【村上晃一の楕円球ダイアリー #7】片岡将さん、札幌大学ラグビー部監督就任へ。北海道の大地でラグビーに感謝の「恩送り」
2026年に入って第1回目の投稿になる。
高校、大学の王者が決まり、リーグワンも驚きの内容や結果があって盛り上がるなか、1月下旬、北海道札幌市へ行ってきた。
1995年オープンのラグビーパブ「ブライアンブルー」で開催されたトークライブの進行役をするためだった。
小学生の全国大会を主催するNPO法人ヒーローズの西尾容子会長と、ヒーローズカップの副実行委員長で、元日本代表キャプテンの菊谷崇さんがゲスト。子供たちが大会を通して成長していく、さまざまなエピソードが語られた。
北海道のラグビー愛好者が集った参加者の中に、昨春釜石シーウェイブス(SW)を退団した片岡将(かたおか・しょう)さんの姿があった。親交のある菊谷さんが声をかけたのだ。
片岡さんは香川県の高松北高校から関西学院大学、栗田工業、釜石SW、日野レッドドルフィンズでプレーし、2022年夏に釜石に戻りプレイングコーチとして活動していた。
久しぶりの再会で近況を尋ねると、「札幌大学のラグビー部の監督に就任することになりました」と、嬉しい言葉が返ってきた。特命教員としてスポーツに関わる講義も受け持つ予定だという。
片岡さんは日野レッドドルフィンズで6年半プレーしたあと、いったんは引退を決意し、「ビジネスの世界でラグビー界に貢献しよう」と、東京のビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した。
しかし、友人などから「コーチになって後輩たちのためにやったほうがいい」という言葉をかけられ、縁のあった釜石SWのプレイングコーチになった。
2025年春に引退し、妻の実家がある北海道札幌市に移住。現在は、妻、長男、次男と4人で暮らしている。
釜石でコーチとして若い選手たちと接しているとき、ラグビーに取り組む上での心の重要性に気づいた。
現在は大阪体育大学大学院のスポーツ科学部博士後期課程でスポーツ心理学を研究している。
遠隔で学ぶことができるので、仕事と研究を両立しながら、博士号取得を目指す。並行して函館ラ・サール高校、東北学院大学でコーチング・コーディネーターを務め、複数のチームビルディングに携わるなど、さまざまな形でラグビーに関わっていたところ、昨年末、札幌大学ラグビー部監督就任のオファーが届いた。
「監督として環境づくりから携わることができること、博士号を取得するための研究が続けられることは理想的で、それが引き受けた理由の一つです。もう一つは、北海道に来たときから、U18(18歳以下)のチームを作りたいと思っていました。北海道のラグビーはこの世代に課題があります。部員も多く、しっかり活動できている高校は少なく、15人が揃わず、合同チームでプレーする高校生が多い。そこでラグビーを辞めてしまう子もいます。U18が週一度でも活動していれば、そこから関西や関東の大学に行く選手も出てくる。札幌大学で、チームの活動と同時にU18もやっていきたいと思っています」
札幌大学ラグビー部の実力は北海道では北海道大学の次に位置するが、当面の目標は全国大学選手権出場だ。
そのためには北日本大学ラグビー交流戦で優勝し、東北地区・北海道地区の代表権を勝ち取らなくてはいけない。
昨季は、優勝:八戸学院大学、準優勝:北海道大学、3位:東北学院大学、4位:札幌大学という順位だった。
「僕はプレーヤーとしては、日本代表になってワールドカップに行けなかったので、札大からそんな舞台に立てるような選手を育てたいです」
ただし、現在の選手は20名に満たず、人材確保、強化とやるべきことは山積している。女子部員は1名。2024年5月、札幌大学は、北海道ラグビーフットボール協会、北海道バーバリアンズの連携協定を結んだ。
道内の女子ラグビー選手の発掘・育成、強化などを目指すものだが、女子部員も増やす方向だ。これらを同時進行させるのは至難の業に感じるが、片岡さんは希望に目を輝かせる。
「僕はラグビーに育ててもらいましたし、恩返ししたいという気持ちが強いです。恩を返せなくても、若い人たちに恩送りをしたいですね」
片岡さんは、「ラグビーは心が成長するスポーツ」だと感じている。もちろん、他のスポーツでも成長できることは知っているが、片岡さん自身がとことん取り組んだからこその実感は尊い。それを若い人にも経験してほしいし、できるだけ良い環境でプレーしてほしいと願うのだろう。
大人数がひとつになって戦い、互いの価値観を認め合いながら長所を引き出し合う。そうしなくては、試合に勝つことはできない。ラグビーは一人では何もできないことを痛感するスポーツでもある。
片岡さんは現役生活の晩年、ボールを持っていない「オフ・ザ・ボール」で、いかに良い働きをするかに注力していたそうだ。監督業でも、その経験を活かしたいという。
1人では何もできないことを知っているからこそ、多くの人と繋がることの重要性も感じている。北の大地での片岡さんの挑戦を応援したいし、未来を楽しみに見守りたい。



