国内 2026.04.16

ブレイブルーパスでつけた底力が財産。佐々木剛、連敗ストップから再起への鍵を語る。

[ 向 風見也 ]
ブレイブルーパスでつけた底力が財産。佐々木剛、連敗ストップから再起への鍵を語る。
4月5日、浦安DR戦(プレド)に出場した佐々木剛[BL東京/FL](©︎JRLO)

 いまから意識を失うのかもしれない。

 東芝ブレイブルーパス東京の佐々木剛がそう自覚したのは3月22日。東京・秩父宮ラグビー場で、国内リーグワン1部の第12節に先発していた。

 激しく正確なタックル、スティール、粘り腰のランの光るFLが頭を打ったのは、前半18分頃だ。ちょうど仲間と防御ラインを押し上げていたところで、味方と衝突した。仰向けに倒れ、その場で横たわった。

 28歳。長らくトップレベルの舞台で揉まれてきた経験上、自分の身に何が起こるかは予測できた。

 きっと、これから課されるのは「テスト」だろう。

 HIAと呼ばれる脳震盪の有無を調べるプロセスに則り、記憶の有無を問われるはずだ。

「ちゃんと、受け答えできるかな…」

 こう思案しながらピッチを後にし、31分、正式に交代した。後日、苦笑する。

「味方が飛んでくることはあまりないですが」

 頭部へのダメージには、慎重であらねばならない。国際統括団体であるワールドラグビーの安全基準に沿って、復帰までの手順を踏んでゆく。

 自身が退いた一戦では三重ホンダヒートに22-24で惜敗しており、続く第13節では、芝の外で辛苦を味わった。

 都内のスピアーズえどりくフィールドで、すでにプレーオフ行きを決めたクボタスピアーズ船橋・東京ベイに7-51で大敗した。

 前年度まで2連覇も、ここで7連敗を喫した。

 ブレイブルーパスは、前年度の決勝で制したスピアーズを序盤から攻め立てるも、決定力で上回られるうちに大量失点を喫してしまった。何より、互いの強みである衝突合戦で苦しんだ。

 スピアーズは鉄壁の防御を築く。

 一方でブレイブルーパスは、かねて「シーム」へのアタックを心がける。斬新な陣形を敷き、人と人との合間にパスを通して攻防の境界線を破る。つまり壁の縫い目を突破口に、強力なランナーがとめどなく球を繋ごうとする。

 スピアーズが壁を敷いて走者を跳ね返すか、ブレイブルーパスが壁を破って走者を勢いづけるか。そのせめぎ合いで後手を踏んだわけについて、佐々木はこう述べる。

「まず、どこかで(1対1の衝突合戦で)前に出ないと。僕たちがスピアーズの壁を破るところから、隙間を使う部分(動き)が始まるので。面で(向こうに列を揃えられて)止められて、止められてとなると、ディフェンスが優位になる。僕たちは、きっかけ(波状攻撃の糸口)を掴むところがうまくいかなかった」

 振り返れば開幕前、マンネリ化を防ごうとしたクラブは、ハンドリングスキルの向上に注力。佐々木の言葉を借りれば、「去年まではフィジカル(強化)に重きを。今年はそれありき(力があるのが前提)でスキルにフォーカス」。いまこそ原点に立ち返るべきだと、身長180センチ、体重101キロの28歳は言う。
 
「結果が出ないとどうしても、よりよくなる手段を色んなところから探そうとする感じはあります。7連敗。(挙がる問題点が)複雑にこんがらがっている気がする。もっと、自分たちのDNAに沿ったラグビーをすれば解決すると僕は思います」

 ここでの「DNA」は、目の前のぶつかり合いを制する意識と執念を指す。

「ラグビーはフットボールですが、レスリングの要素もある。いまは、そのレスリングの要素で戦わないといけない。コンタクト…。ブレイクダウン…。ゴール前の、相手がタイトに守ってくるところをどうぶち破るか…。ディフェンスで相手に自分の芯を当てて押し返すか…」

 やり直せると信じる。競技復帰が叶ってからは、当たっては起立して走る個別のセッションを自らに課す。

「シーズンが始まっている分、(勤怠管理を重んじるスケジュール上)全体練習でコンタクトだけに注力する時間はそこまでない。そうなると、アフターの個人練(習)で磨かないといけません。手遅れにはなっていない。いまそうやることが、プレーオフ(進出)や、プレーオフを勝ち抜くことに繋がってゆく」

 4月5日。北海道の大和ハウスプレミストドームでの第14節に佐々木が出た。持ち場のFLで従来通りに身体を張った。

 前半4分には、自陣ゴール前左で相手のモールから球を奪った。その後もおとり役とサポート役を交互に担ったり、中盤の守りで海外出身の突進役へ刺さり続けたり、地上戦で向こうの球出しを遅らせたりと持ち味を活かした。浦安D-Rocksを40-24で制し、黒星が続くのを止めた。

 その歓喜の瞬間に先立って佐々木が語っていたのは、2020年度に入ったブレイブルーパスで得られた財産についてだ。

 今季、クラブが厳しい戦いを強いられているなかでも、自身は白星を積み上げていた時期と同じようにハイパフォーマンスを発揮していた。当の本人は、「一貫性」を追い求めているのは確かだと話す。

「アタック面では多少、調子のよしあしは出るかもしれません。ただ、サポート、タックル、ホールディング(起き上がってからのポジショニング)のスピード、(ディフェンスで)前に出る速さといったベースの部分は変えないようにしています」

 話をするうち、自らの「意図を持ってプレーしているかどうか(が重要)」との信念を説く。森田佳寿コーチングコーディネーターに多角度的な映像を使って自身の動きをレビューしてもらううち、内なる基準を作り上げてきた。

 それらを脳裏に焼き付けるだけではなく、身体にしみ込ませてきた。だからこそ、働きの水準にぶれが少ないのだろう。

「疲労が溜まってくると頭がボーっとする。そのなかであまり考えずにやると、粗が出る。きつくてもそのきつさに目を向けず、目の前のプレーを実行する。例えば、どんなクリーンアウト(援護)をすればいいかなどは、元気なうちにずっと言われてきているじゃないですか。それを、(息が上がっていても)実行できるか、です」

 一線級で戦うための底力をつけたブレイブルーパスが、好きだ。

 今季は原田衛、ワーナー・ディアンズといった土台を築いてきた日本代表勢が海外へ渡り、ニュージーランド代表33キャップのラインブレイカー、シャノン・フリゼルが開幕から第2節から11戦続けてけがで欠場。厳しい台所事情を強いられていたが、それを言い訳にするつもりは佐々木にはない。

 レギュラーシーズン12チーム中6位と、6傑の進める頂上決戦へ進めるか否かのボーダーライン上に立つ。青森県出身の元大東大主将は、「優勝、諦めていないので」と笑う。

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