コラム 2026.03.17

【ラグリパWest】神の山のふもとで楕円球を追う。石川県立鶴来高校ラグビー部

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】神の山のふもとで楕円球を追う。石川県立鶴来高校ラグビー部
石川県立の鶴来高校のラグビー部は県を代表するチームのひとつで、冬の全国大会出場は6回ある。今の部員は7人。4月の入学式後には新入生を勧誘して、15人集め、単独チームへの復帰を狙う。共同主将の石川愛佑矛(後列左から2人目)と木下海利(その右)がチームをけん引する

 白山は北陸を代表する霊峰である。この国の三霊山を富士山と立山とで形成する。

 白山は石川と岐阜の県境をまたいでいる。標高は2702メートル。なだらかに盛り上がる峰々はこの時期、まだ雪で白い。

 この山ははるか奈良時代から信仰の対象となっている。その石川県側のふもとを行ったところに鶴来の町はある。「つるぎ」と読む。

 この町には白山比咩神社がある。「しらやまひめ」は加賀の国でもっとも社格の高い一ノ宮。旧国名の時代から尊崇を受けた。全国に3000以上ある白山神社の総本宮でもある。

 白山の伏流水で作られる日本酒には「菊姫」があり、酢や醤油やみそなどもその水の恩恵を受ける。鶴来の市域は白山になる。

 今は県庁がある金沢のベッドタウンだ。街の中心部まで車で30分ほど。鶴来は北陸鉄道の終着駅であり、松本清張の長編推理小説『ゼロの焦点』の舞台のひとつにもなった。

 この鶴来の町にはまた、同名の県立高校があり、ラグビー部が存続している。創部は1983年(昭和58)。初代監督は国士舘大出身の衆徒(しゅうと)勇だった。4年目で全国大会初出場に導いた。この大会は開催ラグビー場から「花園」と呼ばれている。

 花園初出場だった66回大会(1986年度)は初戦敗退。若狭農林(現・若狭東)に0-8だった。この66回大会も含め、出場は6回。出場回数は県下3位だ。羽咋工の23回、日本航空石川の21回に続いている。

 その高校の教頭はラグビー部OBでもある奥洋志だ。58歳である。
「私はラグビー部の3期生です」
 地歴公民の教員でもある奥は2期にわたり母校に勤務する。現役時代を含めるとその関りは30年以上になる。

 奥はラグビー部の部長として、監督の衆徒を補佐し、うしろ4回の花園出場がある。75回大会は最高位タイの2回戦進出。長崎北陽台に0-25と及ばなかった。チームとして最後の出場は83回大会。萩工(現・萩商工)に7-45と初戦で敗れた。

 チームの栄光を知る奥は現状を話す。
「少子化で生徒自体が少なくなっている上に、今の子は激しいことをやりたがりません」
 現在、部員は選手7人のみ。新3年生は4人、新2年生は3人である。

 昨年11月にあった新人戦兼選抜大会の県予選は羽咋工など4校の合同チームで出場した。2戦目になる決勝では日本航空石川に0-117。日本航空石川は北信越大会で優勝し、今月開幕の27回選抜大会に出場する。

 チームは小人数ながら、その設備はいい。グラウンドは土ではあるが、ポールが立ち、フルサイズが取れる。体育館の下には40メートル四方ほどの砂場があり、降雪時も練習ができる。OBが中心になって作られた白山鶴来ジュニアラグビースクールもある。

 鶴来は全日制の共学校だ。普通科で各学年は3クラス編成。1クラスの定員は40人。競技推薦を持つスポーツ科学コースが1クラスずつある。学区は全国に広げられており、寮もある。その校歴は古く、創立は1943年。鶴来町立高等女学校として作られた。

 しかし、奥の言うように少子化に、都会や私学への志向の強まりなどもあり、この3月の入試では定員割れを起こしている。

 その状況下でも部員たちは意気軒高だ。
「新入生全員に声をかけまくります」
 木下海利が言えば、石川愛佑矛(あゆむ)も呼応する。
「部員を15人にしたいです」
 2人は共同主将。ともに新3年生だ。

 共同主将制を監督の谷口友春は説明する。
「役職を持つと生徒は育ちます。ただ、ひとりだとどうしても負担が大きくなります」
 谷口は4月で赴任9年目に入る。地歴公民の教員でもある。今月3月で不惑になる

 谷口は金沢二水から、当時は関東リーグ戦一部だった中央大に進んだ。SOとして公式戦に出場する。大学同期は長友泰憲。サントリーに進み、WTBとして日本代表キャップ9を得る。今は東京SGに変わったチームで地域連携や広報などを担当する。

 谷口は都会を知りながら、故郷に戻り、チーム存続のために心を砕く。2024年度のU18合同チーム東西対抗戦では東軍の監督をつとめた。4学年下の弟、佳隆は同じ県内にある金沢学院大のヘッドコーチについている。

 この年始にあったU18合同チーム東西対抗戦では鶴来から2人が選ばれた。NO8 の竹田充希とFBの田島翔大である。ともに先発する。竹田は天理大、田島は関東学院大に進学予定だ。

 谷口の教え子は筑波大にもいる。SHの田島汰一だ。新3年生である。関東学院大にゆく田島の兄になる。谷口との重なりはないが、OBにはリーグワンの釜石SWにPRの上田聖(さとし)がいる。

 田島兄弟や上田が入るOB会は450人ほど。会長は上山(かみやま)智秀だ。
「現役が増えて、チームが単独で出続けてくれればいいな、と思っています」
 OB会は今年1月末に5泊6日で実施された台湾遠征にも資金協力をしている。上山は県ラグビー協会の理事であり、レフリーソサエティーの委員長をつとめている。

 昨秋の花園県予選では鶴来は単独チームとして出場できた。決勝戦で日本航空石川に0-57と敗北した。また巡ってくる秋の本番は再び単独で出場して、紫と深緑の太い段柄ジャージーの存続を世に示してゆきたい。

 鶴来ラグビーの歴史を知る奥は言う。
「ウチでのスタートラインはほぼ一緒。試合にも出て、花園も狙えます」
 存続を絶対条件にして、その上で華やかな舞台への復活を望んでいる。

 鶴来の漢字は昔、「剣」だった。地元にある金劔宮(きんけんぐう)から来ているという。江戸時代に縁起のよい「鶴」に変わった。越冬の鶴は飛来しないが、元々ウインター・スポーツだったラグビーはある。楕円球を持つ高校生たちが躍動すれば、神は喜び、地域の人々を元気づけること、間違いはない。

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