【ラグリパWest】リーグワンへの道。須貝竜祥 [金沢学院大学/ラグビー部/PR]
取材ノートには矢印つきの図が残る。
BKラインは外に流れる。須貝竜祥(たつよし)は内に飛び込んで来る。真逆の動きにディフェンスはついていけない。
ボールを受けた須貝はインゴールに駆け込む。174センチ、110キロの左PRながら、「一閃」と形容できる速さだった。
昨年12月29日にあった全国地区対抗ラグビーにおける初戦の一コマである。須貝のトライで金沢学院大は東北大に17-0と差をつける。前半36分だった。この地区対抗は大学における全国大会のセカンドである。
76回大会の初戦は47-7で勝利する。須貝に得意なことを質問した。
「フィールドプレーですね」
その言葉通りの動きだった。タイミングや角度など難度をものともしない。
須貝は丸刈りにしていることもあって、評判のすし屋につとめる若い衆のように、きびきびした感じが漂う。笑顔は福々しいえびす様のように映る。
柔らかい表情で大学卒業後を見据える。
「リーグワンに行ってみたいです。自分がどれくらいいけるか試したいのです」
国内最高峰のラグビーにたどりつきたい。須貝は4月に3年生に進級する。
須貝の持ち味はランのみではない。スクラムに言及するのは野村倫成(みちなり)だ。
「須貝は強いので、回ってしまったりします」
背番号1の須貝が相手の3番を圧倒すれば、回転してしまうことになる。
野村は45歳。金沢学院大の監督で、大学職員を兼ねる。同じ石川県内にある鶴来(つるぎ)から、当時は関東リーグ戦の二部だった国際武道大に進んだ。現役時代はPR。フロントローを見る目は確かである。
金沢学院大は県庁所在地の金沢市にある総合大学だ。文学や芸術、情報工学など7学部と大学院を擁する。日本海側の私大では最大規模であり、学生数は約3000。短大、付属の高校や中学もそろう。
ラグビー部の創部年は野村が監督についた2013年に定めている。今では東海学生リーグのA(一部)で戦う。3年連続で3位に入り、朝日大、中京大に続く第三極になった。先ごろの地区対抗には初出場。2試合目の4強戦で優勝する山梨学院大に10-48で敗れた。
金沢学院大はチーム力の向上に合わせて、社会人にも選手の送り込みを模索する。須貝は候補のひとりだ。この大学からリーグワンにはひとり入っている。野田麟太郎はディビジョン3(三部)のLR福岡のPRだ。
須貝は5学年上の野田に続きたい。競技を始めたのは中2の冬、大阪の桃谷中だった。友人に誘われた。それまでは柔道をやった。
「初段を持っています。得意技は内股です」
柔道はボール争奪を示すブレイクダウンで今も役に立っている。
高校は大阪から石川にゆく。日本航空石川で寮生活を送った。進路は友人と決めた。
「高校のことをよくわかっていませんでした。その友人は別の高校に行ってしまいました」
関西の子らしく「オチ」をつける。
高校で思い出すのは夏の追い込み練習だ。
「合宿前の7月に10日間くらいやるのですが、しんどかったっす」
朝は走り、昼はウエイト、夕刻はラグビーの練習。三部練だった。
その猛練習をくぐり抜け、3年では冬の全国大会で左PRとして先発する。103回大会では2回戦敗退。茗溪学園に3-50だった。1回戦では関商工に33-21で勝利した。
金沢学院大に進むことを決めたのは、監督の野村からの誘いがあった。
「ずっと声をかけてくれていました」
石川での生活はこの4月で6年目に入る。
「空気がきれいです」
南の彼方には霊峰の白山が白くそびえる。
キャンパス近くには好物の鶏のから揚げの有名店もある。居酒屋「いたちゃん」だ。
「ランチタイムには1000円ほどで唐揚げが食べ放題になります。30個くらい食べます」
須貝の細い目は下がり、輝きを増す。そんな義侠心に満ちた店が金沢にはまだある。
鶏肉で栄養を補給しながら、同じ左PRの稲垣啓太を目標に定めている。
「稲垣さんがスクラムでほかの人に負けている印象はありません」
稲垣は35歳。埼玉WKに所属して、日本代表キャップは53を誇る。
稲垣に少しでも近づくため、練習前後やオフに個人での鍛錬をしている。
「今は下半身を鍛えています。スクワットは200キロちょいを上げています」
スクラムの安定や得意のフィールドプレーにおいて下半身の充実は欠かせない。
北島孟(たけし)はそんな須貝を評する。
「気持ちが強いのが特徴です。須貝は数値化できない部分が大きいのです」
その強さはにぎやかで威勢のいい大阪で育ったことと無関係ではないだろう。北島は31歳。ストレングスコーチで、須貝が学ぶスポーツ科学部の助教でもある。
北島は現役時代、FW第三列だった。この石川の出身で茗溪学園から同志社大に進んだ。大学時代に心身のバランスを崩す。
「でも山神さんは籍を残してくれました」
監督の山神孝志は北島を4年まで部員として遇する。今は日本ラグビー協会のCOO(最高事業遂行責任者)である。
北島はその後、健康を回復し、同志社大で修士号を得て、金沢学院大に奉職した。専門はトレーニング科学。挫折を知るコーチが学究畑におり、須貝の強みを分析できていることもこのチームの強みのひとつだ。
その北島の理解を背に、リーグワンに進むべく、須貝は右PRにも挑戦している。少しでも上にゆく間口を広げるためだ。
今年のチーム目標を口にする。
「朝日や中京に勝ちたいです」
リーグ戦において、この2校からは未勝利だ。エンジのジャージーを浮き上がらせることはまた、須貝自身の評価上昇にもつながってくる。正念場の一年である。



