国内 2026.04.30

「人のせいにしたくない」。ブレイブルーパス木村星南、ボーダーライン上での決意

[ 向 風見也 ]
「人のせいにしたくない」。ブレイブルーパス木村星南、ボーダーライン上での決意
木村星南[BL東京/PR](撮影:長尾亜紀)

 言い訳はよくない。そう考えるようになって久しいという。

 木村星南。東芝ブレイブルーパス東京の26歳だ。2連覇中のジャパンラグビーリーグワンでここまで7勝9敗とやや苦しむなか、所属先のリーチ マイケル主将の言葉を思い浮かべて続ける。

「負けている時は、ここがこうだ、あいつがどうだという言い訳のようなものが出てしまう状況です。ただ、そんな時でもマイケルさんは『自分たちにフォーカスしよう』と。東芝のリーダーやコーチ陣は、自分でコントロールできることをコントロールする(と訴えている)。そういうマインドセットは、自分のなかにもしみついているのかもしれないです」

 先頭の左PRのレギュラーとして、8対8で組むスクラムの成否に携わる。自分に言い聞かせるように語る。

「あまり、人のせいにしたくないというか。隣や後ろの選手が誰であっても自分のセットアップや形(予備動作や姿勢)は絶対に崩さず、安定させたり、勝てたりするのを目指しています。スクラムは8人で組んでいる。(仲間に)注文をつけたくなったり、それが必要な時もあったりするのですが、それを言い出したらきりがない」

 4月25日、東京・秩父宮ラグビー場。2連勝して迎えた第16節では、横浜キヤノンイーグルスに26-50で敗れた。

 再三、最前列に入るスクラムで反則を取られた。

 相手の左PRの岡部崇人がせり上がり、塊全体がその対角線上にいる木村の方角へ流れるように見え、結果、イーグルスがペナルティーキックをもらうことがしばしばあった。

 スクラムでは、お互いがレフリーの合図に沿って真っすぐ組み合って、重圧などにより故意に崩したほうは反則を取られるのが原則。ジャッジがどちらに傾くかは、その日のレフリングの傾向に委ねられる。

 自力で制御しきれない要素が多いこの局面にあって、木村は問題が起きた理由を他者に求めない。ぶつかる瞬間の「ヒット」で自分たちが明らかに優勢なら、イーグルス戦での判定も違ったものにできたと強調する。

 話をした29日には、公式戦で笛を吹くレフリーのひとりがトレーニングに訪れていたよう。木村自ら質問を投げかけ、「組む前のセットアップ、ヒット、その後の足の動き」が順番にチェックされる旨を把握できた。

 専門的な身体の使い方にも言及しながら、今後の改善点を言葉にする。

「僕らがヒットで勝って、もっとセンターラインを取っていれば(境界線を通過していれば)…。僕らは、ヒットがマスト。後ろ(FW第2、3列)はいつも押しをくれています。僕ら前3人が対面とのバトルで勝てているか(が焦点)です。1番(左PR)が身体を真っすぐにして相手の3番(右PR)の胸元へ入り込めているか…。3番が相手の1番と2番(HO)のシーム(間)へ入れているのか、右肩は使えているか…。8対8に見えますけど、そのなかで1対1のバトルがおこなわれています」

 身長176センチ、体重108キロで東海大出身。ブレイブルーパスの門を叩いたのは2022年度だ。

 学生時代から体力測定でよい数値を出すために準備をするタイプで、取り組む姿勢には自信があった。ところがブレイブルーパスでは、上には上がいると思い知らされた。

 慶大出身で同期の原田衛が、その学年で誰よりも早くチームに合流。それどころか、測定で先輩顔負けの数値を叩き出していたのだ。

 やがてブレイブルーパスで顔を合わせてから、木村は原田と自主練習を重ねた。どんどん自己管理のルールを厳格化する盟友と一緒に走るうち、アスリートとしての能力と心構えを前向きに変えられた。

HOの原田とは実質1年目から一緒にゲームに出ることが増え、ともに優勝できた。

「しんどいことを率先してやる能力というのか、そのようなマインドは、あいつに教えられました」

 原田がスーパーラグビーのモアナ・パシフィカへ挑戦するいまは、新加入のアンドリュー・マカリオとスクラムを支える。本職をHOとしながら右PRでのプレー経験もあるマカリオからも、多くを学ぶ。

「経験、引き出しがあって、常に(PRへ)『どうしたい?合わせるよ』と聞いてくれます。ここまでレベルが高ければ、自分が要求するだけではなく、人が求めることに合わせてあげるマネージメントができる…。すごいな、と感じます」

 仲間同士の繋がりの濃さを伝統的な部是とするブレイブルーパスはいま、12チーム中6位。プレーオフ進出枠のボーダーライン上にいる。

 レギュラーシーズンは残り2試合。グループ内の縁によって伸びた自省の人は、「先を見据えるのではなく、目の前にあるひとつひとつのことを消化していきたい。あと2試合、勝つ。僕らはそれだけなので」と誓う。

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