国内 2026.05.25

壮絶な「モメンタム」の奪い合い。ブラックラムズのリアム・ギルは惜敗にも「自信」

[ 向 風見也 ]
壮絶な「モメンタム」の奪い合い。ブラックラムズのリアム・ギルは惜敗にも「自信」
リアム・ギル[BR東京](撮影:福島宏治)

 異空間にのまれていたように映った。キックオフ以降、最初にスタンドからの応援歌を背に受けたのは前半18分頃。すでに0-17とリードされていた。

 リコーブラックラムズ東京は、加盟するジャパンラグビーリーグワンで初めて出たプレーオフの試合で対する東京サントリーサンゴリアスに序盤から球を奪われ、速いテンポで攻められ、局面を打開するのを難しそうにしていた。

 潮目を変えたのはハーフタイム以降だ。

 10-27とされた前半のうちから効果のあったハイパントを多用し、切り札の右PRであるパディー・ライアンの投入でスクラムを優勢にし、何より向こうの混乱を引き出した。着実に加点してゆく。

「モメンタム」。すなわち勢いの奪い合いだったとリアム・ギルは振り返る。ブラックラムズのNO8だ。

「タフでした。サンゴリアスのスタートがよく、初めはモメンタム(勢い)をマネージメントするのに苦しんだ印象があります。ただこちらのモメンタムが生まれ、シェイプ、形が効いてくるとよくなった。ローラーコースターのような展開ですね。最初にサントリーさんにモメンタムが来て、その次に僕たちのほうにモメンタムが来ました」

 身長186センチ、体重105キロの33歳。ライアンと同じオーストラリア代表経験者で、地上戦が得意だ。

 この午後も再三、スティールを試みた。レフリーが球を奪ったと見たか、相手を妨害したと見たかの解釈において、後者に傾く傾向がありながら…。

「いつも、惜しいんです!どんな判断も難しいもの。でも、公平(なレフリング)だった。僕もギリギリを攻めに行くし、レフリーとの関係性を見ながらバランスを取り続けるしかない」

 後半先手となるトライのきっかけは、この人のスティールがもたらした。敵陣22メートル線付近左中間でペナルティーキックを獲得。直後の攻めでブラックラムズは15-27と迫った。

 何より、ギルが別な意味で「ギリギリ」のラインに踏み込んだのは直後の12分だ。

 自陣10メートル線付近右中間で地上の球に絡み、マッチオフィシャルの笛を聞き、サンゴリアスボールと判定された瞬間のことだ。

 長らくその場で滞留するサンゴリアスの選手を、突き飛ばした。

 一触即発。乱闘に近い様相となった。

「それもラグビーの瞬間だった、ということですね」

 まもなくサンゴリアスのペナルティーゴールが決まって得点板は15-30となったが、気流を掴みかけたのはブラックラムズだった。その後はサンゴリアスの規律が乱れ、プレーが途切れるたびに件の瞬間と似たような揉みあいが発生した。

 サンゴリアスに平易なミスまで増えたとあり、ブラックラムズはひたひたと追い上げた。38分、35-33とこの日初の勝ち越しに成功した。

 サンゴリアスのゲーム主将でSHの流大は反省する。

「プレー以外のところで相手とファイトするところがあって。後の自分たちにポジティブに働くならいいですが、基本的にはマイナスに働いてしまった。イライラしてペナルティーを犯す最悪なローテーションに入ってしまった」

 かたやギルはこうだ。

「私たちにモメンタム(勢い)が必要でした。『画』を変えるため、相手にプレッシャーをかけるための方法は、優しくすることではないと思っています。(プレーの)強度を変えることを、うまくできた」

 果実は得られなかった。後半ロスタイムにだめを押すべく選んだペナルティーゴールが外れ、その後は残り僅かな体力でサンゴリアスの猛反撃を食らった。

 旧トップリーグ時代に5度優勝の名門は、この急場で正確に動いた。ブラックラムズは手痛い反則を重ね、35-40のスコアでノーサイドを迎えた。

「とても疲れました!(本来なら)もうちょっとディシプリンを保ってできたかもしれません。ただ相手はいいチームでした。私たちは正しい判断、できる限りのハードワークをしました。そして彼ら(サンゴリアス)が勝った。素晴らしい試合でした。結果は望むものではありませんでしたが、参加できたことが素晴らしい」

 至高の「モメンタム」の奪い合いを経て、発展途上のブラックラムズが掴んだのは「自信」だとギルは言う。

「来年はルールが変わる。僕が思うに、いい日本人がたくさんいるサンゴリアスはリーグのなかでも強いチームのひとつになるでしょう。その彼らに、僕たちは勝つべきだったという試合をした。来年強くなってくるチームに、僕たちは勝つべきだった。これは自信に繋がります。悲しい気持ちをうまくマネージメントをして、ハングリーな気持ちで戦いたいです」

 来季からレギュレーションが変わって国内出身者が試合に出やすくなりそうなこと、サンゴリアスと自軍が日本の学生のリクルーティングで成果を出していることを踏まえてか、前向きに展望するのだった。

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