フィジー代表主将のテビタ・イカニヴェレ、日本のヒートで見つけた自国の改善点
それがフィジー代表の弱みかもしれない。
三重ホンダヒートでスクラムを教える斎藤展士アシスタントコーチは、今季新加入したテビタ・イカニヴェレへこう告げた。
世界ランク9位のフィジー代表で主将を務めるイカニヴェレは、先頭中央のHOとしてスクラムを統率する。斎藤の担当領域で重責を担う。
もともと両隣のPRを掴む時は、やや緩めに指をかけ、個々のパワーを自由に発揮させようとしていた。ところが斎藤は、バインドと呼ばれるその動作をよりタイトにするよう指示した。前列3人が密着しないまま組んだら、相手が選手間の割れ目を突破口にプレッシャーをかけそうだったからだ。
時折、フィジー代表が自分たちより身体の小さいチームにスクラムで苦しめられるのも、そのあたりが理由なのではと斎藤は見ていた。その見解を映像によって伝えたうえで、本人が試行錯誤を繰り返すところへ適宜、助言を施した。自身の唱える理論が「腹落ちする」のを待った。
「(選手の意見や違和感を)否定せず、どう聞いてあげるか、です」
身長183センチ、体重113キロの26歳は、東洋の指導者の教えを咀嚼したうえで言う。
「斎藤コーチはこれまでで出会ってきたなかでもっともディテールにこだわって教えてくれるスクラムの専門家です。フィードバックをもらったり、コツを教わったりするなかで成長の実感が持てます。日本ではタイトに組み、肩を前に出すことができています」
フィジー代表はパシフィック・ネーションズカップ(PNC)で2連覇中。決勝では世界ランク12位の日本代表を続けて制している。もっともスクラムでは、日本代表が一丸となってプッシュするシーンが目立った。
とはいえ来季の対戦時は、イカニヴェレが齊藤の教えで違いを見出せそうだ。日本代表の右PRには、斎藤が前任の浦安D-Rocksで教えた竹内柊平がいる。同門同士がぶつかりそうなそのバトルを見据え、イカニヴェレは不敵に笑う。
「いまは(日本代表を相手に)どう組めばいいか、(ポイントを)抑えています」
4月25日、東京・スピアーズえどりくフィールドに立った。クボタスピアーズ船橋・東京ベイとの第16節ではフィールドプレーで光った。前半13分、後半3分に、自陣ゴール前でスティールを決めた。
後半23分には敵陣ゴール前右端を駆け抜けた。しかしここでは、ビデオ判定でトライが認められなかった。納得しがたかった。
それ以外の局面では総じて、掴んだ好機をものにしたほうが勝者となり、掴んだ好機を逃したほうが敗者となるような展開に終始した。21-54で負けた。
「ゲームプランそのものは問題なかった。我々の遂行力が足りなかった。ミスなくプレーを重ねられれば勝てた。チャンスをものにできなかった」
ここまでのシーズンを通し、軽やかな走りと献身的な防御をアピールしてきたのも確かだ。
何よりチームマンでもある。2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京を44-38で下した2月7日、同僚の左PRである平野叶翔の実家の焼き肉屋へ行くつもりだと話していた。
その後、実際にどうしたかと聞かれ…。
「はい。お父様が牛肉のどの部位なのかを丁寧に説明してくれました。いまは、自分が何を食べているのかがわかるようになってきました」
では、好きな部位はと聞かれれば、「…脂身の多いものが好きです」。憎めぬ笑みを浮かべた。



