組。邪魔する手をはねのけたり、難しいボールでもパスを出す。ハイパントは両方の10メートルラインを利用して地面から蹴り上げる。飛距離がわかりやすい。
その練習をともにしたのは1学年上の李錦寿(り・くんす)や上村樹輝(かみむら・いつき)、同期では武智成翔(あきと)らだった。李は埼玉WK、上村は神戸S、武智はディビジョン3(三部)の狭山RGにいる。
この4人はハイレベル。それでもギスギスはしていない。赤迫はその関係性を語る。
「練習が終わればチームメイトです」
監督の相馬朋和からはメールが来る。
「赤迫の活躍は喜ばしいですね。みんな競争の中で成長してくれました」
帝京大の大学選手権優勝は歴代3位の13回。その歴史もあり、磨かれる。
赤迫の帝京大での最後の試合は大学選手権の準決勝だった。62回大会は2度目の5連覇を狙ったが、早大に21-31で阻まれた。
「悔しかったですね」
この1月2日の試合は先発の武智に代わって、後半24分に交替出場している。赤迫は最終学年、BKリーダーを任された。
その帝京大には尾道高から進んだ。監督から顧問になった岩出雅之が誘ってくれた。
「ひとつ上に五島さんや森元さんもいました」
OBの五島源(ごとう・げん)は静岡BRのWTB、森元一気は狭山RGのFLだ。
尾道高では1年生から公式戦に出場する。99回全国大会(2019年度)は2つ上の兄・実樹(みつき)と一緒に出場できた。
「思い出深いです」
1回戦の仙台育英戦で後半16分、兄と交替する。57-7の勝利に貢献できた。
99回大会は2回戦敗退。京都成章に14-32だった。兄は天理大から三菱自動車の水島製作所に入った。チーム名は<倉敷キングフィッシャーズ>。所属はトップウエストBリーグだ。リーグワンのディビジョン1から数えれば5部になる。弟の周琉(めぐる)は京産大の1年生SH。赤迫家は三兄弟だ。
赤迫自身は小1から倉敷ラグビースクールで競技を始めた。
「近所の人に誘われました」
中学は岡山ジュニアラグビースクール。兄を追い、尾道高に入学した。3年時の全国大会は3回戦で桐蔭学園に12-41で敗れた。
6歳から始めたラグビーが赤迫をRH大阪に導く。このチームに入ってよかった。
「みなさん優しいです。話しかけてくれます」
更衣するロッカースペースの前にはSO呉嶺太(お・りょんて)、隣にはHOの佐藤耀がいる。呉とは出場した全8試合でHB団を組んだ。呉は5学年、佐藤は10学年上だ。
赤迫の入社先はチームを保有するNTTドコモである。配属は協力会社のドコモCS関西にいる。出向である。この会社は携帯電話の販売や法人営業など、NTTドコモの機能を分担する。赤迫は量販・DS営業部の企画担当だ。DSはDocomo Shopの略である。
住まいは大阪市の西区にある。会社が寮代わりに借りてくれたマンションの一室だ。
「めっちゃいいです。心斎橋やなんばや梅田にも近い。でも静かです」
趣味のカフェ巡りにも便利だ。大阪での暮らしも抵抗はない。
「高校も大学も関西人は多かったから気になりません。ボケと突っ込みも好きです」
その状況の変化の中で、赤迫は8試合に出場した。RH大阪は8チーム中6位だった。
「ディビジョン1との入替戦に届かなかったのは残念でした。次はそこを目指します」
来季は意識を個人からチームにより広げられる。これも試合出場できた効果だ。
赤迫が増長することはない。
「オフシーズンにしっかりトレーニングをして、いい入りをしてゆきたいです」
あこがれを持つ日本代表はその積み重ねの先にこそある。勝負はここから、である。



